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それ、お醤油ですか?

[ 日本語雑話 ]

日本人は間接表現を好む。

有名な、夏目漱石のIlove you.=「月がきれいですね」もその典型かもしれない。プロポ-ズの言葉も「結婚しよう」でいいのに、「僕の月になって欲しい」とか、「一緒にこの猫を飼わないか」などと男たちは一生懸命言ってみたりもする。トイレの貼り紙に「きれいに使っていただき、ありがとうございます」とあるのも一種の間接表現だろう。

金田一晴彦の本に、おおよそこんなことが書かれていた。

日本人の奥ゆかしさは、能動を表現するのを嫌い、「お茶をいれました」ではなく、「お茶がはりました」と言い、たとえ徹夜してやった仕事でも「課長、やりました」ではなく、「課長、できました」と言う。まるで、天から降ってきたように・・。
それがいいかどうかは別として、昨今では失われつつある「風情」かもしれない。

これもその本に載っていた。
目上の方を交えた会食の席で、その目上の方の前に醤油がある。それをとっていただきたいとき何と言うべきか?・・「お醤油をとってください」ではない。

「それ、お醤油でしょうか?」

と言うのが正解!なのだそうだ。確かにそう言えば、醤油が欲しいんだなということが伝わる、究極の間接表現かもしれない。


僕はものぐさで、若い頃はよく書類を期限までに出さないことが多かった。人事関係の書類だったかと思うが、出さずに放っておいたところ、校長に呼ばれてしまった。
たじたじしながら校長室に行くと、校長がひと言。

「やあ、すまなかったね。君に用紙を渡し忘れてしまったようだ」と。

畏れ入り、即刻、書いて提出した。

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