ケモノな女子のおしゃれ事情

関連記事(読んでいなくても問題ありません)から、「獣人服の尻尾穴問題」をラブコメ風会話劇仕立てに

1 業の深い性的嗜好

「ねえ、何の雑誌立ち読みしてんの? えっちなやつ?」

「?! っうわ! びっくりした。なんだよ脅かすなよ」

「えっちなのに夢中になってるのが悪いんじゃないの?」

「これがえっちなのに見えるんならな」

「パソコンの雑誌? あんた、こういうので興奮するんだ。なかなかに業の深い性的嗜好ね。相手は苦労するだろうなぁ」

「あー、さすがにそれはないわ。これが組み上がって繋がる世界ならまだしも」

「……ねえ、安心しながら残念な気持ちになることってあるのね。初めて知ったわ」

「勝手に今日も初めてを知らしめられてろよ。俺は帰るよ?」

「じゃあ私も帰る。送んなさいよ、ご近所のよしみでしょ?」

「はいよ」

「うむ。よい心掛けじゃな?」

2 つうか、尻尾な

「……なんか、いいことでもあった?」

「ほー、分かるんだ」

「まあ、なんかうきうきしてるし、機嫌いいし」

「女の子の機微が察せるようになるなんて、あんたも成長したわね」

「女子の機微っつうか、尻尾な」

「なっ! ……尻尾が無いわりには、よい心掛けじゃな」

3 もしかして妬いてる?

「で、いいことって?」

「分かんないの? けも女子の尻尾の機微は察せるくせに」

「じゃー、デートが巧くいったとか」

「そのぶっきら棒は、もしかして妬いてる?」

「いや、そもそも興味がない」

「失礼な! ちょっとは妬け、そして焦りなさい」

4 態度は余計

「なんでさ?」

「あんたがあんたの中の私の存在の大きさに気が付かないから」

「でかいのは態度と尻尾だけで十分だろ」

「態度は余計。尻尾は許す。私のふわふわもふもふ、ケア大変なんだから。シャンプーもコンディショナーも乾かすのもブラッシングも」

「髪よりも量あるもんな」

「尻尾太い子はそれでお風呂が億劫になるくらいにね」

「体臭フェチとは相性良さそうだな」

「そういう好かれ方する勇気はないなあ」

5 もはや神様じゃん

「で、なんでデートだと思ったの?」

「服がちょっとデート服っぽいなって」

「なるほど。無くはないかな」

「どっちの意味だよ」

「両方。まあ本気デートだったらこんなもんじゃないけどね」

「あと二回は変身残してる的な?」

「相手と環境に合わせてね」

「頭に葉っぱ乗っけてどろん?」

「だったらいいよねー。メイクもファッションもスタイリングも手間いらず!」

「それはそれで違う技術が要りそうだけどな。ご先祖様とか出来たりしたの?」

「ん-、神話の時代とかなら?」

「遠っ! もはや神様じゃん」

6 もっと好きになれたって話

「あんたがデート服だと思ったこれね、こないだ気に入って買ったスカートなの!」

「うん」

「今日、穿いて出掛けてきて。それがね、もっと好きになれたって話」

「それでか」

「穿きやすいし、動きやすいし、尻尾の付け根は擦れないし、デザインもかわいいし」

「着替えや動くときに大変そうだなあって思ったことはあったけど、付け根って擦れるんだ」

「擦れるよー。服のデザインとかとの相性もあるし、肌が弱いとなおさらね」

「人口の二割のため、それも尻尾の形も様々と来ればユニバーサルなデザインにも期待できないか」

「素直に専門店行った方がいい。好きなデザインに出会えるかは置いといて」

「巨乳の人が下着に困るみたいな話だな。あとは自作か、カスタムか」

「ブラ自作に比べたらさすがにましだけどね」

7 スカートを留めるガーター

「で、そのスカートはどこがお気に入りなわけ?」

「お、気になる?」

「機能面がね」

「まずはデザイン。この二段フリル。で、これがね、実はセパレートになってて、上側がオーバースカートになってるの! で、それを着けた後、そこに下側を留めて吊るすようになってるんだよ」

「スカートを留めるガーターか」

「そうね。てかガーターとか知ってるんだ」

「何を思ったか知らないけど、サスペンダーもガーターなんだけど」

「はいはい。エスケープがお上手ね」

8 勝負する環境と相手が限定的

「オーバースカートとは言ってもさ、いかにも付け根隠しです、みたいのばっかであんまいいのが無くてさ。最近になってようやくなんだよ」

「ベルト通して留めるやつは前からあるけど、確かにデザインはなー」

「いっそ着物の方がよっぽどいい」

「着付けできるんだっけ?」

「私はまだ変身を残しているからね」

「それは素直に尊敬するわ」

「着物で勝負する環境と相手が限定的なのが難点だけどね」

9 秘密兵器みたいだな

「やっぱ付け根隠しって必要なの?」

「おでこもうなじもそうだけどさ、意図的に晒せる自信のある子でもなければ、生え際なんて隠しておきたいものじゃない」

「秘密兵器みたいだなそれ」

「……まあ、時にはそうかもね。それに付け根付近の毛の生え方も人によって違うから、お手入れできる分にはまだしも、生えてない人はね」

「それは尻尾のないやつには分からないなあ」

「だから付け根周りはとってもプライベートでデリケートな領域なのよ」

10 そわそわしたりむずむずしたり

「お蔭でほら、尻尾動かしても付け根も下着も見えないでしょ?」

「おー、なるほどな。ゆったり布地が隙を生じぬ二段構え。これは鉄壁だわ。これが一段構成だと、いつも付け根が晒されるか、尻尾を上げるとスカートが捲れてしまうわけか」

「そう。どっちにしてもそわそわしたりむずむずしたりで落ち着かないの。それに私、尻尾穴と相性悪いのよ。擦れる方だし、尻尾も大きいから」

「色々大変なんだな」

「うん。だけどね、このスカートは尻尾穴じゃないし、広いし柔らかいから擦れないの!」

「それでご機嫌なわけね」

「そういうこと」

11 未来が見えた

「どう、かわいいでしょ?」

「ノーコメント」

「素直に同意してくれればいいのに」

「どう答えてもそっちの都合よく取られそうな未来が見えた」

「じゃあ、その未来実現してあげる。私にかわいいって言えない照れ隠しのノーコメントってことね」

「その性格が正直羨ましいね」

「褒め言葉として受け取っておくね」

「褒め言葉だよ。少なくとも俺には無理だから。……自分の好きを理解して、大切にして、誰かと共有しようとすることができる。そういうところ、ほんとに凄いと思う」

「……はぁ、だから私が油断するんだ」

「え、なんだって?」

「あんたがモテてたなら、もうちょっと違ってたでしょうねって話」

「なんかそれ、馬鹿にしてるだろ」

「してるよー」

いい暇つぶしになれていたなら光栄です☆