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人形の家

「人形の家(ルーマー・ゴッデン著)」を読んだ。子供の頃に大好きだった児童書で、最近実家が大規模な断捨離をするまではずっと実家に置いてあった。ここのところ、子供の頃に読んでいた本をまた読みたくなる熱が高い。

懐かしい、あったかい、可愛い可愛いお話。訳文の言葉遣いがとってもステキ。人形は遊んでくれる子供がいるからこそ命がある。人形としてどんな家族と一緒にどんな毎日を送るかは、すべて人間にかかっていて、人形はただ祈ることしかできない受け身の立場だ。子供に触られることに大きな喜びを感じる人形。自分が博物館級の高価な観賞用の人形と知っていて、頭の中は自分のことと自尊心でいっぱいの人形。自分は堅い強い木でできているんだ、と元の大木を想像して心を強く持つ小さな人形。みんなそれぞれに個性がある。

この本は、人形や物には命があって心があるということを教えてくれる。こういうお話を読んで育った子供は心優しい、物を大切にする大人になるんだろうな(と自分で言う)。私がモノに話しかけるクセは、この本が原点なのかもしれない。

最近、実家が断捨離をしたと書いたが、その際に長く実家の押し入れにしまわれっぱなしだった私の小さいテディベアが我が家にやってきた。毛玉だらけのくたくたのテディベアは、今は我が家のソファーの上が定位置だ。暗い箱の中で長く長くしまわれている間、何を思っていたかな。何十年も経ってすっかり老けた私と再会して、どう思ったかな。そんなことを考えた。

「人形の家」は、子供に戻って暖かく優しい気持ちにさせてくれた。とても素敵な読書時間だった。

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