貴方の "想い残し" を聴けるのならば。
「カメラ買ってほしいな」
趣味としてだけではなく、仕事でも使いたいことを伝えると、すぐに実物を見に行こう、と家電量販店へ連れて行ってくれた。
思い返せば、これが最後のおねだりになった。
昨年のいつの日か、
ふと私の心に芽生えたのはこんな感情。
その日以来、写真を撮ることが日課になった。
どんな些細な日常も、どんな些細な表情も、残しておきたくて。
まさにこの劇中の台詞通り。
きっとその瞬き一つ一つのその瞬間も残したくて。
今思い返せば、これが私にとっての『想い残し』だったのかもしれない。
誰もが抱える 人生の”想い残し”
映画のタイトルは『明日を綴る写真館』。
テーマとして掲げられた ”想い残し” という言葉に惹かれた。
初めてこの映画を知ったのは、出演している佐野晶哉さんの存在だった。
彼が所属するグループを知り、彼らのデビュー日が近づく中で、この映画の公開日も近いことを知った。
最初はそんなにも気には留めていなかったけれど、このタイミングで彼らを知ったこと、そして何より、主演・平泉成さんと佐野晶哉さんの年齢差が58歳ということになんだか不思議な感情を抱き、この映画の公開日を待ち遠しく思うようになった。
今の私が必ず観なきゃいけない映画のように思えて。
一緒に、観よう。
なんて思いながらも、
毎週の映画鑑賞がルーティンだった貴方の通い詰めた映画館で一緒に観ることは、今の私にはまだ出来なくて。
今回は旅先の映画館でこの映画を観ることにした。
何故だろう、涙が出ない。
でっかいハンカチをカバンの中に忍ばせていたのに。
だけど、確実に、胸の詰まる想いがした。
このタイミングでこの映画が公開され、そのテーマとなるものが「カメラ」を通した ”想い残し” というキーワードだったこと。
それはそれは何かを自分に訴えかけられているような、そんな気がした。
今、この胸の中にある感情を。
誰にも吐き出すつもりなんてなかったけれど
吐き出すなんて無意味なことだと思っていたけれど
むしろ今さら引きずっていることを弱いとさえ思っていたけれど
『想い残し』という大きな言葉の槍が、急に今となって 私の心へと突き刺さる日々…
何処を見渡しても、貴方の姿ばかりが投影され、貴方の姿ばかりを追いかけ、貴方の声ばかりが聞こえてくる日々…
だけど きっと、あのとき そうなることもつゆ知らず 何気なく伝えた "最後のおねだり" が、この鬱々とした日常を抜け出しなさい、と導いてくれているのかもしれない。
自分のしたいことをしなさい、と。
自分の過ごしやすい日々を送りなさい、と。
だから、自分でその道を切り開かなければ。
やっぱり私にはその道しか残されていないような気がするから。
そんな気持ちを、
5回目の空を見上げて。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?