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ヘドロの創作

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フィクションの創作です。
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2024年10月の記事一覧

ヘドロの創作 2024/10/27

ヘドロの創作 2024/10/27

 【猫の喫茶店】

 マタタビ市はすっかりハロウィンの気配である。
 街のいたるところにカボチャのランタンが灯され、コウモリのモビールが飾られている。ドクロやゾンビが街を埋め尽くし、若い猫たちが楽しそうにしている。
 正直マスターにはハロウィンのなにがいいのかよくわからない。ガヤガヤうるさいし、本来の子供たちが楽しむイベントという趣旨から外れている気がする。とにかくマスターにとってハロウィンは「よ

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ヘドロの創作 2024/10/20

ヘドロの創作 2024/10/20

 【猫の喫茶店】

 猫世界はずいぶんと寒くなった。マスターが朝「灰猫」の鍵を開けると、店内は冷え切っていて、おもわずくしゃみが出た。
 風邪をひかないように気をつけなきゃな……とマスターは自戒しつつ、営業の準備を始めた。天気予報によるときょうは一日冷えるらしい。きっとアツアツの紅茶がいっぱい出るだろう。常連なら裏メニューの「ホットのミルクセーキ」を注文するかもしれない。これはプリンになる寸前を飲

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ヘドロの創作 2024/10/13

ヘドロの創作 2024/10/13

 【猫の喫茶店】

 喫茶「灰猫」は出版社のビルの日陰にある。出版社は子供の読む絵本から漫画雑誌から高価な学術書まで、たくさんの本を毎日作って売っている有名で大きな出版社だ。
 だから喫茶「灰猫」には出版社に原稿の持ち込みに来た漫画家の卵が溜まっていたり、小説家が原稿を書くという名目でケーキを食べていたり、本を出す有名な学者が編集者と打ち合わせをしていたりする。

 さて、きょうは編集者の茶虎の猫

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ヘドロの創作 2024/10/6

ヘドロの創作 2024/10/6

 【猫の喫茶店】

 たまには喫茶「灰猫」のマスターも休まねばならぬ。
 ある日、客が途切れた間に、マスターは近くにできたインド料理店「タージ・ミャハル」に行ってみることにした。評判がよくてお客がひっきりなしに入っている店だが、そろそろランチ営業のラストオーダーらしく、お客は主に吐き出される一方だ。
 インド料理店に入ってみると、さわやかなスパイスの香りが鼻をくすぐり、壁に貼られた極彩色のタージ・

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