ハーブ屋さんを始めたわけ(1)

週末だけの店をやっています、というと、たいてい、
「好きなことを仕事にしたんですね」
「趣味の店ですね」
と言われます。
そうか、世間様からはそう見えるんだと思ってははは、と笑っておくことにしています。

実際は、ちょっと違います。

私の父は自営業でした。
なので、資金繰りやら休みがあるようでない生活やら、いわゆる商売の面倒くささをたくさん見て育ちました。
ですから、自分は毎月決まったサラリーの来る仕事につくんだ、と決めていました。
自分で商売なんてやるもんか、です。

ところが、父の死と前後して、今の店となっている生家が面している道路を拡張することになり、家を壊すか、退くかしないといけなくなりました。
費用は国から出ると言います。

最初は、壊してしまおう、と思っていました。
柱も曲がった古家を残しても仕方ない。
使い道もないし、更地にして売ってしまおう、と。

そこに、軒先を貸してほしい、という話が出ました。
道路を拡張するので、そこらじゅうの家や商家が工事に入ります。
その間、仮店舗として貸してほしい、というのです。
いいですよ、と言って二箇所に貸しました。

それまで、その家は閉め切っていたのですが、そうして家に人が出入りし、風が入るようになってしばらくして、あれ、と気づきました。

この家、まだ生きてる。

閉め切った空き家だった間は死に体だった家が、ひとが入ることで生気を吹き返したように見えたのです。
(そのうち続く)

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