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シンエヴァ最後また寺山修司だったね


#シン・エヴァンゲリオン劇場版

ネタバレ有り。

画像は”壁”が消失して町中の人と部屋がつながる寺山演劇、レミング。

エヴァに関する駄文というものは、須く自分語りから始まるものと古来よりなっております。ちなみに僕は、カヲルくんが一番好きなキャラクターだけど性格は結構ミサトさんに似ていると自己分析しています、なんで近親憎悪でミサトさんは苦手意識がありました。が、今回の映画で唯一ウルっときたのはミサトさんが昔のノリでブンダーに突撃した所です。認めたくないけど。うん、一番感情移入してしまった。

あっちなみに今回のエヴァ一言で言うと寺山修司のさらば方舟と書を捨てよ街へ出ようの合わせ技に近作に近いゴダール的な匂いを感じ取りました、これに関しては次項以降で詳しく触れる事とします。

明らかな前提としてエクスキューズする事は、大変にエヴァ好きの大向こうの皆様を相手にして大変野暮かとは思うのですが、一言書き添えておきます。

何故このような事象が起きてしまうのか?それは、非常に単純でエヴァは通常考えられているようなSFではなく単に庵野監督の脳内では主観的には実在している出来事を忠実に映画化している私小説アニメだからそのような性質を帯びてしまう…とだけ申し添えしておきます。

エヴァを最初に見たのは、思い起こせば物心ついたかつかぬかのテレビ放送。テレ東の夕方にこんなアングラ演劇っぽいカルトアニメをやっていたのはやはり世紀末…スカムカルチャー全盛期っぽいでしょ?懐かしきスタジオボイス。

当時は、同じ寺山っぽい感じでも歌舞伎っぽい見栄切りとキラキラ感があったのでぼくはウテナのが好きでした。(今でもイクニ監督のが好きです作風的に。この話を長くしすぎるとめちゃくちゃ長くなってしまいますので今回は単に色男特有のサラッと女の子を扱える作風で少女漫画的な繊細な心の揺れ動き方の扱い方の方がネトッとした過度にオタクっぽい自意識ライジングな庵野監督より好きだったと分析してますとだけ触れておきます)

あっちなみに僕は一番好きなやつは旧劇場版のAirまごころを君にが一番好きというのも補足事項で。書いておきます。あの旧劇場版は、最強の自傷行為を周囲に返り血を浴びせかけるような日本史上稀に見る怪作だったと思いますまじで、全てを曝け出す感じがパンツ脱ぐどころか切腹して量産型に内臓食い千切られる弐号機みたいになってて庵野監督すごい最高なんてやつだ…となったおぼえがあります。あれは最高に最高なリストカットだったと思うよ。

やべ、前置きだけで千文字ももう書いてしまってる…だからエヴァは触れたくなかったんだけどまあエヴァについて書く事はセラピー染みてるので書かねばなりますまい。では次項からシンエヴァについて書いていこう。

今回のシンエヴァのあらすじ

エヴァを論評するにあたって必要なので簡単にまとめておきます。

0.アバンタイトル マリとヴィレがパリで戦闘をしていてマリの無双によりユーロネルフ跡地から壊れたエヴァの修復パーツをゲットするのに成功する。1.と時系列的には同じっぽい。

1.Qでアスカに連れられて脱出したシンジと黒いプラグスーツの綾波が人類の生き残りがいる第三村という理想のヒッピーコミューンみたいな自給自足村っぽい村に連れてこられる。

2.その村に旧同級生のトウジやらケンスケがいる。で、Qの時と違って丁寧に村人がシンジくんに説明や世話焼きをしてくれている。シンジは心を塞いでいてずっと無言だが、綾波は村に溶け込んで何故か農作業などをしていて人間的機敏を学び、アスカはカジさんっぽい頼れる大人の男になったケンスケと付き合っているぽい

3.塞ぎ込んでたシンジはアスカに強制的に飯を食わされたり、綾波の献身的なコミュニケーションでなんとか回復するが、黒い綾波はネルフ施設から離れていると存在が消えてしまうらしくシンジくんにお別れを言って消える。カジさんとミサトさんの子供にも会う。

4.綾波がいなくなった後、なんらかの決意を固めたシンジは、アスカにヴィレの戦艦に連れて行って貰うよう依頼すると何故かサクッと乗艦許可が出て再び戦艦に戻る。

5.ネルフが恐らくフォースインパクトを起こすであろう最後の儀式を行う地点を突き止め、ヴィレの戦艦は最終決戦へ向かう。アスカはなんで怒ってたのかを訊いて急に物分かりと理解度が高まったシンジと和解する。

6.最終決戦の地では冬月がずっと直立不動で一人でヴィレと同型の戦艦を大量に一人であやつっていて、ゲンドウの儀式完成まで時間稼ぎをしてくれている+大量の腕だけだったり白っぽいエヴァもどきだったりキモいエヴァでマリとアスカも足止めする。が、冬月は最後に消える

7.戦闘の結果、儀式を完成させるのに必須のエヴァ十三号機までアスカが辿りつく。リツコさんが作ってくれた十三号機を機能停止させるのに必要な十字架を刺そうとするが刺さらない。で眼帯に隠された使徒パワーを使うが使徒パワーを使うことを見越していたゲンドウの罠にハマるアスカは儀式の素材としてつれさられる。

8.ヴィレの戦艦の上に現れるゲンドウ、ミサトさん達が相手をしていると何故か丁寧に目論見を説明するが有能なリツコさんなどに撃たれるが、使徒になっていたゲンドウには効かず不思議パワーを引き起こす黒い月が現れる。儀式完成の一歩手間である。ゲンドウは2本の神を殺せる槍を持って全てを実現できる神の謎の白い空間へ消えていくがヴィレには白い空間行く術がない。

9.戦闘で壊れた戦艦の牢屋に閉じ込められていたシンジは脱出に成功しミサトさん達の目の前に現れ、エヴァに乗せてくださいと言う。発狂したトウジの妹やヴィレの乗組員に撃たれるがミサトさんに庇われシンジくんは無事で初号機でゲンドウを討伐しに行く。

10.初号機の中にはシンジくんをエヴァに乗せないために頑張っていた綾波がいて綾波パワーでシンジくんは白い空間で無限ワープを繰り返し逃走していた十三号機にのるゲンドウになんなく追いつく。

11.白い空間はイマジナリー空間であらゆる事象が存在していたので初号機と十三号機は映画のセットぽいあらゆる舞台で戦闘を行う。が、十三号機は全くおなじ動きをトレース可能で戦闘は無駄ということにシンジは気付く。また、この儀式を止めるためには既にゲンドウが使った2本の槍以外に3本めの槍が必要なことに気づきリツコさんが難なくそれを作りだす。また、マリさんによってイマジナリー空間からシンジを救出可能なことが示唆される。

12.シンジはイマジナリー空間で何故この儀式を行うのかをゲンドウの孤独な生い立ちからエヴァの実験で死んでしまったゲンドウの最愛の人ユイと出会って死別するまでを見せられ、ゲンドウに再びユイと繋がることだと説明される。また、シンジと繋がりを持たなかった自分はその資格もないし興味を持てなかったことを説明される。が、シンジにゲンドウは論破され、ミサトさんの特攻によりこの白い世界に干渉可能な槍がシンジに届けられ、ゲンドウはユイの子供でもあるシンジにユイの面影を見て満足して消えていく。

13.ゲンドウを浄化したシンジはこの儀式を止めるためには自分自身を犠牲にして3本めの槍を使って世界をエヴァンゲリオンが存在しない世界に調律することによって事態の打開を図ろうとする。アスカや綾波、カヲル君の心象風景空間で彼らと和解し彼らの心残りを全て解消するシンジ。最後この世界と共に消え去るのみかと思っていたところ初号機の中にいたユイに救われ現実世界へ戻る機会を得、ギリギリ間に合ったマリさんに現実世界へ連れ戻される。

14.現実世界へ風景が戻り、駅のホームでぼーっとするシンジ、線路を挟んで向こうにはアスカやレイ、カヲル君がいる。その後ろから目を隠され誰だと言われたマリさんがいて歳を重ねた二人になる、両方社会人っぽい。そして付き合っているみたいで駅のホームから二人で楽しそうに出口へ急ぐ。 

15.実写の田舎の駅のホームが出て終劇。

意外とあらすじ、めちゃくちゃ文字数が必要で大変だった…記憶だけを頼りに書いたんで間違いや誤解時系列の乱れがあるかもです。有識者の皆皆様その場合は忌憚なくご指摘をいただければと思います。

感想と論考

0.マリさんって特に理由は示されないですけど、滅茶苦茶強いですよね。そして劇中でも重要なシーンで出てくるけど胸がデカくていい女だよ〜と自分で言っちゃう感じ、完全に監督の奥さんである安野モヨコさんの漫画に良く出てくる仕事ができるエロい女みが強いです。後述しますが完全に庵野作品と言うよりはモヨコさんの漫画からスピンオフして出てきた感じがするなーと。メンタルの強さもハピマニのシゲタ並みだしさエヴァっぽくない。パリの旧市街がめちゃ赤いの綺麗でした。よく指摘されているようですがキリストの子供であるシンジ(神の子)と聖書の外典で結婚するマグダラのマリアのモチーフに安野モヨコさんの漫画のキャラクターの要素、そしてモヨコさん本人の要素がくっついたのがマリさんでは?と言うのが僕の見立て。あとやっぱパリから始まるのもゴダール的なシンクロニシティを感じます、ゴダール的な編集の快楽だけで、テーマ性が薄くあるだけそしてアニメーションの記号を解体し脱構築している点気になります。

1.ここはもう、ジブリですね。完全に鬱状態だった庵野監督がむりやり風立ちぬの声優に起用されてセラピーになってまた再起したよ、意外の解釈はこのシーケンスではできないと思うのですが?皆様はどうでしょう?描写の理想のヒッピーコミューンみたいな薄っぺらさと綾波のpvみたいな違和感は自分の実感がこもった自然賛美ではなく他者に仕組まれた経験故の書き割り感につながっている感じがしますね、そこがこの指摘を捕捉しているのではないかと思います。

2.例のアスカがなぜ?といった戸惑いもあるシーンですよねここ。完全にシンジにガキガキ強調してたアスカですが、自分もガキだからその指摘を強調していた訳なのは自明で大人の男に依存すると言う意味で父親を欲していたエディプスコンプレックスの発露がケンケンだと言うことでは?と考えます。後さ、今カノと住んでいる家に失意のシンジ君を連れ込んで癒やそうとするケンケンってナチュラルなサイコパスでは?と感じたのは僕だけでしょうか。

3.綾波が感情の発露を覚えて消えるシーンは手を伸ばすと消えてしまう儚さがあってそれが書割っぽい謎の田園空間の中では一番リアルな痛みを感じていて後々棘のように喪失感が他の背景が嘘っぽすぎてかなり残ったのが印象的でした。綾波が消えるのってもっとエモクデキルのに単に大人シンジにするためのスタンプラリー化にしてた気がする(母親ユイとニアリーイコールの関係だからね綾波は)

4.今回の新エヴァでは心の機敏を説明過多なほど象徴や直接的すぎて下品に感じるほどのセリフで説明しているのですが、シンジくんの綾波がいなくなった心情だけさらりと説明が意図的にカットされて進められていた点、引っかかってます。まあストーリー上ここでシンジくんの揺れ動きがあると滅茶苦茶最終決戦に行きづらいというのはあるんですが、それにしてもね。綾波、理想のもの言わない文句言わない従順な憧れの女の子の存在が急に取るに足らないものになって現実の女に向き合うとふと思い立って興味を急に失ったのか?庵野監督って感じですが、あっちなみにこの新エヴァは全シリーズ多少そうでしたが、シンジくんと監督のシンクロ率は無限大だと思います過去最高のアベレージを叩き出している。

5.アスカとの現実世界での和解ですね、ここはアスカがもはや過去の女だと印象付けたい印象操作が入っているせいか勤めて冷静に戸惑いが一切なく的確な回答を瞬時にやっていたのがもう本当に残酷なくらいもう好きじゃないし、昔は好きだったのにを印象付けてます。

6.ネルフの人員って二人しかいないけどゲンドウあんまり働かなさそうなイメージなんで笑、冬月の労働量やばそうだよね〜、みんな年取って大人になっているのに実年齢が上な二人で謎の計画を進めているのはアニメ制作をする自分たちのメタファーっぽいです、後戦艦を一人で4つ動かす原理は気にしちゃいけないどうせ不条理劇なんだし笑

7.シンエヴァは割とエヴァお約束が少ないですが、珍しくいつものエヴァパターンで希望が残る解決方法が実は絶望の入り口パターンだったやつです笑、それとここで式波シリーズでアスカも作られた存在で綾波っぽい存在だよーとどんでん返しが入るんですが、これは今まで一番生身の女っぽい存在だったアスカをアニメキャラに堕としてマリの生身の女感をあげるギミックだと思われます、それとアスカのキャラって最初は新鮮だったけどツンデレとしてパターン化されてしまったのでそのメタファーも入っていそうです。

8.ゲンドウがサイクロプスみたいなフェイスガードとるとなぜか空間があいたシトっぽいなにかになってましたね、でも目論見をぽつぽつと教えてくれるので親切且つ、ゲームのチュートリアルキャラ感があってあんまり強キャラ感はないです。二本の槍でやり直すのはQから続く伝統芸能か!と言う感じとなっています〜

9.戦闘の衝撃で脱出に成功したシンジ君が決意を固めてヴィレクルーの人たちに何故にエヴァに乗るのか、そしてこれまでとの違いは何かなど務めて冷静に急に大人になったシンジ君が説明します、旧劇みたいになにがあっても最後までエヴァにはのらないぞ!という強い決意とは違って滅茶苦茶能動的だったもので少し面喰いました、それと普段黙ってる人が発狂すると滅茶苦茶怖いですよね、やっぱという教訓があり〼。

10.綾波パワーでサクッとゲンドウに追いついたので今度のエヴァは謎の説明でお茶を濁さずに最短経路でちゃんと結末までいくぞ!という庵野監督の強い意志を感じました、偉い!

11.あらゆる空間でメタな戦闘を行うエヴァ初号機と12号機の絵面は面白かったんですが劇中劇でそれがメタくセットになっていて異化効果でミサとの家で戦闘するとかってこれ滅茶苦茶寺山修司っぽい演出が始まりまして、それと書割が倒れる感じとかがかなり田園に死すの青空の下にある和室っぽかったりする気がするんだよなー、後壮大なスケールなのに壮大な感じが全然しなくてさらば箱舟っぽい感じもするな近親相姦の話で家族の話だし。ATGっぽすぎるので援用されたゴダールっぽさも感じるぜ。

12.ゲンドウのゆいへの依存っぷりって生まれて初めて出会った優しくしてくれる冬月研のオタサーの姫にくそ依存してるっぽいオタクっぽくてなんだかオタクの一代記の超告白みたいな感じで見てていたたまれなくなったしまったけど、本人にとっては超切実な問題なんだなーと言う感じがします。あと大人になったなシンジっていうか置いて枯れてるのは君だゲンドウ君。あと、さらっと謎空間に干渉できるマリさんというのが出てきましたが、やっぱマリさんは安野モヨコさんのアバターであり、安野漫画の登場人物で外部から来た存在なので作品世界の法則の影響を受けないのはそれは当然でありましょう。

13.槍が届いたところは笑っちゃったけど、僕が庵野監督だったらあのソシャゲの微妙なアイテムみたいな終わらせるためのなげやりな槍、物販で売ってたと思います悪意の塊でしょうか?これって。あと子供の中に失った伴侶の残像を見るって何十年、コミュニケーションを拒否してきてそれかーいってなるけど滅茶苦茶感動的ではありますよね。マリさんは作品外からきてますからこの世界のあらゆるルールを無視できますのでもちろんシンジ君救うのも間に合いますし、問題ないです。

14.線路を挟んで向こうにはアスカやレイ、カヲル君がいますが、これピングドラムでいう運命の乗り換えが完了した世界線に移行したことのメタファーですね、それと線路を挟んでいるのは並行して存在はしているけどもう交わらない存在のメタファーです、でマリさんとシンジが急に大人になりますがその直前にマリさんが一瞬眼鏡をつけ外ししてますよね、これは赤い眼鏡でウルトラセブンのウルトラアイなので変身のメタファーでここで現実世界に切り替わりますよというカントクなりの分かりやすい合図です。

あと胸が大きくていい女!っていうシンジ君のセリフを鑑みると監督の理想のいい男像はカジさんっぽいナチュラルにちょっとセクハラOKでモテる色男っていうのも伝わってきてかなり感慨深いです、なんて正直なんだなカントク、で最後のシーンこれは声変わりましたが実写の庵野監督と安野モヨコさんにしたほうがより分かりやすかったと思います~

あっやべーエヴァって凄い怪文書を書かせる力がある・・・

また気向いたら短くまとめた論考書こうと思います。

Sister Leyのオオシマです、何か不備がありましたらご指摘&不明点などお気軽にお問い合わせくださいね。