技術士第二次試験:必須問題Ⅰ対策法 【04電気・電子部門】過去問解答例10題
1.日本技術士会HPの過去問題掲載リンク
2.過去問題及び解答例
R01_I-1
・過去問題
我が国では、2015年に国連で採択されたSDGs(17の持続可能な開発目標)を基に、持続可能な取組の導入が奨励されている。電気電子分野においても、多様な取組が行われているが、大規模システムや複合的な機器などの技術開発で、当初の意図に反して、様々な弊害が発生している。また、当初の意図そのものに問題がある場合も少なくない。
このようなアンバランスな状況下で、開発・生産と利用・消費との関係性における持続可能なバランスの確保について、広範囲に数多くの目標が議論されている。
(1)電気電子分野のシステム・機器における「開発・生産と利用・消費との関係性における持続可能なバランスの確保」の考え方に基づき、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析してください。解答は、上記の関係性の観点を明記した上で、それぞれの課題について説明してください。
(2)(1)で抽出した課題の中から最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題の解決策を3つ示してください。
(3)上記すべての解決策を実行した上での新たな波及効果、及び懸念事項とそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えをしてください。
(4)(1)~(3)の業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会の保全の観点から必要となる要件・留意点を述べてください。
【解答例】
(1)持続可能なバランスの確保に関する課題抽出と分析の観点
課題1:エネルギー効率と環境負荷のトレードオフ
開発・生産段階において、エネルギー効率を追求することが環境負荷の低減につながる一方で、それには高度な技術や材料の使用が必要であり、これが生産段階での資源消費や廃棄物の増加に繋がる可能性がある。
課題2:設計段階での廃棄物削減の困難さ
システムや機器の設計段階での廃棄物削減は重要ですが、現実には機能や性能の向上を図るために、部品の多様化や複雑化が進み、リサイクルや再利用が難しくなっている。
課題3:技術革新の速度と規制のギャップ
技術革新の速度が加速する中で、規制が追いつかないことがあり、新技術の安全性や環境への影響が事前に正確に評価されないまま実用化される場合がある。
課題4:サプライチェーンにおける社会的責任の欠如
多くの電気電子製品はグローバルなサプライチェーンで製造されるが、一部の地域では人権侵害や環境汚染が問題視されている。しかし、これらの問題に対する企業の社会的責任が不十分であることが課題となっている。
(2)重要課題への解決策
最も重要な課題として「技術革新の速度と規制のギャップ」を挙げます。この課題に対する解決策を以下に述べる。
解決策1:リスクアセスメントの強化
新技術や製品の開発段階で、環境への影響や安全性に関するリスクアセスメントを徹底的に行うことで、事前に問題を把握し、適切な対策を講じることが重要である。
解決策2:規制の迅速な改定と適用
技術の進化に合わせて、規制の改定を迅速に行い、新技術が市場に導入される際には、最新の規制に則った評価が義務付けられるようにすることで、規制と技術のギャップを縮小する。
解決策3:技術者の倫理教育の強化
技術者に対して倫理的な責任を啓蒙し、環境や社会への影響を考慮した設計や開発が重要であることを教育することで、技術革新の速度と規制のギャップを埋める一助となる。
(3)解決策の波及効果と懸念事項への対策
上記の解決策を実行することで、新たな波及効果が期待される。例えば、リスクアセスメントの強化により、新技術や製品の環境への影響を事前に把握し、開発段階での修正や改良が可能になる。これにより、市場投入後の環境への悪影響や安全性に関する問題が減少し、企業の信頼性向上や消費者の安心感が生まれる。
しかし、実行にあたって懸念事項も存在する。例えば、規制の迅速な改定と適用において、規制の過度な厳格化がイノベーションを抑制する可能性がある。この場合、柔軟な規制改定と技術者との対話を通じたバランスの取れたアプローチが求められる。
(4)倫理と社会の保全に関する要件・留意点
要件1:持続可能性への配慮
開発・生産段階から廃棄物削減や環境負荷の低減を意識し、持続可能な技術や製品の実現に努めることが不可欠である。
要件2:透明性と情報公開
技術開発や製品の安全性・環境への影響に関する情報を積極的に公開し、ステークホルダーとのコミュニケーションを図ることで信頼性を確保する。
要件3:倫理規範の遵守
倫理的な行動規範を遵守し、法律や規制を遵守するとともに、社会的責任を果たすことが求められる。
留意点1:リスク管理の徹底
開発・生産段階でのリスク管理を徹底し、技術革新が社会や環境に与える影響を最小限に抑えることが重要である。
留意点2:継続的な教育と啓発
技術者は継続的な倫理教育や環境啓発を受けることで、自己の専門知識と倫理観を向上させ、社会の持続可能性に貢献する。
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