「どうしようもない僕に天使が降りてきた」 - 槇原敬之を読む
子供の頃からずっと槇原敬之を聴いてきた。
とっかかりは両親の影響で、車の中でかかっていた「2つの願い」が生まれて初めて記憶に残っているJ-POPだったりする。
今日は槇原敬之の「どうしようもない僕に天使が降りてきた」を読んでみます。
つながる連想と気づき
特に初期の槇原は暗喩・比喩を巧みに使って「ああ、経験したことないけどなんかわかるきがする!」と思わせるのが非常に上手いです。
この曲も然り。
もっとも分かりやすいのはこちらです。
部屋から走り去る彼女の後ろに、(おそらく喧嘩で叩きつけられた)枕の羽根が舞っている。それが、はためく彼女の髪とシャツで揺れる天使の羽根に見えたと。
うーん、乙女チック!
この女々しくて弱々しい男子像が初期マッキーの持ち味ですね。
「君は天使だ」と直接言わないのがミソです。
個人的にはこの比喩・連想だけだと「ロマンティストやな〜」で終わってしまうんですが、超現実的なアイテム「目覚まし時計」がそれを防いでくれます。
幻想感の極み「天使」と生活感の極み「目覚まし時計」のバランスで世界観が保たれているように思います。
とはいえ、目覚まし時計からも連想はつながっています。
彼女が持ち去った目覚まし時計がまるで時限爆弾のように見えたと。
「早く追いつかないと二人の仲が終わってしまう!」ということですね。
また、目覚まし時計は昔の恋人にもらったものなので、それが壊れることで主人公はようやく過去のその人と決別できます。
自分自身で壊したのではなく彼女に「壊してもらった」というのがまたミソですね。まさに天使。
「弱々しくどうしようもない僕を導いてくれる君」像は槇原の歌詞に散見されます。
ただ一方的に君に導かれっぱなしではなくて、かっこ悪いけども僕も君と歩んで行くために精一杯背伸びしていきます。彼の世界観の中では往往にして「先を行く君」と「追いつこうとする僕」が描かれますね。
この歌の中での「僕のがんばり」はこちら。
帰ったら部屋の掃除は僕がするから 一緒に帰ろう
けなげ〜!
しかし、この最後のフレーズがあるおかげで歌がロマンティックな比喩で終わらずに済みます。天使のイメージでグググっとファンタジックに寄った世界観を現実に戻して追えるわけですね。
「喧嘩して舞い上がった枕の羽根」から一連の連想が始まっていたので、「部屋の掃除」で連想を回収して現実に帰ってくる形になります。
「走る君を追いかけている僕」から「部屋へ帰ろうと君を導く僕」への成長も表現されていますね。
恋愛ソングで有名なマッキーですが、「気づき」と「成長」はずっと歌われていたテーマでもあります。
最近の曲ではそれが比較的直情的に描かれていますね。
朝活がてら書いてみましたっ!会社いこ〜笑