ENJOY! 室内楽アカデミー・フェロー演奏会 Ⅰ Ⅱ サントリーホール ブルーローズ 2021年6月12日(土),26日(土)

両日足を運んだ。
チケットを購入した理由は2つ。

①昨年度の第5期の修了演奏会でのクァルテット・インテグラが素晴らしかったから。
②京トリオを聴きたかったから。

2日足を運んで、上記の2つの目的は十分に満たされた。
更にルポレム・クァルテットという全く意識してなかったグループの演奏も素晴らしく、充実した時間だった。

以下、徒然に感想を。


両日参加したが、個人的に2日目の方が良かった。

それは僕の体調、好みの問題かもしれないし、場に慣れた出演者たちのおかげかもしれない。

京トリオに関して言えば、1日目のベートーヴェンは非常な緊張を感じた。
大公の1楽章。
美しい音色に、鮮やかなトリル。
十分素敵だったが、初めてライブで拝聴する有島京さんというピアニストへの巨大な期待は完璧には満たされなかったかもしれない。


2015年のショパンコンクールで最も惹きつけられたコンテスタントの1人だった。
クライマックスですら静寂を感じさせるバラード1番、さり気なく美しいト長調のノクターン。
何より二次のラストに弾いた「エミール・ガイヤール」。

僕には間違いなく他とはっきり異なる個性を持ったピアニストに聞こえた。

いつも付き纏う静けさ。
こちらから引き止めたくなる程、後を濁さずに消えていく音楽。

彼女がサントリーの室内楽アカデミーに参加したのは嬉しい驚きだった。

膨れ上がった期待を満たしてくれたのは2日目のブラームスだった。
2番の1楽章。

冒頭、ヴァイオリンの山縣郁音さんとチェロの秋津瑞貴さんが、ただ揃っているだけではない、非常に詩的なニュアンスを伴った出だしを奏でる。

恥ずかしながらこの曲の良さを初めて気付かせてくれる演奏だった。

有島さんも静かな入り。
左手が低音域で厚い和音を押さえるときも、絶対に弦をかき消さない。

所謂ブラームス的な演奏なのかはわからないけど、丁寧なニュアンス、調性の移り変わりへの繊細な対応、何より旋律的な動きのときの翳り!

ぐいぐいと引き込まれてしまった。
素敵だった。

チェロの秋津さんが、演奏後のトークで、ピアノトリオでも各奏者はソリスティックなアイデンティティを持っていないといけないみたいな話を(記憶が改竄されているかもしれない、すみません)されていて、このトリオはそれを実現されるトリオだと感じた。

もっと聴きたい。
シューマンやシューベルトなどを取り上げてくれないだろうかと思う。


クァルテット・インテグラは2日共充実した演奏だったと感じたが、1日目の武満徹が微妙についていけなかったのと、2日目のモーツァルト、春(14番)の3楽章が素晴らしかったので相対的に2日目が印象に残った。

3楽章の出だしの1st三澤響果さん!!
素晴らしかった。
完璧なコントロールではなかったかもしれないし、バランス的に少し厳しいところもあったように聞こえたけど、オペラのように空気が一変した。
フィガロの伯爵夫人のアリアのような、静かに真っ直ぐ伸びる声。
1発で会場を惹きつけた。

昨年のストラヴィンスキー、クセナキス、ハイドンも素晴らしかったし、本当に魅力に満ちたカルテットだ。


ルポレム・クァルテットも両日素晴らしかった。
1日目はメンデルスゾーンの2番の終楽章。
2日目はヤナーチェクの「内緒の手紙」の1,2楽章。

ヤナーチェクのクァルテットは詳しくないけど、クロイツェルといい、この内緒の手紙といい、急に射してくる光のような叙情的な瞬間に胸が掴まれる。
相当気色悪い作曲背景なのに。

チェロの中山遥歌さん筆頭に全員の集中力と意志を強く感じた。

来年も足を運ぶと思う。

ここから先は

621字

¥ 200

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?