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葬儀費用支払いと相続放棄の関係は??

葬儀費用の支払いと相続放棄は、実のところ無関係のようでも関係しています。

一般的に葬儀費用は喪主、つまりお葬式の主催者が支払うケースが多く、主に日本の慣習で喪主を務める長男が負担します。

また、仮にもし長男がいないとしても、喪主を引き受けた人が支払うことになります。

他に相続人がいればその人が負担することになるでしょうが、いずれにしても法的な決まりはないのが実情です。

問題は、葬儀の費用を相続する財産から支払う場合で、放棄の意思を示さず遺産に手をつけてしまうと、相続放棄が認められなくなるというものです。

急な不幸で親が亡くなるケースだと、子供は自らの預金などから捻出する必要に迫られます。

故人が生前に保険に加入していれば、契約内容によって速やかに代金を支払うことができます。

ところが、故人自身が死を予期していない場合は、保険の加入などの対策が取れていない可能性があります。

死亡後はあまり時間的な猶予がありませんし、お葬式の手続きを始める必要があるので、とりあえず誰かに借りて支払いに充てるといった判断が行われます。

借りるあてがなかったり、個人的な信用を理由に借りられない時は、いよいよ費用の捻出に困ることになるでしょう。

身の回りの物を売る、加入している保険を解約するなどの方法もありますが、一般葬は費用の金額が金額なだけに、身銭を切ってもお金が足りない恐れが出てきます。

そこで気になるのは故人が生前に築いてきた財産ですが、葬儀に必要なお金だからといって、安易に手をつけないよう気をつけたいところです。

問題が表面化することが多いのは、葬儀代を故人の遺産から出した後に、借金の存在が発覚したなどのケースです。

当然ですが、相続放棄ができないとなれば遺産と共に借金も引き継ぐことになります。

最初から借金の存在が分かっていれば相続放棄をしていた、そういう風に思ったり後悔することは誰にでもあり得るわけです。

常識を超えて財産を使い込んだり、必要と思われる以上の派手なお葬式をした場合は別ですが、幸いなことに故人の遺産から支払いをしても相続放棄できる可能性は残ります。

基本的に、遺産相続は相続財産に手をつけた時点で、単純承認を行ったと認められてしまう傾向です。

しかしお葬式の支払いは別で、身分相応の内容であれば、単純承認には当てはまらないという判例が過去に出ています。

理由としては、お葬式が社会的な儀式の1つで、時期の予測が難しく経済的にかなりの負担が発生することが挙げられます。

ただ絶対に大丈夫とは言い切れないので、ケースバイケースで判断していくことになります。

葬儀費用の相続放棄とは??

葬儀費用の相続放棄は、お葬式の支払いを含めて相続が放棄できるか否かという意味です。

基本的に葬儀の費用は喪主が負担しますが、法律で定められているわけではないので、当然ながらお金を出したくない人もいます。

また兄弟がいる場合は、兄弟に負担を求めることもできるので、例えばお互いが支払いを拒否すると大変です。

このように、誰が負担するかという争いは割と多く、裁判に持ち込んで判断を受けるケースもあります。

先に相続放棄を選べば葬儀費用も負担せずに済む、そう考えて納得するのは早計です。

そもそも、過去の判例で単純承認には当たらないとの結論が出ているので、相続放棄の意思に関係なく、相続人は負担に関する話し合いのテーブルにつく責任があります。

確かに故人が多額の借金を抱えていると、相続放棄したくなるのが普通でしょう。

ただ、借金が多くても借金だけという人はまずいませんし、財産を残していることもあり得ます。

財産が残っていれば葬儀費用を捻出できる可能性がありますから、支払いを放棄したいからと相続を辞退するのではなく、まずは遺産で賄えないか検討するのが先決です。

相続人の間で合意は不可欠ですが、借金を含めて相続する財産の中から葬儀の費用を捻出したり、賄える結果に至ります。

更に、相続人が一部でも支払いを負担すると、その分の相続税が控除されます。


つまり相続放棄をせず遺産を引き継ぐことになっても、負担を減らせるチャンスがあることを意味します。

香典返しや墓石購入、墓地代などは控除の対象外ですが、お葬式全般やいわゆる読経や戒名料は対象です。

まとめると、相続権の放棄をしてもお葬式代の負担を免れることはできないと分かります。

支払いは喪主の長男か、他の相続人が負担することになりますが、誰かが引き受けない場合に1人に押しつけることは不可能です。

その為、話し合って分担したり故人の財産から捻出することになります。

遺産に手をつけると単純承認と認められる恐れがありますが、お葬式に掛かるお金であれば、単純承認には当てはまらないとされているので安心です。

お葬式を終えてからでも相続の放棄はできますし、遺産からお葬式の出費が発生したとしても、問題なく放棄できる可能性は残るわけです。

財産の多くが預金だと、口座の凍結でお金が引き出せなくなりますが、民法の改正によって銀行に預貯金の払い戻しが求められるようになりました。

これで後はお葬式を済ませて、原則3ヶ月の期間内に相続権を放棄するか否かが決められます。

葬儀費用を払っても相続放棄はできる?

葬儀費用を払ってしまっていても、相続放棄はできる可能性があるとされます。

具体的には、支払いに必要なお金を遺産から出して、その後に放棄が行えるかという問いに対する答えです。

ただし、あくまでも可能性のレベルに留まりますから、個別に判断して不可能との結論が出るケースもあるでしょう。

被相続人で遺産を残す故人は、預金などの形で財産を相続人に託すことが多々あります。

この遺産は相続人の間で、一定の割合に基づいて分配されます。

しかし、借金についても引き継いでしまうので、遺産を受け取らない代わりに借金も引き継がない、相続放棄という権利が用意されているわけです。

相続放棄は単純承認が行われない限り、相続開始のタイミングから3ヶ月間有効とされます。

問題の焦点は、葬儀費用を遺産から支払いをした場合、単純承認と認められてしまわないかどうかです。

お葬式代を故人の財産から出したばかりに、相続放棄ができず借金を引き継ぐことになるとしたら厄介です。

民法では、相続人が相続財産の全部、もしくは一部を処分した場合に、単純承認とみなされると規定されます。

過去の判例においては、葬儀が人生最後に執り行われる儀式で、社会的に必要性が高いと判決が出ています。

加えて、相当額の支出を伴うことから、被相続人の相続財産を本人の葬儀費用に充てることは、相続財産の処分には当たらないと結論づけられました。

つまり、故人の遺産から葬儀の費用の支払いをしても、単純承認にはならないということです。

勿論、判例がいうところの相続財産の処分に当たらない支出は、社会通念におけるごく一般的なお葬式に限られます。

故人を盛大に送り出したいからと、一世一代のド派手なお葬式を行えば、それはこの判例には当てはまらなくなります。

お葬式とかこつけて高額な買い物をしたり、必要以上の豪華な料理を振る舞うのも、やはり相続放棄できなくなる恐れが懸念される行為です。

放棄後の背信的行為も、単純承認と判断される要因の1つですから、勝手に遺産に手をつけたり、用途を誤魔化さないように気をつけたいところです。

判例から大きく逸れたお葬式を執り行うと、申述を行う家庭裁判所の判断次第で、単純承認と認められてしまう恐れがあります。

誤解を招くような遺産の使い方も、お葬式の後の相続に影響する可能性が出てくるので、変に捻らずシンプルなプランを選択するのが賢明です。

スタンダードなプランであれば、支払う費用は標準的ですし、内容も平均的なので相続権を放棄できなくなるリスクを抱えずに済みます。

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葬儀費用支払いと相続放棄の注意点

葬儀費用支払いと相続放棄における一番の注意点は、お葬式があまりに身分不相応だと、放棄に関する申述が認められなくなることです。

相続放棄は家庭裁判所に申述、申し述べる形で受理されるのを待ちますが、受理後に覆るケースもあるので注意が必要です。

流石に理由なく覆されることはありませんが、問われて説明できないような遺産の使い方はしないのが無難でしょう。

費用を故人の預金から出せるからといって、お葬式の高額なプランを選択してしまえば、単純承認に当てはまらないとされる、身分相応のお葬式から外れることになります。

これは申し開きできませんし、家庭裁判所によってそう判断されれば、相続放棄の権利は失われてしまいます。

借金を引き継ぎたくないが為に、相続権を放棄するというのは理解できますが、葬儀費用に遺産を湯水のように使うのは疑問です。

実は、仏壇や仏具の購入に遺産を充てても、社会通念上相当と判断される範囲内なら相続放棄できるとされます。

厄介なのはこの社会通念上の範囲で、金額ベースで判断が行われますが、明確な基準はなくケースバイケースです。

どこまでが単純承認の範囲外かは、過去の判例を参考にしたり、家庭裁判所に判断を仰ぐことになります。

香典についても気になるところですが、香典は葬儀費用に充てる目的で、主催者の喪主が受け取るお金と考えられています。

贈与の性質があると捉えられているので、遺産でもなければ相続対象でもないです。

原則として相続放棄には影響しませんから、放棄がまだでも放棄済みであっても、香典を受け取ることができます。
反対に、お通夜や葬儀で返される香典返しは、お葬式の費用の一部とみなされるので、お返しの品物の金額が妥当な範囲を超えないように注意しましょう。
各種の公的な保険や助成金の類も、相続財産には当てはまらないので心配無用です。
遺産からお葬式代を出しても、単純承認に影響しないという根拠は、過去に最高裁で出された判例に基づきます。

判例では、お墓や仏壇の購入において、被相続人の預貯金を充てるのは社会的な通例と出ています。

ただし相当な金額の範囲内という条件つきなので、お葬式が高額で派手過ぎたり通夜振る舞いや香典返しが豪華過ぎると、判断は変わってきます。

参列者の収容で手配する式場の大きさも、同様に注意を欠かすことができないポイントです。

葬儀社に任せきりで、提案の内容を確認せずあれこれと認めてしまうと、支払い額が膨れ上がり相続や放棄に影響するので気をつけましょう。

葬儀費用と相続放棄まとめ

葬儀費用と相続放棄は、切っても切り離すことができない関係で、単純承認というキーワードが鍵を握ります。

単純承認は相続を認めることそのもので、法律上の定めがなく、家庭裁判所に申述しなくても承認可能とされています。

ここで問題となるのは、単純承認が認められてしまうと相続放棄ができなくなることです。

費用の支払いで被相続人の預貯金などを使えば、この単純承認をしたことと同じになる恐れが強まります。

相続人が遺産を使ったので相続の意思があると認められる、そのように解釈されるわけです。

ところが葬儀は突然発生することが多く、その費用は100万円にも200万円にもなります。

一般的には喪主が負担を行いますが、金額が大きいので1人での負担は難しいことがあります。

兄弟で話し合ったり、相続人同士で負担を分散することもできますが、準備に使える時間には限りがあるので、話し合う余裕はないのが普通です。

バタバタと忙しい中で、支払いを負担する人を決める必要がありますから、高額な費用ということもあって困ります。

支払いに頭を悩まないように、喪主を務める長男が負担しようとするケースが多いのはその為です。

しかし大きな負担が生じるのは確かなので、負担を拒む人がいてもおかしくないです。

借金をしたり身の回りの物をお金に替える手も考えられますが、故人の預貯金が残っていれば、それを葬儀費用に充てられます。

しかも、過去に出ている判例のお墨つきなので、相続財産から葬儀の金を出しても相続放棄は可能です。

注意点は判例で想定される以外のお金の使い方をしないこと、度が過ぎる盛大なお葬式や、不必要な式場の手配を行わないなどが肝心です。

通夜振る舞いも香典返しも、社会通念上の通例から外れると、相続放棄は認められなくなるでしょう。

墓石や土地も不相当な高額の支払いにならない限りは、相続財産の処分に当たらないです。

香典返しは常識的な金額で、お通夜かお葬式の当日に返すものなら相続放棄に影響しないです。

香典や助成金自体はそもそも相続財産の対象外ですから、これらも懸念材料とは無縁です。

気をつけた方が良いのは、金額や内容を知らずにお葬式のプランを選んだり、選択を他人任せにしてしまうことです。

葬儀社は、上位のプランを提案したりオプションなどを勧めてきますから、必ず内容を確認の上で見積もりを出してもらいましょう。

支払いに充てられる預貯金があるのに勝手に財産を処分したり、現金化してしまうと言い逃れできないので、遺産に手をつける時は相続人同士で確認する慎重さが問われます。

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