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自分らしいなりわい③|あなたにとって働くとは

自分の興味のあることをなりわいにして、生き生きと楽しそうに働く、スギちゃん(栗農家&料理人)、ぺぺさん(会社員&あまご養殖場見習い)、青山さん(ゆるやか文庫)の3名に、働くということについてインタビュー。

最後に、皆さんにとって働くこととは何か、そして、10年後の未来について聞いてみました。(聞き手:Mai(そとで、ここで)、場所:獅子越荘ロッジ)


働くということを考えてみる


――みなさんにとって、仕事とは、働くとは、どういうことですか?

スギちゃん:今の自分にとって仕事、働くとは、暮らしの一部かな。生活そのものっていうか。生活と仕事と遊びがなんだかグラデーションでつながっているような感じ

――それは、以前は暮らしと仕事が別れていたのが、なだらかになる感じですか?

スギちゃん:そうだね。本当にそう。前は会社に仕事しに行って、お金をもらって、そのお金でなにかしたり買ったり。だから、欲望のために稼ぐみたいな。

今はそうだな。栗をつくることは里山を守ることにつながってたりもするのだけど、それが生活の糧にもなっているわけで。お金を得るためにしているという感覚があまりなくて、暮らしと仕事の境目みたいなのがないんだよね。みんなはなんて答える?


ぺぺさん:
仕事とはよね。まあ、その質問をどう解釈するかだけど、あのなんか、最近思うのは、感謝のリレーっていう感じがしていて。自分が結局、誰かから受け取っているものが圧倒的に多いから、働くということは、世界に対してありがとうっていう表現になるんじゃないかな。そして、僕のありがとうが、たとえばすぐちゃん(青山さん)へ、スギちゃんへと、ポンポンポンと巡り循環していくような感じ。そんなふうに「ありがとう」が、パスされていく中の自分は一部という感じで働くということを捉えている。

――すごい! いろいろ考えてますよね。

ぺぺさん:なんか最近、思うのよ。

スギちゃん:働くとか、そういう仕事ってことが?

ぺぺさん:物事が形になっていくのって、時間が長くかかると思うのよね。自分には3人の娘がいるんだけど、今、自分がやっていることは、いつか必ず彼女たちに影響してくる。やっていることの時間軸というか、今、ぽちゃんと投げた石が、5年10年ぐらいで、形になるようなこともあれば、自分が生きている間には完結できない物事もあるみたいな感じ。まあ山とかもそうじゃないですか。植えた木がやれ何100年っていうことは、その時、自分はいないじゃんみたいな。そんなことを思いながら、仕事をしています。

スギちゃん:背負ってる規模感がちょっと、手仕事とかと違うからね。環境みたいなことになると、そうだね。

ぺぺさん:どこか自分で完結できなくてもいいって思ってるんだよね。

スギちゃん:確かに。

ぺぺさん:だけど、なんとなく、こうなったらいいなみたいなのはぼんやりとあって、自分だけではできないから、みんなでやったらいいじゃんって思っているみんなでちょっとずつ進めた方が面白い。大きく計画して進めるのもそれはそれでいいんだけど、どちらかというと、計画はぼんやりとしているけど、みんなが好き勝手になんとなくやりつつ、こうなったらいいじゃんって方向への流れができたらいいなと意識しながら仕事してます。

青山さん:私は、お二人よりも、今みたいな自分の仕事をしている生活になったのが浅く、まだ1年経ってないので、そんな大きな単位で全然考えられていない答えなんですけど。今は、自分がなんかやっていて心が楽しいと感じられているかどうかを基準にしているので、楽しいかどうかですかね。

――すごく同感です。自分の心の声に向き合うことってすごく大事なことですよね。

青山さん:かつては、休日明けに仕事へ行くのが憂鬱という時代もありましたが、今は自分をそういう状態にしたくないというか。楽しいことが仕事であり、働くことって思いたいです。



定年はあるのだろうか

――みなさんにとっての定年はいつでしょうか?

スギちゃん:定年ねえ。ないのかなあ。でも、形は変わるよね。多分自分の働きかたは、どんどん変わっていくと思うの。今、40代でこのくらいできていることが、10年後も同じぐらいできるかっていうと、ちょっと考えられないから。

やっぱり体力は減っていくし、どんどん衰えることもあるから、なんとか形を変えながらでも、現役でいたいなとは思うかな。クリエイティブに何かを創造したりすることは、年齢を問わずできることだから、ずっと何か楽しいことに関わってたいなとは思う。

だから、定年はないっていうことで。

青山さん:同感ですね。


生涯現役を語るスギちゃんの相棒、料理道具。美味しい時にスギちゃんが発する言葉「ぷまい」が包丁にも刻まれている。一番右側が栗剥きに欠かせない「くりまさ」。昔からあった道具を復活させ、販売もしている


ぺぺさん:定年……、イメージが湧かないな。

スギちゃん:わかんないけど、止まることはないよね。子育てだって、20歳になったら終わるかといったらそうでもないもんね。結局、夫婦の間柄だってそうじゃない? どんどん形を変えて10年、20年、30年……、多分終わらない。終わることは死ぬ時なんじゃない? だって、もし、動けなくなったり、コミュニケーションが取れない状態になっちゃったとしても、多分誰かには影響を与え続けるからね。だからそう思うと難しいな、なりわいと定年。

ぺぺさん:まあ考えたことあるかと言われたら、ないですよね。それは今だからなのか、よくわかんないけど。

スギちゃん:そうだよね。

ぺぺさん:去年から見習いに行かせてもらってる養魚所の場合、同僚の平均年齢が80代なんだよね。同僚がよ!

青山さん:平均年齢ですか!

スギちゃん:すごいね。

ぺぺさん:まあ、僕がそこで入っちゃうと、がくんって下がっちゃうけど(笑)。彼らの姿を見ていたら、80代になっても現役で、しかも試行錯誤中なんよ。

いやもう人生の後輩としては、答えや正解を見つけていてくださいよって思うじゃん。それが、こうかな、ああかなって、目の前でやっていて。マジか!! 80歳になっても、こうかなああかなってやらなきゃいけないんだって(笑)。

でも、そうやっていまだに思考錯誤しながらやってるから、みなさん元気だよね。


10年後の自分はどこにいる?

――10年後の自分は、どうしていると思いますか?

ぺぺさん:多分ね、僕は、今の時点だと、まあ小田深山(おだみやま)にいるかなと思ってて。

スギちゃん:10年後ね。

ぺぺさん:小田深山LIFEは今月から12年目に入るんだけど、飽きてない。例えば富士山とか石鎚山って、なんとなく目を瞑っていてもみんな同じような形やシルエットを思い浮かべるやん。でも小田深山をイメージしてよと言われても、そもそもそんな山ないしみたいな(小田深山は地域の名称)。どこか形がないみたいなところが気に入ってると、自分なりに思っていて。だから、いろんな解釈の仕方がまだまだできるというのが、12年ぐらいいてようやく見えてきた。まだそこやからね。


標高1000mを超える小田深山の獅子越荘ロッジ前で語るぺぺさん


ぺぺさん:今とは全く違うことを小田深山っていう舞台でやってるかもしれないけど、自分にとっては場所性って、結構、重要な気がしてる。今は、「いつでも」「どこでも」「だれでも」みたいなことが、いたるところで叶えられてるし、仕事もそういう傾向があるんだけど。

でも、自分が目指そうと思ってるのは、真逆で、「今しか」「ここでしか」「あなたしか」みたいなところ。そこに飛び込めるかどうかで、結構変わってくるんじゃないかなみたいな気がしていて。自分としては、いつでも飛び込む準備できてるし、なんならもう飛び込んじゃってますよ! みたいな感じ(笑)。とにかく10年後も小田深山にいるイメージですね。

スギちゃん: 10年後も、ずっと今みたいな暮らしをしていたいですね。栗に限らず、何かをつくり続けていたいな。晋平ちゃん(ぺぺさん)が小田深山にいるとしたら、10年後、まあ私は石畳にいると思うので、山を守り、何かを育て、それを使ってクリエイティブし続けたいかな。

そして10年後は、石畳に仲間がもっと増えているといいな。私たちと同じように農家として里山を守りながら暮らす若い担い手がたくさん集まってきて、それぞれの持ち味を自由に発揮できる場に石畳がなっていたらいいなって思います。


石畳清流園の水車小屋の前で、ご主人のかずくんと佇むスギちゃん。


青山さん:10年後……、正直わからないです。でも、今のお二人の話を聞いていた中で、現時点で今の暮らしに飽きていないので、多分まだここ(御祓・みそぎ)には、いる気がしています。いていいんだと思いましたよ。なんか、はい。

今まで何度か移住してきてるので、今までの感じだと3、4年したら、なんかちょっと思いはじめるんですよ。これでいいのかとか。でもそれが今のところなくて、逆にここでしてみたいことのイメージが増えてきていて。本当になんか今までの言葉を借りると、ここにいます(笑)

ぺぺさん:宣言になってる(笑)!


ゆるやか文庫のある旧御祓小学校(現コミュニティースペースみそぎの里)の校庭で。青山さんのそとの愉しみは、珈琲を飲んだり、手紙を書くこと。そとで手を動かしながら考えを巡らせれば、仕事のアイデアが浮かぶかも



働くということは、生きることの一部。あなたにとって働くとは、どのようなものでしょうか。 毎日ワクワクした気持ちで過ごせていますか? 違和感を抱えながら我慢していませんか? 

働きかたの選択肢が広がる中、自分らしいなりわいや働きかたを実現させるハードルは低くなっています。それを実現させているスギちゃん、ぺぺさん、青山さんの答えや仕事観が、悩むあなたの背中を押すことにつながればと願います。 身につけるもの、食べるもの、サービス……、私たちは、誰かの仕事に囲まれて暮らしています。

つまり働くということは、誰かの役に立つこと。それは、どんな小さな仕事でも。インタビュー中に「感謝のリレー」という言葉が出てきましたが、私たちもバトンをつなぐ一員であることに気づくことができたなら、働くということが違って見えてくるのではないでしょうか。

なりわいは、美しい里山の風景や個性的なお店など、その地域の「ここでしか」の景色をつくり出しています。ここ内子町にもある、そんな風景やつくり出す人々に、ぜひ、会いに行ってみてください。

「そとここ」や青山さんも一緒に企画している旅「そして、これから<和紙編>」も、紙にまつわるなりわいに触れることができるのでおすすめです。あなたの働くことへのヒントになるかもしれません。

Coordinator Mai Oyamada
Writer Mami Niida
Photo Ko-ki Karasudani


ここに会いに行こう


亀岡家

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ゆるやか文庫

住所:愛媛県喜多郡内子町只海甲456 コミュニティースペースみそぎの里2F
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