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お葬式をする費用がないときはどうすればいいの?葬祭扶助を受けるには。

 日本では、法律上で、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有するとされます。憲法第25条ではそれに加えて「国はすべての生活部面において、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とも記載があります。それに伴い、生活保護の制度があり、住宅、教育、介護や医療など、8種類の扶助があります。その中の一つに、葬祭扶助制度も含まれるため、経済的に困窮する状況下でも、最低限のお葬式が保証されているのです。

 葬祭扶助制度とは、生活保護を受けているような、経済的に困窮している人に対して、葬祭費用を自治体が負担することを言います。遺族が生活保護を受けていて、葬儀費用を賄うことができない、あるいは、生活保護受給者だった人の葬儀を遺族以外の人が手配をする場合に利用します。

葬祭扶助を受けられる条件

 葬祭扶助は誰でも受けられるわけではありません。前提として、遺族が生活保護を受給しているなど、経済的に困窮していて葬儀のための資産がないことが挙げられます。ただし、生活保護を受給していても葬祭扶助が受けられないケースもありますので、受給できるかどうかは福祉担当のケースワーカーに相談するといいでしょう。

条件1 喪主になる人が経済的に困窮している

 故人の遺族が葬儀を執り行う場合、遺族も生活保護を受けていて葬儀費用を負担できないことが条件とされます。お葬式を出す人がお葬式の費用を負担できるか否かが問題なのです。生活保護を受けていなくても、場合によっては認可が降りることも。

条件2 故人に扶養義務者がいない

 故人に身寄りがなく扶養義務者がいない場合、家主や民生委員など、遺族以外の人が申請者となり葬儀の手配をしてもらいますが、その場合にも葬祭扶助を受けることができます。扶養義務者とは、生計維持関係にあり、父母、子、祖父母、ひ孫、兄弟姉妹までの親族を言います。

支給されない場合もある

 生活保護受給者であっても、葬祭扶助が受けられない場合もあります。火葬費用を工面できると判断された場合、葬祭扶助の適応外とされることもあるようです。

故人に預貯金がある場合

 生活保護受給者であっても、故人の預貯金が火葬費用を賄えるだけ残っていれば、葬祭扶助の支給対象外です。例えば貯金があって、火葬費用に満たない場合は、その貯金を全て火葬費用に充て、不足分だけ葬祭扶助として支給されます。

親族の中に葬儀費用を支払える人がいる場合

 親族(扶養義務者)の中に支払いができる人がいる場合は自治体が負担する必要がないと判断されます。

支給額以上の葬儀をした場合 

 葬祭扶助の申請が認められた上で、通夜や葬儀を行った場合火葬費用は支給されません。葬祭扶助での葬儀をしたいのであれば、支給額で賄えること以上の内容にはできません。

葬祭扶助の申請方法

 必ず事前に申請が必要です。葬祭扶助は、葬儀費用の請求書を自治体に提出し、それが認可された後、自治体から直接、葬儀社に対して費用が支払われる形になっています。ですので、代金を立て替えて支払ったり、事前に申請をしていなければ、葬儀費用を負担できるだけの支払い能力があると判断されてしまいます。そのため、葬儀後の申請は受付されないので注意が必要です。

1 福祉事務所に連絡する

 死亡診断書のような故人の死を確認できる書類が求められるため、あらかじめ準備が必要です。事前に故人や喪主となる人の状況を相談しておくとスムーズです。申請先は、親族が申請する場合、居住地の役所や福祉事務所へ。民生委員や扶養義務者以外の申請の場合は、故人の住所の市区町村の役所や福祉事務所で申請します。

2 葬祭扶助の申請と確認

 福祉事務所で扶助の申請を行います。申請は必ず葬儀前に。申請するには「葬祭扶助申請書」が必要です。市町村の役所や福祉事務所でもらえますが、それらのウェブサイトでもダウンロードが可能です。申請書の様式は、都道府県ごとに異なります。
 申請を行うと、喪主になる人の経済状況などの審査が行われます。要件をを満たしていれば、扶助の支給が認められます。

3 葬儀社に依頼

 申請の許可が確認できたら、葬儀社に連絡をします。その際には、葬祭扶助で葬儀を行う旨を必ず伝えましょう。その後、通常と同じようにお打ち合わせで火葬場の空き状況を確認し、葬儀の日程や火葬の場所などを決めます。

葬祭扶助の範囲内の葬儀の内容と流れ

 葬祭扶助の範囲でできるお葬式の基本の形は直葬(ちょくそう)と呼ばれる一番簡易的な内容です。支給された扶助費用では、一般的な通夜・告別式のお葬式の費用を賄うことができません。支給される金額としては、大人が206,000円以内、子供だと164,800円以内が目安とされています。

必要最低限の内容は下記の通りです。
・検案(検死の場合)
・遺体の運搬
・枕飾り一式
・安置施設利用料
・棺
・仏衣
・棺用布団
・霊柩車
・火葬料
・骨壷
・骨箱
・お別れ用花束
・自宅飾り一式
・白木位牌
 僧侶の読経や戒名授与、祭壇を飾ったりはできません。

 葬祭扶助範囲内で行える直葬では、通夜や告別式は行わずに火葬のみを一日で行います。
亡くなった場所から安置施設までの搬送→火葬の日まで安置→納棺→火葬→収骨
上記の流れで行われます。参列をする人がいる場合はこれらの旨をきちんとお話ししておきましょう。

もしも申請が遅れてしまったら?

 申請が遅れて、葬儀費用を自分で工面して支払った場合、その費用を葬儀後に福祉事務所に申請しても受け付けてもらません。実際に葬儀費用の支払いが済んでいるため、支払えるだけの貯蓄があったとみなされてしまいます。

 葬祭扶助を受けて葬儀を行いたい場合は、漏れなく先に申請を行いましょう。申請が必ず受理されるとも限らず、万が一受理されなかった場合、葬儀社が持つプランの中から選ぶ必要があります。そういったときには、直葬のプランを選ぶことで、費用を最小限に抑えることができるでしょう。通夜や告別式を行いたい場合は、直葬よりも費用はかかりますが、お通夜のある家族葬を選ぶことができます。葬儀費用の準備に不安がある場合は、役所等に相談しておくと安心です。

イラスト / ちくわ

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