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第64話:ドラえもん

随分昔のことになるが、ゴロゴロしている僕の顔の上にカミさんが突然ヌーッと顔を出し、
「ねえ、ドラえもんの耳ってなぜないか知ってる?」
と聞いてきた。
そんなことを聞かれてもドラえもんに耳がないことすら気づいていない僕に答えられようはない。

「はあ?」と首をひねると、
端から僕に答えられるとは思っていないのだろう、
「あのね、ドラえもんは昼寝していたらねずみに耳をかじられちゃったの。だからねずみが怖いの」と得々として説明してくれた。

「そんなことを知らんでも良い」と思っていたが、それからしばらく経ってあるクイズ番組を観ていたら、ドラえもんの正しい表記はどれかという問題があって、それまでドラえもんが
ドラエ・もん」
だと思っていた僕は、ドラえもんが実は、
「ドラ・えもん
であることに大変ショックを受けた。「そうか、○○衛門・・だからかぁ」と・・。
wordもちゃんと「ドラえもん」と変換する。えらい。

例えばそれは、「清少納言」が「清・少納言」であるのに「清少・納言」と思っている高校生の誤解と同じように、いたく初歩的なことでありながら、自分の思い込みという盲点を鋭くえぐってくれた出来事のようでもあった。

「これは意外に奥が深い」と思った僕は早速、息子の持っている絵本を紐解いてみたのだが、僕のそうした期待を裏切る事なく、そこには感動的な事実がいくつも載っていた。

・ドラえもんの足は偏平足。
・何を食べてもエネルギーになる原子炉で動いている。
・身長は129.3cm。
・身長も体重も胸囲も129.3。
・座高は100cm。
すると・ドラえもんの足の長さは29.3cm。
これらはカミさんよろしく、思わず誰かに吹聴してみたくもなる新発見なのである。

調べてみると、ドラえもんの「えもん」が平仮名であるのは、戸籍調査員に名前を聞かれた時、カタカナを思い出せなかったからだということだ。

ちなみに、カミさんの言う耳をネズミにかじられた話は、そのショックで三日三晩泣き続けたために、体のメッキがはがれてもとは黄色かった体が青くなり、声もガラガラになったということにつながっていくらしい。

どうでもいいと言えばどうでもいいことだが、なんだかおもしろい。
ドラえもんに関するそんな知識は、それを持っていようが持っていまいが、人の優劣に関わらない中立的な知識だからかもしれない。

知っていることを話して、誰もが笑顔になる「知識」、それは、いい。

(土竜のひとりごと:第64話)


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