困難な時代を生き抜く思考法
みなさんも、「ストイック」という言葉は知ってますよね。
食事制限をしたり、一心不乱にトレーニングに打ち込むアスリートに「あの人はストイックだからね」と言ったりしますよね。
あれです。
別に僕は「TOKYO 2021」を目指すアスリートではないし、腕立て伏せは連続20回しかできない貧弱体質です。
でも僕は今、「ストイック」にハマっています。
僕がハマっているのは、ストイック的な思考法です。
ビジネスマンの間でひそかなブームに
「ストイック」とは、ストア哲学を研究したり、実践している人たちのことです。
僕はまったく記憶にありませんが、みなさんも高校の倫理でストア哲学について習ったはずです。
じつは、今ビジネスマンやプロスポーツ選手の間で、ストア哲学がひそかなブームなんです。
例えば、アメリカ元大統領のビル クリントン、映画俳優でカリフォルニア州知事になったアーノルド シュワルツェネッガー、ハリーポッターの作者JK ローリングなどは、愛読書としてストア派の古典をあげています。
少し前から、このストア哲学の古典を解説した本が、アメリカでベストセラーになったりしています。
注目されているのは、ストア哲学の実用的な思考法です。
ストア哲学が発展したのは、今から約2000年前のギリシャやローマです。
2000年前と言えば、まだイエスキリストが生きていた時代で、日本はまだ弥生時代です。
そんな時代の哲学者が考えていたことが現代でも使えるということは、人間の悩みというのは今も昔も大して変わらないということなのかもしれません。
ストア哲学の何が流行っているのか?
ストア哲学は、宇宙の成り立ちとか、人生の意味とか、その守備範囲はとにかく広いです。
そのほとんどは科学の発達によって陳腐化しているわけですが、ストア哲学には幸せに生きるにはどうするべきかといった、現代でいう自己啓発的なアドバイスもたくさん含まれています。
注目されているのは、そういったストイック的な人生観や思考法です。
今でも読み継がれている代表的なストア派の古典は、セネカの「手紙」とマルクス アウレーリウスの「自省録」の二つです。
この2冊は、哲学書というよりもエッセイです。
セネカの「手紙」は、セネカが友人のルキリウスに宛てた手紙で、その内容は今でいうお悩み相談のような内容です。
セネカはローマ帝国の政治家&ビジネスマンで、詩や演劇などの作家活動もこなすセレブ作家でした。
今で言うと、石原慎太郎さんのような立場の人が、後輩の作家に向けてアドバイスしたEメールを本としてまとめたような内容です。
手紙の話題は、時間術とか、友人関係とか、情報発信の方法とか、不安の解消法なんかのアドバイスです。
本屋さんのビジネス書コーナーにありそうなテーマですよね。
アウレーリウスの「自省録」は、雑記メモ。
アウレーリウスは第15代ローマ皇帝ですが、ストア派の哲学者としても有名で、哲学を国家運営に反映させた賢帝と呼ばれています。
今だとアメリカ大統領のTwitterの呟きを本にまとめたような内容です。
トランプ大統領は賢帝というイメージではないので、オバマ元大統領のツイートのようなイメージでしょうか?
ローマ皇帝と言えば、当時では世界の覇者。
何でも思い通りになる、この世の神です。
でもアウレーリウスは、ストア派の考え方に基づいた正しい政治を追求しました。
アウレーリウスは、悩みがあっても人に相談できる立場の人ではありません。
「自省録」は、世襲という運命で望まずにこの世の神になってしまったローマ皇帝が、欲望に負けそうな自分に言い聞かせるように書いた自分メモでした。
出版を前提に書かれたものではないので、自分が死んだら燃やすようにと言っていたようです。
「自省録」の内容も、モンスター部下との上手な付きあい方とか、セルフコントロールといった、ビジネス書的な内容です。
こういった普遍的な人生の課題に、2000年前の哲学者が本質的な回答を与えてくれるのです。
アメリカのビジネスマンやプロスポーツ選手は、セネカやアウレーリウスの言葉を人生の指針にしているのです。
ストイック的な思考法
ストイック的な思考法を一言で説明するなら、「自分の思考と行動を変えよう」ということです。
ストア哲学の考え方の基本は、自然との調和です。
自然を変えるのではなく、自分を自然に調和させていくというのが基本の考え方です。
日本的な考え方にも通じるものがありそうですね。
ストア哲学は、自分がいる環境や状況は基本的に自分の意思で変えられるものではないと考えます。
例えば、人身事故で通勤電車が遅れたとします。
ほとんどの人は、電車が遅れたことにイライラしたり、打ち合わせに間に合わないかもとオロオロしたりすると思います。
電車が遅れたという事実は、あなたが怒ったり焦ったりしても変わりません。
これが、自分の意思で変えられない状況です。
ストア哲学は、その状況にどう反応するかはあなた次第ですよ、と教えてくれます。
電車が遅れてできた時間は、スマホの電子書籍で読書してもいいし、頭の中で営業トークのイメージトレーニングをしてもいい。
与えられた状況の中で、常にベストの自分で居続ける。
これが2000年前の哲学者が教える、現代人へのメッセージです。
今の世の中に必要な気がする
ベストセラー作家のティム フェリスは、「ストア哲学は自分のOS(オペレーティングシステム)だ」と言っています。
ティム フェリスは、効率的に新しい知識やスキルを身に付けるライフハックのトレンドを作った人です。
彼は、自分のスキル習得や学びの土台となったのは、ストア哲学だったと言っています。
ストイック的な思考法は、今の日本人に必要なんじゃないか。
僕はそう考えています。
現在は、全世界で新型コロナウイルスの感染が拡大して、昨日ついに小池都知事が東京都民に対して外出自粛要請を出しました。
パンデミックや、実質的な東京都のロックダウンは、あなたの意思でどうこうできる問題ではありません。
こういう状況で、イライラしたり、文句を言ったりしても、状況は何も変わりません。
あなたにできるのは、与えられた状況の中で、ベストな自分になること。
ストア哲学は、困難の時代を生き抜くヒントを教えてくれるのです。
おススメの本
セネカの「手紙」日本語訳は絶版になっているので中古本のみですが、古い訳なので読みにくいかもしれません。
アウレーリウスの「自省録」は、キンドル本が岩波文庫から出ているので、ぜひ読んでみてください。
「自省録」も読みにくいという人には、ライアン ホリデイの「苦境(ピンチ)を好機(チャンス)にかえる法則」「エゴを抑える技術」「ストア派哲学入門 ──成功者が魅了される思考術」の三冊がおススメです。
ストア哲学の要点が、わかりやすく解説されています。
*****
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?