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唐突に好きな本を紹介してみる

読書は割と好きだ。
ただ頻度や量がそこまで多いとは言えないし、特定のジャンルや作家の本ばかり読んでいるので偏りは激しい。だから、読書が好きというよりは、特定の人物の著作物が好きなのかもしれない。

今回は私が好きな本を紹介してみる。
もし似た趣味の人がいたら読んでみてほしいな。


一応、広い意味でどれもミステリーに扱われているようだ。
ただ、ミステリー・推理物あるあるが全然あてはまらない。謎解き役の警察や探偵はいない。(警察が出てくるものもあるが、完全に脇役)
そんな本ばかりをこれから紹介する。

さよなら妖精 (創元推理文庫)/米澤 穂信

1991年4月。雨宿りをするひとりの少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるおれたちの街にやって来た少女、マーヤ。彼女と過ごす、謎に満ちた日常。そして彼女が帰国した後、おれたちの最大の謎解きが始まる。謎を解く鍵は記憶のなかに――。忘れ難い余韻をもたらす、出会いと祈りの物語。『犬はどこだ』の著者の代表作となった、清新な力作。

米澤 穂信先生といえば、アニメ化した氷菓シリーズが有名だろうか。
「私、気になります!」の千反田えるが出てくる、人の死なない青春ミステリーシリーズだ。

『さよなら妖精』はシリーズものではなく、1冊で完結する。いきなりシリーズものはちょっと……という人にもおすすめ。

特徴としては、殺人事件を含まない。高校生が異国(今は無きユーゴスラヴィア)の少女マーヤと過ごす日々から生まれたちょっとした謎の積み重ねで物語は進む。

青春を描いているからさわやかな物語かというと、私は違うように感じた。なんというか梅雨のような……、その日々自体は青春や異国が故の文化交流が生み出す悩みや発見、成長があって、微笑ましさを感じることもある。
ただ、マーヤが異国から来た、それも情勢の良くない国から来たという背景事情が常にどこか影を落とす。

たださわやかなだけではなく、ただ若者が悩んでいるだけでもない。
日常の延長線のような、そうではないような、絶妙なバランス感がある一冊だ。


鬼籍通覧シリーズ/椹野 道流

4月2日、O医大の法医学教室に、見るからにロックやモデルでもやっていそうなビジュアル系の、風変わりな新入生がやってきた。彼の名は伊月 崇(いづき たかし)。医大卒業後、医者である叔父の知人が学長を務めるこのO医大の大学院入試を受け、入学してきたのである。
彼が所属することになったこの法医学教室は、人手が少なく、奇妙な川柳もどきの忠告が癖の、ひょろりとした壮年男性が教授を、一見学生にしか見えない女性がNo.2の助手を務め、「足掛け30年、3代の教授にお仕えしてきた」生き字引ともいえる技師長と少年の面影を残したような技術員、そして、幼げな容貌とはアンバランスな肢体を持つ女性秘書がいた……。

主人公は伊月 崇という大学院生。彼は法医学教室でアルバイト中。
彼と彼の同僚は、死体の検死解剖を行うことが仕事だ。

一般的ミステリーでは、現場を駆けまわる警察官や探偵、ちょっとひねったところだと記者とか、とにかく現場や関係者との接点を積極的に持ち、真相を解明することを目的とする人物が主人公になりがちだと思う。

しかし、このシリーズでは違う。
主人公は現場を駆けまわることを求められていない。遺体と向き合って、物言わぬ身体から何故亡くなったのかを探る。

ひとつ前の本とは違ってガッツリ人は死ぬし、解剖するのだから遺体の描写はこれ以上ないほど客観的かつ明確に表現されている。
ただ、医師としての視点で書かれているから変にグロさを強調してはいない。

筆者の椹野 道流先生が法医学の医師なのだそうだ。そりゃあ詳しいに決まってるわな。

ちなみに出版状況が結構ややこしいことになっており、同じシリーズで大まかに3種類のバージョンがある。
とりあえず上記リンクは全部講談社文庫版で、表紙とか全部揃ってる状態かつ最新作まであるのでおすすめ。

一番最初に刊行された講談社ノベルス版は、Amazonで上位に出てこないので揃えるのが大変かも。


平家物語推理抄シリーズ/羽生 飛鳥

歴史小説のような推理小説、いや歴史小説であり推理小説。
私は日本史が苦手で、恥ずかしいことにそこまで知識もないが、それでもこの本は楽しめた。

主人公は平清盛の異母弟の平頼盛。
私のように日本史知識に乏しい人であれば、「誰?」となるような人物が主人公だ。(ごめんね頼盛)

今から1000年近く前を舞台にしているため、もちろん技術や道具には乏しく、それゆえに巧妙なトリックは存在しない。
だから、ミステリーとしてのトリックや冷酷な犯罪ショーを期待している人には合わないかもしれない。

どちらかというと、武将として名を馳せたわけではない、政治で強い実権を握ったわけでもない、だが懸命に強かに生き抜いた一人の男の姿とちょっとした謎を追う、というスタンスで読むと良いと思う。

内容構成は、1巻は短編集のような感じで、頼盛の年齢が飛び飛びで、若い頃から死ぬまでの話が少しずつ、謎と共に描かれている。
2巻は一転、特定の時期の話が通して描かれている。

そのため、2巻は1巻の続編というより、頼盛の人生を1巻と2巻で分けて、いろんな視点で見させてもらっているという感じ。

ちなみに1巻に収録されている「屍実盛」が、ミステリーズ!新人賞(現 創元ミステリ短編賞)を受賞している。


今回のおすすめはここまで。
もし似た趣味をお持ちの方は、ぜひ読んでみてください。

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