小説『人間きょうふ症』10

 先生が会議終わるのを待った。その間は、先生の読心術についてずっと考えていた。多くの人が持っているわけではないことは、感情が読み取れない自分でもわかっていた。だから、どうしたら読めるようになるのか私には全くわからなかった。
 数分後、ドアが開く音がした。優しいオーラを放つK先生だった。
 「お待たせ。今日はなんで学校に来ようと思ったの?」
 「…先生のことが気になったからです。」
 「ん?どういうことかな?」
 「…昨日、先生は目から水が溢れました。その時の心情が読み取れませんでした。泣いている理由がわかりませんでした。それが気になって、先生に聞こうかと思って、来ました。」
 「そうだったのね。あれはね、佐藤さんの話に既視感を感じたというか…なんというか…」
 しばらく無言が続いた後、先生は息を深く吸って言う。
 「実は昔、私も学校に行くのが嫌でしょっちゅう学校を休んでいたの。でもね、休んでいたことで多少後悔してる部分もある。もしかしたら、この思いはあなたが将来に持つものとは異なるかもしれないけど、後悔してほしくないと思ってる。今を大切に生きてほしい。授業は受けなくてもいい。でも、学校に来て勉強すること、課題を出すこと、コミュニケーションを取ることは忘れないでほしい。あと、苦手科目もきちんと勉強しようね。課題では頑張ってたけど、それだけだと足りないからね。」
 「あ、、はーい。」
 目を机から窓へゆっくりと逸らしながら返事した。
 「苦手なのはわかるけど、現代文は他の科目でも必需なんだからね。今は現代文の先生ではないけど、数年前までは担当してたから教えるよ。そんな顔しない。苦手な人でも絶対に理解してもらえる自信しかないんだから!」
 先生は微笑みながら言った。

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