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X-2

 拝啓××様。

 突然の連絡で驚かれているかもしれませんが……って、これはもういいか。

 どうやら君は、一つの道を選んだみたいだね。いや、違うか。選んだんじゃない。キット初めから決まってたんだ。だから、本来俺みたいなのは存在してるはずがないんだ。

 もしかしたら、この多次元世界のどっかには存在しているかもしれないけれど、それはあくまで可能性の話。今、これを読んでいる君は、そんなことなんか関係なく、これからも生きていくんだろう。

 そして、最後には「ああ、楽しかった!」なんて殴り書きが遺書でも文句がない生き方をするはずだし、きっとそうなる。大丈夫だ。俺が保証する……と、いっても、なんの意味もないかもしれないけどね。

 なあ、××。

 人生なんてちょっとしたきっかけで変わるもんなんだな。

 いつだったかに食べたケーキの味が忘れられなくてケーキ屋を開いたり、たまたま入ったラーメン屋の味が気に入って、そこのアルバイトから店員になって、やがて独立して店を開いたり。世の中にはそんな数奇な運命が転がってる。

 きっと「何物にも代えがたい、素晴らしい物語」との出会いだって、その一つなんじゃないかって思うんだ。そして、そんな熱意は時として、次の誰かの心を動かす。そんな気がするんだ。

 なあ、××。もし、自分が命を救われたって思うんなら、その思いがちょっとでもあるなら。お前も、物語で人を救える人間になりなよ。そして、2人以上の人間を救いなよ。それを続けていけばほら、きっと最終的にみんな救われてるはずさ。世界が平和でありますようにってね。

 んじゃ、俺は行くよ。また会うことは……まあ、多分ないだろうさ。なにせ俺はもう死んでるからな。

 それじゃ、元気でな。


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