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ヌトゲノムの涙 2

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ヌトゲノムの涙 113

 暗い大聖堂の中を進んでく。勿論何かに注意してオードレストは警戒を怠らない。外に魔物が配置されてたんだ中にだっておかしくない。そうオードレストは思ってる。とりあえず天上の気配が大きい方へと向かってるが……それと同時に体が重くなる気がする。でもそれは天上の力が魔物には天敵ともいえるソレだから。つまりは合ってるってことだ。今は人型になってるが……これはどう考えても向こう側に行くとなると、この姿をたもっ

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ヌトゲノムの涙 112

 大聖堂の中はやけに静かだ。まあ真夜中だから人の気配がないのは当然といえば当然。だけど、それだけじゃない感じをオードレストは感じてる。やけに冷えてる気もするんだ。明らかに外気よりも中の方が冷えてる。吐く息が白くなって消えていく。天上は楽園とか呼ばれてる筈で……ここはその天上人もっとも地上で近い場所の筈。そんな場所がこんな不気味でいいのだろうか? 的なことをオードレストは思ってた。

 カラクリを先

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ヌトゲノムの涙 111

 指を千切って作られた気持ち悪いカラクリが大聖堂へと続く広場を進んでく。無数の足をわしゃわしゃと動かしてカラクリが進む。見えなくなったとしてもオードレストはその姿をとらえる事が出来る。そしてそのカラクリの視界をオードレスト自身が見ることもできた。なかなかに使えそうな代物だ。そうオードレストは思う。

 そのカラクリを先行させる。大聖堂へと続く広場は綺麗で整然としてる。考えられた彫像の配置に、それを

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ヌトゲノムの涙 110

 聖都へと侵入したオードレストは人型となり、屋根屋根を素早く渡っていく。だが大聖堂の近くまできてかなり困った事になった。
 
(何か……居る)

 闇夜に紛れる形で魔物のような……だが、この聖都でただの魔物は存在出来ない。それに魔物がまるで聖堂を守る様に歩き回ってるって事がおかしい。まあ魔王達は天上と繋がりがあるから、影響下にある魔物がいてもおかしくは……だが、それは世間一般には知られてないこと。

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ヌトゲノムの涙 109

 男の記憶が流れ込んできた。オードレストはそれを実感して噛みしめる。けどあまり有意義な情報があったとは思えない。確かに幾人かの天上の奴らは分かったが、そこまで上の奴ではなさそうだった。どちらかというと、この男と同じようだったような? 神の様な存在の本当の天上人はそうそう姿をあらわす事はなさそうだ。だが収穫はあった。
 
 入り口がある。天上へと続く。しかも直通の。それを使えば天上へと乗り込む事が出

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ヌトゲノムの涙 108

「ほ、本当ですか?」

 司祭服を着た男はそういって顔を上げた。彼は敬虔な信徒だった。この危険な世界を嘆き、少しでも他者の助けになりたいと男は信仰にすがった。信仰は確かに他者を救ってる。自身が救われた信仰は間違ってなどいないと……そう自負した男はたくさんの場所でこの信仰を広める事に成功してた。そしてきっとそれが評価されたのだろう。
 
 ただのしがない神父だった男の元に、ある日教会の幹部と名乗る者

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ヌトゲノムの涙 107

「ひっひいいいいいいいい!?」

 そんな情けない声を上げる奴。さっきまで戦ってた先兵の方が幾分もマシだな……とオードレストは思った。空の上でふんぞり返る分にはあんなに偉そうだったくせに、こうやって同じ目線にまで降りてくると、まるで目も合わせられない程の奴。こんな何の覚悟もない奴に使われて死んでいった部下の方がかわいそうだ。
 
「私は……私も同じように食べる気か!?」
(お? 少しは気概を見せる

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ヌトゲノムの涙 106

(不味い)

 オードレストはその天上の使い魔みたいな敵を咀嚼しながらそう思う。だが、のどに流し込む度に傷がふさがるから食べない訳にはいかない。それにオードレストは自身の特性をわかってる。オードレストは食べた敵の力を手にすることができる。こいつらの力が何なのかはそうわかってはない……が、欲しいのは天上に対抗できるだけの力だ。
 
 こんな雑魚ではたかが知れてる。だが、オードレストは小さい事からやっ

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ヌトゲノムの涙 105

 オードレストは何処か知らない荒野へと降り立った。適当に移動したが、人気も魔物の気配もない場所だ。それは都合がいい。まあ魔物が屯するとしてもオードレストなら一帯の魔物を駆逐するのに数分とかからなかっただろうが。
 
(さて……)

 空間の穴を開けて、オードレストはさっき戦った暗部だった化物の首を出す。二つの首の内の一つを出した。こいつら、なにか異空間で言いあってた。二人一緒なら何やら口を噤むのも

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ヌトゲノムの涙 104

 久しぶりの人の……新鮮な肉の味を味わった。子供達と暮らす様になって、成るべく人の肉は口にしない様にしてた。だから……その味を思い出したオードレストは歓喜した。思わずもう一口……更にもう一口。すると抱え込んでた数人の身体はいつの間にかなくなっていた。
 
(もっと……)

 そうすぐさまに思う。どうやら食ってしまえば、回復とかも意味をなさないみたい。それならば、わざわざ吹き飛ばしたりする必要もない

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ヌトゲノムの涙 103

 暗部達が翳した黒十字。それから黒い靄が出てきた。そしてそれが全身を覆っていく。それと同時に天上に現れる模様。天上は前よりも地上に干渉してる。つまりはあれも……
 
(不味いか?)

 天上に描かれてる模様はオードレストは好きじゃない。まるでそれ自体が天上の目の様な感じがするからだ。そしてそんな天上に描かれた模様が身体を包む黒い靄を吸い込んで行く。そしてその後にのこったのは、もがれた翼の様な物をは

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