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プレイバックたまちゃん及び聡太くんと暮らすに至った経緯 2023/2/17

 きょうは、たまちゃんの命日である。たまちゃんは世の中の人がスマホを持っていない時代に生まれて、その死をスマホで報告した、生きるというのは前に進むことだ、というのを体現した猫である。
 たぶん去年のいまごろ、わたしはいつもの獣医さんに「栄養剤ってありますか?」と相談に行っていたはずだ。たまちゃんはもう、シリンジでご飯を食べさせても「いらなーいぺっぺっ」とやっていて、これはもう液状の栄養剤しかない、というので、とりあえず1日分、お試しで栄養剤をもらってきた。たしか1日ぶんで350円するお高い栄養剤だったはずだ。
 1週間ぶんとか買わなくてよかった、と思うのだが、獣医さんも状況を聞いてうすうす死期が近いことに気づいていたのかもしれない。
 たまちゃんは夜、栄養剤を飲ませたら、軽くむせてそのまま息を引き取った。まさに息が続かない、息を引き取る、という感じの死だった。ただし亡くなった瞬間筋肉が弛緩したらしく、おしっこをジャーっと漏らしたのだが。
 たまちゃんは頑張って生きた。そしてたまちゃんがいる暮らしが楽しかったから、聡太くんと暮らしたいと思ったのだ。

テーブルの下はたまちゃんも好きだったなあ。


 たまちゃんが亡くなって、つい癖でテーブルの下を覗きこんだり、いつもいるところを探したりする自分がつらかった。もうたまちゃんは戻ってこないというのに。
 たまちゃんは穏やかで優しい黒猫だった。歯抜けだったので噛まれても痛くなかったし、そのせいか噛まれた記憶がほとんどない。
 たまちゃんをずっとツイッターでは「猫氏」と呼んでいて、猫氏が亡くなったことを報告したら、ずいぶん前に喧嘩別れしたリアル友達がDMをよこした。お前まだツイッターやっとんのかい、とビックリした。
 そしてそれからしばらく経って、わたしと母氏はペットロスにまかせて「いまごろねこねこネットワークにたまちゃんが子猫の派遣をお願いしているんじゃないか」と冗談を言って、こんどの休みに聡太くんをチョッキンした、普段いかない動物病院の張り紙を見に行こう、と話しているときに、母氏が「子猫が生まれているがいらないか」という連絡をもらった。それは聡太くんではないのだが、さすがにもうちょっと育った子猫がいい、と連絡したら「いるよ」となり、5月の連休の最終日に聡太くんがやってくることになった。

愛しさ爆発、晩年のたまちゃんと母氏。


 子猫の聡太くんがやってくることになって、まず「二代目猫氏襲名への覚書」というメモを作った。子猫という生き物がどんなものだったか、すっかり忘れていたので、図書館から子猫の飼い方の本まで借りてきた。
 そして今の、楽しくて手がボロボロになる生活を続けているわけだが、その楽しさはたまちゃんと暮らしていてわかった楽しさだ。たまちゃんと暮らしていなかったら、聡太くんと暮らそうとは思わなかったはずだ。
 聡太くんは先代の名跡をもうちょっとで継ぐ、という感じである。まだ生まれて一年経っていない。だから子猫として扱っていて、まだ食事は1日3食だ。大人になったら朝夕の2食になる。
 3月20日になったら、聡太くんは晴れて大人である。そうなったら「猫氏」を襲名させようと思う。
 聡太くんはラジオ体操する人間の腕にしがみついたり、アジフライ泥棒をしたり、いろいろたまちゃんのやらなかった悪さをするわけだが、それもまたかわいいところだ。黒猫は穏やかでトラ猫はヤンチャ、というのをまさに体験している。
 これから猫は30年生きる時代が来るらしい。もし聡太くんが30年生きたら、父氏とタメのいつもの獣医さんだって生きているかどうか分からない。
 聡太くんには希望がある。まだまだ一歳前ということはまだまだ生きるということだ。まじないのように「長生きしろ〜」と言っている。
 変わっていく世の中を、聡太くんと一緒に見続けられたらいいなあと思う。

「いいはなししてるところにもうしわけないんですが、ゆびがうつりこんでますよ」

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