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コスメカウンターの恐怖

似合う口紅が欲しい。私はファンデーションをしないので、お化粧と言えば口紅だ。

顔色がパッと明るくなるような、夢のような口紅が欲しいなとずっと思っているのだが、いまだ運命の口紅に出会えていない。

デパートのコスメ売り場で片っ端からお試しすればいいだけのことなのだが、私は店員さんと話すのがそれはそれは苦手なのだ。なかでもいちばん苦手なのがコスメ売り場の美容部員さん。カウンターに座らされ、至近距離で顔を覗き込まれ、顔を触られる。そうするともう、心臓はバクバク、顔は真っ赤、背中を汗が流れだす。とても落ち着いてお化粧品なんか選んでいられず、逃げ出してしまう。

PLAZAのようなバラエティショップなら、店員さんと接触せず自由にお試しができるのだが、そういうところに並んでいるものは不特定多数の人が直接唇にぐりぐりと塗りつけているので、潔癖症の気のある私は気持ち悪くてつけられない。

デパートだとそういった衛生面は気を付けてくれている印象なので、本当はデパートに行きたい。でも店員さんと至近距離で話さなければいけないと思うとどうしても足が向かない。お試しせずにパッと選んでパッと帰ろうにも、メンバーズカードを作れと言われたり、要らないファンデーションの説明が始まったりで、すぐには放免してもらえないのは分かっている。

結局、バラエティショップやドラッグストアで「これなら似合うだろう」と想像して買うのだが、たいていの場合失敗する。私にとっての口紅選びは「博打」に等しい。

デパートのコスメカウンターで前髪をピンで留めてもらい、涼しい顔をして鏡に映る自分の顔をのぞき込んでは店員さんおしゃべりしている人をいつも横目で見ながら、どうして自分にはあれができないかとすごく残念な気持ちになってしまう。

これからも、運命の一本に出会うまで、何本もの口紅を無駄にしながら、私の一人博打は続く。

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