ヌトゲノムの涙 110

 聖都へと侵入したオードレストは人型となり、屋根屋根を素早く渡っていく。だが大聖堂の近くまできてかなり困った事になった。
 
(何か……居る)

 闇夜に紛れる形で魔物のような……だが、この聖都でただの魔物は存在出来ない。それに魔物がまるで聖堂を守る様に歩き回ってるって事がおかしい。まあ魔王達は天上と繋がりがあるから、影響下にある魔物がいてもおかしくは……だが、それは世間一般には知られてないこと。それなのにこんな大本の警備にあんな魔物を使うとは……
 
(アレの目を盗んで行くのはなかなかに……)

 だがここでおおっぴらに動いたらそれこそ無謀と言うものだ。けど諦める気はさらさらないオードレストは自身に何が出来るか、そして未知の敵がどんな相手かを知るために動き出す。
 
(とりあえずやってみるか)

 そう思いオードレスとは自身の指を一つブチッと引き抜いた。そこから血は出なかった。ちぎるまえにカラクリ化をしてたからだ。そして既に指は再生されてる。ちぎった指はカラクリがカタカタと蠢き、その形を変えていく。
 
(小さくて、素早く動き回る……そんな形で……)

 オードレストは必死に想像力を働かせる。すると指だったカラクリは小さな四足歩行の形に変わった。生き物を想像した筈だが、その姿は歪な形に無数の足がついてます――と言っただけの姿って感じ。カラクリが蠢いてるが見えてなかなかに気持ち悪い。しかも耳を澄ますとカタカタとカラクリの起動音が僅かに聞こえる。

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