【双極性障害】社会リズム療法で再発を予防する
社会リズム療法は、「対人関係療法でなおす双極性障害(水島広子著)」で紹介されている方法です。
日々の暮らしの中で行っている活動の時刻(社会リズム)と、その活動にどれだけ他人が関わったか(対人の刺激)を表にして、「活動」「対人の刺激」と「気分の変動」との関係を見るというものです。
この表をつける第一の目的は「規則正しい生活をすること」ですが、自分の日常の活動や他人との接触が、気分にどういう影響を与えているかを確認するのに大いに役立ちます。この表をつけていると、どれだけ刺激があると気分の変動に影響してくるかが分かるようになります。
私は、活動記録表に記入しています。
具体的に表に書く社会リズムは、「起床した時刻」「朝、昼、夕食」「人と初めて接触した時刻」「仕事、学校、家事などを始めた時刻」「いつも見るテレビ番組の時刻」「就寝した時刻」です。その他、パソコンなど自分の生活内で欠かせない活動の時刻も書いておきます。
上にあげた活動について、その横に対人の刺激の強さを書き込んでいきます。自分一人だった場合は「0」、他人がただそこにいただけであれば「1」、他人がかかわっていた場合は「2」、他人がとても刺激的であれば「3」と点数をつけます。
例えば食事の時間。一人で食べたのであれば「0」、一人で食べたけれど同じ部屋に誰かがいた場合は「1」、誰かと会話しながら食べたのであれば「2」、会話が大いに盛り上がったのであれば「3」です。
最後に、その日一日の気分の評価をします。私の表では、激うつ状態の「-5」から躁状態の「+5」までの11段階評価です。
「対人関係療法でなおす双極性障害(水島広子著)」によると、活動や対人の刺激が強すぎると躁を誘発し、少なすぎるとうつになるそうです。躁にならない程度に活動を抑制し、うつにならない程度に活動するために、自分の活動と刺激を把握しておくことはとても大切なのです。
具体的にどのぐらいの活動量が良いのかは人それぞれ違います。地道な作業ではありますが、毎日活動記録表をつけて、どれぐらいの活動量と刺激が自分にピッタリくるか、じっくり検証していきましょう。
双極性障害は一生のお付き合いになる病気ですから、数か月かけてじっくり自分を観察するのがおすすめです。季節性の変動がある人は、年単位での検証が必要になります。
活動記録表を見ていると、平日は社会リズムが安定しているけれど、週末に大きく崩れるということはよくあります。例えば、友人と出かけて就寝時間が遅くなった場合、対人の刺激が大きく、社会リズムも崩れます。それをきっかけに気分の変動が起こるということが分かれば、対人の刺激を減らしたり(友人と会う時間や頻度を短くする等)、早めに帰宅していつもと同じ時間に寝るようにすることで、体調の崩れを予防することができます。刺激が強いからといって楽しみをすべてあきらめるのではなく、頻度を調節したり、刺激の強度を下げるといった工夫をしましょう。
目標は、「社会リズムと対人の刺激をできるだけ均一にすること」です。規則正しい社会リズムに沿って生活をし、対人の刺激が強すぎたり少なすぎたりしないようコントロールすることで、気分の変動を小さく抑えることができるからです。
活動量や刺激のデータが集まってきたら、主治医と相談して、日々の活動量や刺激のバランスに一定のルールを決めましょう。そして、例外を設けず、きちんとそのルールを守って生活します。時間はかかるかもしれませんが、きっと、状態が安定してくるのが感じられるはずです。
特に「睡眠」には気を配りましょう。双極性障害の場合、規則正しくよく眠ることが最優先課題です。睡眠の乱れに見えるものが、躁やうつの初期段階である場合もありますし、睡眠を規則正しくすることそのものにも治療効果があります。
社会リズムと対人の刺激をチェックすると、いろいろなことに気づけると思います。ぜひ始めてみませんか。社会リズム、対人の刺激があわせてチェックできる「活動記録表」がおすすめです。