見出し画像

パーマカルチャーのケーススタディを読む【Retrosuburbia読書会3 Case study-1】

パーマカルチャーのデザインと言われて、皆さんはどのようなイメージがわきますか?ほったらかしている農園、木々と作物が一緒に生えているところでしょうか。ヒッピーの人や、自給自足のくらしの質素で貧しい、例えば炭焼きのイメージでしょうか。藤野に行ったことがある人は、山間部の土地のイメージでしょうか。キーホールガーデンや、スパイラルガーデンのようなイメージをもつ人もいるかもしれません。

パーマカルチャーという言葉や理念が先行して、パーマカルチャーのイメージが、割と貧しいのではないか、ちゃんと伝わっていないし、パーマカルチャーをやっている人でもそのイメージにかなりの差があるのではないかなって言うことは常々思っていました。

全体性を扱うものは認知されにくいし、広く知れ渡りにくいということにほかの文脈での経験があります。知床半島が世界遺産なのは知っているものの、その登録理由は、豊かな生態系ということを知らない人が大半ということで、ガイドの役割としては、流氷や、山脈と海が近いからこそ、目の前の生物が多様であるのだという「つながり」を伝えるということをおこなっていたことを思い出しました。パーマカルチャーのデザインに関しても、同じように一つのイメージを切り取って、語るものではない困難さがあるのではないでしょうか。

さて、冒頭のイメージを持って、レトロサボービアにピックアップされているケーススタディを読むと、だいぶ思っていたものと違うと思います。

個人宅のデザイン

最初に取り上げられているCase Sturdy 1のABDALLAH HOUSEについては、家の外周を囲む形で果樹やハーブ、鶏などの動物のスペースが配置され、日光を最大限使えるように、リノベーションをされています。まず、前提として、サボービアで人々が豊かに暮らすためのデザインのシステムという文脈に、パーマカルチャーがあるため、どのケーススタディも非常に合理的です。例えば、水に着目すると、オーストラリアの郊外で暮らすときに、水はとても貴重で、グレイウオーターをちゃんと使いきれるかというところまでちゃんとやっています。

また、土地も確かに広いですが、そこの土地の隅々まで計画的に使い切ることができるかということも違います。Zoneという概念で、家を中心にZone1,Zone2という形で、家、キッチンガーデン、果樹、動物、という形で家を囲むようにデザインが行われています。

このような、家があって畑があるというような固定化された考え方ではなく、土地の中に人間の時間や快適さを中心にしつつ、水や食料、果樹が動線や日光を考慮されたうえで適切に配置されています。そしてそこから学ぶことが多いものがケーススタディとしてピックされています。ヒッピー、環境活動家、質素な農村生活などのイメージが先入観としてあると、優れたパーマカルチャーデザインの、徹底された合理性に驚く人がいてもおかしくないのではないかと思います。どれだけ理念的に良いことをしているかというよりも、快適に住めること、水に困らないこと、食べるものも取れることという、人間の生存に必要なものを限られた土地の中で作るという、小さな持続可能なシステムをデザインできるポテンシャルが、パーマカルチャーにはあるのだなということがよくわかります。

コミュニティに開かれたデザイン

また、Case Sturdy2では、人家族の個人の暮らしではなく、コミュニティを巻き込んだデザインを意欲的に取り組んでいる人の事例が取り上げられます。

Ecoburbiaという場所は、いわゆるシェアハウスで、この場所の財源として家賃収入があります。また、家を囲むように家の外周に塀があり、外周の道に面している場所にも土地があります。家族間の畑、外周はコミュニティの畑になっており、また塀の中にも屋外の映画上映や、地域の人が集まってパーティーや食事会、焚火ができるようなスペースがあります。ぜひ、このコミュニティが始まったという時のTEDの動画を見てみてください。

読書会の中では、デザインを考えるときにW.A.S.P.A(水、アクセス、構造物、植物、動物)の素材に区切ってマップを見るやり方をして、個人の住宅、コミュニティの場所としてそれぞれをどのようにとらえるかということを行ってきました。太陽やエネルギーの有効活用、上水下水の有効活用、果樹、動物、植物の配置がやはり見てきたどちらのデザインも限られた土地のポテンシャルを様々な固定概念や、慣習、思想から自由になり、そこに暮らす人の暮らしの質を上げ、暮らしの持続可能なシステムを作ることに妥協のないものになっていた印象です。

第一回は、なぜ今郊外をレトロフィットするのか、第二回は、自分自身の暮らし、生業を作ることを見てきて、第三回目で具体的なケーススタディを読む回となりました。第四回でも、ケーススタディを読みつつ、その後郊外に暮らすうえでの土地の評価について読んでいきたいと思います。

今回の読書会の内容や、実際のデザインを見てみた方はお気軽にご連絡ください。


Ecoberbia

Abdallahouse


フリーランス、専業で活動していますが、パーマカルチャーの記事、書き物等、基本的に無料で公開しています。仕事に充てられる時間を削って執筆しているので、もし、活動に心を動かされた方がいたら、1000円から7000円のスケール型のドネーションでご支援いただけたらとても嬉しいです。