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新春浅草歌舞伎であけおめ✨気分がアガった

新春浅草歌舞伎のチケットが優待価格で出てたので勇んで申込んでみたら当選した
人生3度目の歌舞伎観劇
その感想をレポートします
それと20年ぶりくらいに浅草に行ったんだけど、
それがけっこうカルチャーショックだったみたいな話も。
お時間ございましたらどうぞ

浅草が怖かった

観劇にまったく関係ない話で恐縮だが
目的地の浅草公会堂が
ザ・浅草というかんじの観光地エリアど真ん中に建っていることに浅草に着いてから気がついた。

ところでこれを読んでいるあなたは銀座線浅草駅の6番出口を利用したことがあるだろうか。

こえええよ
初めて銀座線浅草駅で降りたが、
他の銀座や日本橋の駅はかなりラグジュアリーな感じの駅なので
浅草駅もそんな感じかな?と何にも考えず降りたワケだが。
いきなりチャイニーズマフィアの跋扈する映画の世界に突き落とされたみたいで死ぬほど怖かった。
朝の10時くらいだったので、どこの店もやっていなくて……それが余計に怖くて……
やってたらやってたで別の怖さがありそうだけど……
この6番出口直通の浅草地下商店街は
ほんの20〜30メートルくらいの長さだろうが、
小走りで駆け抜けて命からがら……という気分で地上に出たら、
今度はほとんど外国人観光客が行き交う活気あふれる商店街に出た。
こ、こんなところだと思ってなかった。浅草って……
おみやげ屋さんの店先では著作権の怪しいNARUTOのパーカーを外国人観光客が熱心に物色していた。
そんなん着てる人、日本人にはいないよ……
「観光地」に行く!という心の準備もなく
すっかり雰囲気に飲まれてフラフラとしていたが、
目的地の浅草公会堂の前には人力車が止まっていた。
すごい、浅草ってこんな所だったんだ……

浅草公会堂の内部も浅草


浅草公会堂は、中に入るとお弁当屋さんがいきなりズラッと並んでいる。
旅行先の活気ある魚市場などで時折体験するあの感じで「客引き」が行われている。
これまで明治座や歌舞伎座には行ったことがあったが、お弁当を買ったことはなくて。でもこの雰囲気だったらお弁当買いやすいなと思った。
それに、お姉さんが「中で食べられるお弁当ですよ!」と声を張って客引きしているので、休憩中に座席でお弁当食べていいという歌舞伎のシステムも、初めて来た人にも理解しやすくていいな、と思った。
私はコンビニでおにぎり買っちゃってたのでスルーさせてもらったが……

親しみやすい雰囲気

建物自体はけっこう古いが、
座席やトイレなど細かいところはけっこうキレイで最近改築したのかも。
エスカレーターなどはなく、上の階に行くにはエレベーター1機と急な階段のみで、けっこう高齢の人が多かったので遠慮して階段で移動したがけっこう大変だった。
「台東区立」浅草公会堂とのことだったので、市民会館ぽい感じなのかな?とか思っていたが、花道もある立派な歌舞伎用の劇場だった。

第一部 本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)


まだ歌舞伎初心者だし、イヤホンガイドは必ず借りているのだが、
この演目は古典の演目なのかセリフが全然ききとれず理解できなかったので、
ガイドがあらすじを説明してくれてたいへん助かった。
八重垣姫(やえがきひめ)というこの物語のメインヒロインは
「赤姫(あかひめ)」という歌舞伎において赤い着物を来た、10代の若くてお転婆なヒロインに分類される役柄らしい(ちがうかも!)
なるほど、こないだ見た天守物語の「亀姫」も真っ赤な着物で天真爛漫だったけど、アレも赤姫ってやつだったんだな。
それと私が子供の頃見ていた「あんみつ姫」もお転婆な「赤姫」だったんだ、と知識が繋がる感じがしてキモチイ〜!となった。
話を戻すが、
この八重垣姫、まぁ〜〜〜カワイイ。
部屋の壁に貼ってる二次元のキャラ(死んだはずの許嫁の絵の描かれた掛け軸のことだが)に本気で恋をしてる、中学生くらいの女の子……
なんか中学時代の私みたいじゃん!笑
まぁ八重垣姫にオタク女子の素養があるかはともかくして、
くるくる表情が変わる、あどけない、かわいらしい仕草……
え、かわい〜〜〜と女の私でも思った。
これって「萌え」とか、美少女アニメと同じ方向に追求された美意識じゃね!?
こんなかっわいい女の子を演じてるのが男性とか……
倒錯してるな〜
歌舞伎とは最初、出雲阿国という女性が始めて、最初は女性がやってたけど、公序良俗に反するからっつって、野郎歌舞伎ならヘンな気を起こすやつもいないだろう、といって男性だけがやることになったらしいけど(ちがうかも)
これはこれで、別の方向にぶっ飛んでるよな。
でも男性が女性を演じようとするからこそ、女の子のかわいらしさの発露を、一つ一つを丁寧に掬える、ということもあるのかな。だからこそ、女の演じる女よりもカワイイ、ということもあるのかな。
それにしても、懐いた子犬みたいに武田勝頼にまとわりつく八重垣姫の恋慕の凄まじさ。
性の搾取がソッコーで大問題になる現代日本において、男性と恋愛関係になる人間が未成年の女性であるというだけで即座にピリつくというか、緊張感が漂ってしまうものだが、
日本史に登場する女性はいつもパワフルで(北条政子とか)自分は性的弱者であるという自覚が全くなく驚かされる。
八重垣姫にしても自分の好きなようにする!ということしか頭になく、なかなか振り向いてくれない男性に対して猛アプローチしても悲壮感が全くないので、途中からこれってラブコメなのか?みたいな気持ちで眺めていた。うる星やつらのラムとあたるみたいな……
そんなわちゃわちゃした二人を眺める楽しい演目だった。
勝頼様もめちゃくちゃカッコよかった
勝頼様、イケ過ぎてて直視できなかった

第二部 与話情浮名横櫛 源氏店


えーっ「よわなさけうきなのよこぐし」って入力したら予測変換がヌッと出てきた〜!
有名なお話だったんだな😳
いやあバカ過ぎて笑えますねハハ
一部とはうってかわって、すっごいセリフがききとりやすかった。現代劇というか。
登場人物は5名、そのうちの2名がまぁまぁのカスだ。そうなると登場人物のうち40%がカスということになる。これはなかなかの割合だ。
そのためこの演目をなかなか好きになることができず苦労したが、韓国ドラマもかくやというほどの「運命」の引力が物語を導いており、面白いあらすじだと思った。
もしこれが韓ドラだったら、切られ与三郎もお富も共に記憶喪失になってただろうし、二人が再会した瞬間スローモーションになってしっとりしたバラードが流れていただろうな

第三部 どんつく


すっごく、良かった。
良かった点は三つ。

一つは、不思議な形のカゴにハンドボールくらいの手毬を投げ入れる「けん玉」みたいな曲芸が面白かった。
歌舞伎ってこういうこともするんだな。
この曲芸のパートはどのくらい古い歴史があって、いつからやっているのかは分からないが、
お正月というおめでたい時間に、みんなで笑える、楽しい時間を過ごしたい、というエンターテイメントの精神を感じた。
現代においてショービジネスといえばledにスモークにレーザーに特大モニターと演出もド派手だが、
こうして「けん玉」を人前でするだけでも十分面白いエンタメになるんだよな。
私も、見ず知らずの隣の座席の人と、同じタイミングであーっ!と声を出したりして、客席で一体になりこの「けん玉」を見守った。
それと同時に、近年NHK紅白歌合戦の名物コーナーになりつつある例の「けん玉」の演出のことも思い出し、
年末年始のお祝いと「けん玉」とは切っても切れない関係らしいというのも学んだ。
来年は私も挑戦してみようかな笑

二つ目に良かったのは、
音声ガイドがこのどんつく内で披露される神楽を、
「古来から、江戸の人々が新年を祝ってきた踊りです」と紹介してくれたことだ。
たまに外に出て、月とか空とか、大地とか。そういうふとした自然の風景を見る時、もう亡くなっている100年前も1000年前も昔の人たちも、同じものを見てたかな?と思って見つめることがある。
きっと同じものを見ていたはずだ。そうでなければ、百人一首が現代の私たちには響くことはないはずだから。
そういう、ずっと昔の人達も見てきたのと同じものを、今私も歴史の途中のある地点から見つめているたのだ、という感動が、神楽のシーンでこのガイドを聞いた途端、わっと湧き上がってきた。
それと同時に、イヤホンガイドの幕間のコメントを聞く限りかなり聡明な感じの、私よりも年若い俳優の方々が、自分のため野心もあわらにIT系ベンチャーで企業するのでなく、外資系コンサルに就職してブイブイいわせるでもなく、シンガポールに移住して節税するでもなく、こうして文化を大切に継承するつもりになって、歌舞伎という伝統にコミットするつもりになってくれているからこそ、こうして私は劇場で、月を見上げた時みたいに、昔の人と同じのもを見る体験をさせてもらたんだと思った。
そのことがとてもありがたく、尊く感じた。 

最後に三つ目は、音声ガイドの女の人が何度も役者が勢揃いするこの三幕を「眼福」と言ったこと。
私は生まれて初めての歌舞伎を見てからまだ2ヶ月しかたってなくて、これは3回目の観劇だ。
「勢揃い」、とは言っても舞台上の役者は10人に満たない。そんなに大人数というわけではないのだ。
この新春浅草歌舞伎は若手歌舞伎俳優の登竜門とも言われるという。ガイドの人がそう言ってた。
ほんの2か月前に初めて歌舞伎を見た私はまだ何もわからないのだが、多分みなさん、とても人気のある俳優さんなのだと思う。
少なくともこのガイドさんにとっては「誰を見ようか迷ってしまいますね!」とイヤホン越しに興奮が伝わるレベルで好きな俳優さんたちだということただ。
なんか、知らない世界だな……と思った。
でも、その知らない世界のことを、いいな、と思った。
それが三つ目に良かったことだ。

三つって言ったのにもう一つ良かった点があるのだが
このような「若者」が全面に出ている舞台でも、
長唄や三味線のチームには必ず老齢の男性がキャスティングされていたことがとても良かった。
上手く言葉で表現できないのだが、
この珍しい伝統的な仕事においても、そしてもちろん人生という広域な領域においても、積み重ねてきたキャリアのある人が淡々と仕事をこなしている姿というのには痺れるものがある。
老齢の男性の隣には、やはり若い男性が同じ衣装を着て長唄や三味線でハモっていたが、
なんというか、ごく普通の多摩地区のサラリーマン家庭で育った私からすると、こうやって伝統を志す若者や家庭(家系?)に身近で出会ったことがなく、こういう仕事を生業(なりわい)とする人々を見たことがなかったので、非常に面食らう思いがした。かっこよかったです

まとめる


わたしはずっと自分は日本人である、と思っていたが、
日本文化において象徴的な存在ともいえる浅草も歌舞伎も自分が思うよりよく知らなくて、カルチャーショックを受けた。
まるでこのたびの新春浅草歌舞伎は見知らぬ土地に旅行に来たような驚きと発見があった。
こうしたカッコいい文化が継承されてきた、これからも継承していくであろう特異な民族に、自分も所属していられることが誇らしく、嬉しく感じた。
楽しかった!

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