小説『人間きょうふ症』31

 どう答えれば良いのか、私にはどうしてもわからなかった。K先生に迷惑をかけているようにしか見えない。教員という仕事を失わせ、今では服を買わせている。そもそも、先生の目的はなんなのか。そんなことも知らないでここまで逃げている。
 逃げたかったあの現実からは避けることはできた。私をいじめる者はいなくなって気は楽になった。でも、果たしてこれは正しい道なのか。
 「佐藤さん。あなたは迷っていますね。」
 「…先生にはなんでも見透かされるんですね。」
 「それはあなたが見透かされてほしいからでしょう。佐藤さんが私に何かを訴えているようにしか見えませんよ。」
 「私は特に伝えようと思っていません」
 「心は嘘をつけないんですよ。自分自身に嘘だと言い聞かせ、自分自身を騙そうとしている。それでは、壊れるだけです。だから身体はそれを誰かに伝えたい、甘えたい、そして不安をなくしたいと感じるようになる。」
 先生の言っていることは正しかったけれど、認めたくなかった。それがまた、私の顔に映ってしまうのだった。すると先生は
 「ほらね。本当は悩みを全て聞いてもらいたいと感じています。要するに、今の時代でいう、ツンデレってものですかねー」

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