見出し画像

旅が終わる<夫婦世界一周紀107日目>

明日ブリスベンから飛行機に乗れば、およそ100日ぶりに日本の地に戻ってくる。

心まで離れられたのかは疑問だ。まるでコンパスの針のように軸足はがっちり埼玉の住まいに突き刺さっていて、砂漠にいても海にいても、僕の心はずうっと日本に軸があるように思えた。

それでも、日本で日本のことを思い、日常の中で日常を紡ぐのとは、世界旅行というのは全く違うものだ。常にお金を消費するだけの生活、見聞きしたことのないものを見る暮らし。ただそれだけと言ってしまえばそうなのだけれど、言葉ではできないような確かな価値が世界一周にある。そのことだけは確かだということは旅をする前から感じていたけれど、旅を終える時には確実なものに変わっていた。

必要な時に必要な形で旅に出れば、その時に必要なものを旅は与えてくれる。それがたとえ死であろうと、生であろうと、犠牲に見えるものでも必要なもので、たとえ同じ道を歩んでいるように見えたとしても、それは360度回転したのちの同じ方角だったりして、次元が変わる。明確に。

この気持ちをどうしようか。ブリスベンで最後の夜がひたひたと進んでいた。疲れきったフウロたちはすでに寝静まり、僕はそっと机に座り、考えていた。終わりがすぐそこまで見えている。後悔はないし、やっておかなければならないこともない。全ての国の紙を作って、行きたい場所にも行き、ケイコさんにも会えた。目を瞑るだけで幾千もの光景が飛び込んでくる。この光景が僕のこれからを彩り、力を与えてくれるように思えた。

気負わなくていい。信じて閉じればいい。

旅を終える決意をした。寝よう。

ここから先は

0字
外に出ることが出来ない今、旅をできること自体に価値が生まれつつあります。僕たちが見てまわった世界はもうないかもしれないけれど、僕らが家にいる時にも世界は存在していて、今日もトゥヴァだってニウエだってある。いつか全てが終わった時に、あそこに行きたいと思ってくれる人が一人でも増えたらいいなと思って、価格を改訂しました。 無料で公開したかったのですが有料マガジンを変更することが出来なかったので、最安値の100円に設定しています。

2018年8月19日から12月9日までの114日間。 5大陸11カ国を巡る夫婦世界一周旅行。 その日、何を思っていたかを一年後に毎日連載し…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?