小説『人間きょうふ症』39

 「本当にごめんなさい。」
 「...な…んで、謝るん...です…か」
 「それはもちろんあなたをあの時手放してたからよ...」
 手放した...?一体なんのことなのか。先生はいつ私を手放したのだか。普通に価値観が合わなかったから離れただけじゃなかった?それが手放すことに繋がるの?私には意味がわからなかった。
 先生は涙ぐんだ目を必死に擦っていた。
 「先生、だい…じょうぶ…だか…ら。だから…もう…悲しまない…で…」
 「いえ、だめです!これは全て、私の責任です。」
 「な…んで…」
 「え?」
 先生は不思議そうな顔をして言う。
 「なんで…先生…が、悪いって…言うん…ですか。という…か、喫茶…店のおじい…さんは…?」
 「佐藤さん、、あなた、何も覚えていないのですね。」
 先生は口を開け、何かを言おうとしたが、何も言わなかった。数分して、やっと言い始めた。
 「あの…ね。佐藤さん、あなたは、、トラックに撥ねられたの。」
 え?今、先生はなんて…?私が、、車に撥ねられた?何おかしなことを言い始めたのだか。そもそも、先生はなぜここにいるのを知っているのか。意味がわからなかった。
 「あなたの大家さんが偶然、それを見て、救急車を呼んだそうです。私にも連絡がきたので、それで駆けつけました。」

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