【天職だけど卒業します】ハンドクラフトを通した女性支援~6年の振り返りとこれからのチャレンジ~
2016年10月1日に白金台で世界の女性のてしごとを展示・販売するギャラリー「Will Gallery」を始めて6年になりました。このタイミングで「世界を旅する雑貨屋」を卒業することを決めました。応援いただいたすべての皆様に心から感謝を込めて…これまでの取り組みと経緯をまとめてみました。
なぜ、リクルートを辞めて雑貨屋に?
女性の経済的自立を支援したい
2016年3月に11年勤めたリクルートを卒業した私は、1年間、のんびりと世界を旅した後に、女性の経済的自立を支援する事業を立ち上げようと考えていました。が、退社1か月後に訪れたルワンダで、バスケット工房を訪れた際に、カチっとスイッチが入ってしまったのです。その工房では、ひとり親や貧困層の女性に伝統工芸のバスケットを編むトレーニングをし、経済的自立を支援していました。
もともと海外旅行とハンドクラフト収集が趣味だった私は、海外を訪れ、ハンドクラフトを仕入れて、それを日本国内で販売することで、世界の女性支援ができるのなら最高かも?!と思い立ち、さまざまな方のご厚情とご協力を得て、わずか半年で白金台に小さな雑貨屋「Will Gallery」を開店したのでした。
世界の女性起業家を訪ねて学んだこと
生きる力とつながりの支援
ハンドクラフトを販売する際にこだわったのは、現地の工房を訪れ、どのような仕組みで女性の経済的自立につながっているのかを自分の目で見てから販売することでした。
「ハンドクラフトは本当に女性の経済的自立に寄与するのか?」
この問いを追及するために、2016年~2018年にかけて各地の工房訪問をさせていただきました。カンボジア(プノンペン、シェムリアップ)、タイ(バンコク、ルーイ、サコンナコーン)、マレーシア(クアラルンプール、クアラルンプール郊外の先住民族の集落)、インドネシア(フローレス島)、ネパール、ベトナム、トルコ、東北(気仙沼、石巻、亘理)など。
工房訪問レポートは、2020年に「【連載】世界の女性とてしごとを訪ねて」にまとめていますが、ハンドクラフトを通した女性支援は、経済的自立だけでなく、生きる力や居場所・つながりの提供という意味・意義もあることを知ったことが大きな学びです。
また、各地の女性起業家や作り手の女性たちと対話したことが、何より私の財産となりました。どの地域にも、その地域の女性の経済的自立のために人生をかけて取り組む女性社会起業家たちがいました。彼女たちの生きざまを見るたびに、自分は、自分の国・地域に何ができているだろうか、と内省する機会となったのです。
※アジア女性社会起業家ネットワーク(AWSEN)の渡邊さやかさんのご協力なくしては、アジア・アフリカの女性社会起業家とつながることはできませんでした。この場を借りて御礼申し上げます。
「地方×女性×はたらく」の原点
2017年には、アジアの女性起業家のチャレンジをもっと多くの人に見てほしい!と、H.I.Sと連携し、タイ・ルーイ県へ現地視察ツアーを開催しました。
村にはお金になるしごとがなく、若者たちは皆、バンコクに出稼ぎに行ってしまう。村で生まれた女性が、村で幸せに生きていく仕組みをつくりたい、、、と立ち上がったFolkcharmのパサウィーさんの取り組みを視察しました。
都市部と地方の格差は、日本にも存在します。タイの女性起業家から学んだことがいま、わたしが日本で取り組んでいる「地方×女性×はたらく」プロジェクトのヒントにもなっています。「地方に働く場がないのなら、都市に出ればいいじゃん」と言われることもありますが、それは本当に幸せなことなのだろうか。あの村で幸せそうに働く女性たちの笑顔、地域を持続可能にするために尽力する女性起業家たちの姿を思い出すのです。
ものづくりのまち蔵前へ
女性起業家の応援へシフト
白金台のWill Galleryでは、「女性の経済的自立支援」を目的とし、女性の作り手によるハンドクラフトを販売することにこだわっていました。が、国内外で多くの女性起業家と出会ううちに、モノを販売するだけでなく、女性起業家の活動そのものを応援したいと思うようになりました。
そこで、モノを販売するだけの「雑貨屋」から、ものづくりを通して社会課題解決に取り組む女性起業家、デザイナーさんをみんなで応援する場に進化させたいと、2019年、ものづくりのまち台東区・蔵前に場を移しました。
台東区はものづくりを支援しており、アトリエ・店舗出店支援助成金というユニークな助成金があります。「ものづくり分野の女性を応援するアトリエ」というコンセプトで助成金採択いただき、2019年5月に蔵前の築90年の登録有形文化財ビルの1室をリノベし、”アトリエそらとひと”をオープンしました。
コロナで何が変わったか
アトリエそらとひとでは、毎月、女性起業家を囲む座談会やものづくりワークショップを開催し、出だしは順調だったのですが、、、オープンして1年もたたないうちに、コロナがやってきました。
コロナ禍では、商品販売の基本ルールとしていた工房訪問(本当はガーナ、インドへ行く予定でした、、、)ができなくなりました。また、小さなアトリエにお客様をお呼びすることのリスクもあり、オープン1年目で「クローズ」の文字が頭をよぎりました。
が、私たちよりも大変な状況にあるのは、世界各地でものづくりをしている起業家の皆さん、そして作り手の女性たちです。私にできることは何かを考えた結果、オンラインで「蔵前ものづくりトーク」を毎月1回開催し、現地のようすを知り、応援する機会をつくることにしました。
起業家の皆さんは、コロナ1年目はクラウドファンディングを展開したり、自社のオンラインサイトを強化するなどして乗り越えようとする動きがみられましたが、コロナ2年目になると、ビジネスのあり方そのものを変える動きが見られました。
海外でのものづくりを縮小・休止し別の事業にシフトした方もいれば、別のブランドのプロダクトも含めて小売り事業を始めた方、新たに食品事業を始めた方、地域で農業や養蜂を始めた方もいらっしゃいます。
それぞれがそれぞれのパーパスに向き合い、そもそも何をしたかったのか?これから何をすべきか、向き合った結果、それぞれのWill(ありたい姿)に向けてたくましく進化していく姿に、私自身が刺激をいただきました。
これからのチャレンジ
ジェンダーギャップ解消に向けて
そんななか…2021年2月、「森発言」という”世間を揺るがす大事件”が起きました。
「森発言」を契機に、途上国の女性の応援をしているつもりだったわたしたち日本こそが、世界的な「ジェンダー途上国」であることを思い知ったのです。蔵前に移転し、さあ、これから!という矢先のコロナ禍。そして、森発言。このタイミングで、この課題をスルーしてはいけないのではないか。
雑貨屋オープンから半年後に立ち上げた株式会社Will Labでは、日本国内(特に地方)の女性の就労支援、リーダー育成、キャリア支援を手掛けています。
森発言を受けてすぐ、Will Labのホームページのトップに「ジェンダーギャップ解消」を掲げました。
コロナ後の環境変化の中で、女性起業家さんたちが事業を再構築されていくのと同様に、私自身も国内のジェンダーギャップ解消に向けて、より国内(特に地方の)女性の経済的自立とリーダー育成に注力していくことを決めました。
アトリエは継続、雑貨販売は休止へ
蔵前はいま、クリエイターやアーティスト、そしてサステナブルなビジネスモデルを志向するベンチャーが集まり、活気あるまちに進化し続けています。
アトリエそらとひとは引き続き、蔵前を拠点に女性起業家によるブランドの展示会、オーダー会などの場としての運営を継続します!!
が、オンラインショップでの雑貨販売は、12月末をもってサービス休止することといたしました。これまでお買い物でともに応援くださった多くの皆様に心から感謝申し上げます。また、数年後に再開するかも?!との思いを込めて「終了」ではなく、「休止」と表現してみました。
10月10日(祝)より感謝SALEを開催!
これまで6年間のご愛顧に感謝を込めて、10月10日よりオンラインショップそらとひと掲載の商品を50%オフでご購入いただけるクーポンを会員限定で発行いたします。(※一部適用外もあり)10月9日までにオンラインショップに会員登録いただけましたら、10月10日にクーポンコードをお知らせいたします。ぜひ、お買い物を楽しんでいただけたら嬉しいです。(※発送には時間がかかることがございます。のんびり、ゆっくりお待ちください☆彡)
また、10月10日(スポーツの日)、11月3日(文化の日)には蔵前のアトリエ訪問が可能です。実際にハンドクラフトを手に取ってみていただける機会となりますので事前予約の上お越しください。
長文を読んでくださり、ありがとうございました。
2016年のオープンより応援くださった皆様、大切な商品を提供してくださった起業家・デザイナーの皆様、運営支援いただいた皆様、本当にありがとうございました。心からの感謝を込めて。
アトリエそらとひと オーナー
株式会社Will Lab 代表取締役
小安美和
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