ヘドロの創作 2024/10/6
【猫の喫茶店】
たまには喫茶「灰猫」のマスターも休まねばならぬ。
ある日、客が途切れた間に、マスターは近くにできたインド料理店「タージ・ミャハル」に行ってみることにした。評判がよくてお客がひっきりなしに入っている店だが、そろそろランチ営業のラストオーダーらしく、お客は主に吐き出される一方だ。
インド料理店に入ってみると、さわやかなスパイスの香りが鼻をくすぐり、壁に貼られた極彩色のタージ・ミャハルのポスターが目に入る。入るなりヘアレスキャットの店員が「こちらへどぞ」と席に案内してくれ、メニュー表を見せてくれた。
実は喫茶「灰猫」のマスターは辛いものと乳酸菌飲料に目がない。あまり悩んでいる時間もないので、「おまかせカレーとビリヤニ」と、「フルーツたくさんラッシー」を注文した。
案内してくれた、ホールスタッフだと思っていたヘアレスキャットの店員は、そのまま厨房に入り、テキパキと料理している。どうやら一人でこの店を切り盛りする大将らしい。マスターは大将に親近感を覚えた。
ビリヤニは炊いたものがすでにあって、それをアッツアツに温めて皿に盛る。マトンのカレーも鍋からすくって、器に盛り付ける。ラッシーもコップになみなみとそそぐ。
それが\デンッ/とテーブルに置かれた。ちょっと、1人で食べる量でないのでは……? とマスターは思ったが、香辛料のいい香りに負けて、ビリヤニを食べ始める。それはまさにおいしいもののジェットコースターであり、おいしい! おいしい! と食べているうちに平らげ、お腹いっぱいで身動き取れなくなっていた。
代金を支払いながら、マスターは予想外に量がはいる自分の胃袋にビックリする。本当に、ビリヤニもマトンのカレーも、フルーツ入りのラッシーも、最高においしかった……とマスターは大将に伝えた。
「ありがとございます、あなた灰猫のひとか?」
「ええ」
「おお。こんど灰猫いっていいか?」
「もちろんです。いつでもいらしてください」
そう言い、マスターはインド料理店「タージ・ミャハル」を出た。喫茶「灰猫」に戻ってくると、そうだなあ……と考えて、まだしばらく暇そうなので、「灰猫」名物のカレーライスの改良をするか、と考えた。もうちょっとスパイスをぴりっと効かせたい。
「こにちわ」
そうしているとさっそく「タージ・ミャハル」の大将がやってきた。大将は「あつやきほとけーきと、みるくてー、いいか?」と注文してきたので、マスターは厚焼きホットケーキとダージリンのミルクティーを用意し提供した。「タージ・ミャハル」の大将とは、仲良くなれそうだ。
◇◇◇◇
おまけ
きのうは回転寿司に行くものだとばかり思っていたが、なぜか昼にラーメンを食べに行って夜はスーパーの寿司、ということになった。ラーメン屋はチェーン店ながらチャーシューのおいしいところで、チャーシューを追加してもらったらお腹いっぱいになってしまった。
聡太くんは留守番させられたわけだが特に怒ったりはしなかった。ただし心の中で「ぼくをおいてたべにいったらーめんとやらは、さぞかしおいしかったのだろうね」と思っているかもしれない。
そういえば心配していた聡太くんのお腹あんばいであるが、すっかり健康そうなものをぷりっと出すようになったので、あまり心配しなくてよさそうだ。
スーパーの寿司をモグモグしていても、聡太くんは寿司に興味なしの顔をなさっていた。猫としてそれでいいのか。猫はお魚を食べたいのではないのか。「ぼくはなまざかなとかきょうみないので……」というリアクションで、魚といってもいい匂いが広がらない生魚には興味がないのだなあ、と思った。
焼き魚にハッスルするところをみると単純に匂いの問題のようだ。猫はグルメである。
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