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第一座・右の銘

 勝ったな。『第一座右の銘』の句点をどこに置くか、っていう古賀さんのボケ振りでしょうこれ。私知っているんだ。
 自慢じゃないけど、これでもボケにはそこそこ自信あるんだ。
 というわけで
『第一座・右の銘』はっじまるよ~!!

 第一座
 寂しがり屋のライオン

 カッパ―ルは旅のサーカスの芸人でした、サーカス一座は色んな街をテントで回っていますが、どの町に行っても、サーカスに来る人はみんな、サーカスで本当にライオンを飼っていて、とてもよくなれているので非常に驚きます。
 カッパ―ルはまだまだ玉乗りも綱渡りもうまくなかったですが、そのライオン、名前をミケと言いましたがミケの面倒見がよく、ミケがとてもなついていたので誰にも文句は言われませんでした。
 ミケの小屋は特注でした。
 ある日、カッパ―ルがミケの小屋を掃除していると、小屋が錆だらけなのに気づきました。
「こりゃいかん、すぐに団長に言って、ミケの小屋を新しくしてもらわんと」
するとミケがめずらしく口をききました。
「やめてくれ、カッパ―ル」
「どうしてだ、ミケ、新しいほうがいいだろう」
「いやだやめてくれ、お前、その小屋の銘※1が読めないのか」
カッパ―ルはそう言われてミケの小屋右側にある銘を読みました。『クリス』と書いてあります。
「それはぼくを子供から可愛がってきた人の名前だ。文字もその人のものなんだ。
 お願いだ、ぼくをこの恩人の思い出の小屋から出さないでくれ」
カッパ―ルは困ってしまいました、ミケの小屋はかなりボロボロです。
「その人のことを知っている?」
「サーカスを辞めてから、隣町でパンを焼いているんじゃなかったかな」
「じゃあ、ぼく、会いにいくよ。会って、新しいものを作ってもらう」
こうしてカッパ―ルは隣町まで歩いていくことにしました。
 さて、頼みごとをするには、お土産ぐらい必要です。
 カッパ―ルは店頭右の銘菓※2いちごマカロンを十個、自分用にも少し飼ってプレゼント用に包んでもらいました。
大通りです、小麦の絵の右に
『クリスタルな夕焼け』
という銘※3が刻まれた看板が見えてきました、きっとあそこが、『クリス』のパン屋さんです。
「こんにちは~!」
カッパ―ルはさっそくあいさつしてパン屋さんのドアを開けました。しかし様子が変です。パンの匂いはしません、何個かあるパンも見たところかピカピで固そうで焼き立てには見えません。
「あぁ、パン?好きなのもっていって」
「クリスさんを探しに来ました」
「クリスですか?僕ですが」
カッパ―ルはミケのこと、小屋のことをクリスに話しました。すると目に隈のはっきりしてやせ細ったクリスはこういいました。
「ミケかぁ、そんな猫いたっけなぁ。自分をライオンだと思っている偉そうな猫。
あんまり偉そうだから、俺もつい話を合わせて柵の小屋なんか作ってやったっけ」
「ミケ、本当にライオンですよ」
カッパ―ルはいいました、クリスは大笑い。
「そうか、そうだったのか。おい、今日の店は閉店だ。今日はいい酒が飲めそうだ。
何しろ、あんなやせっぽちで生意気なミケが本当のライオンだっていうやつが現れたんだ。
 おれ以上の酔っ払いだぞ、おい。
 どれでも好きなパンを持って帰ればいい、あ、そいつはいらない。いちごマカロンは嫌いでね。
 さぁ帰った帰った」
カッパ―ルはしぶしぶクリスのパン屋さんを出ました。そして、左にはパンはいらないと、右にはクリスは病気で寝ていたので小屋を作りには来られない、とミケには言おうと心肝銘※4したのです。
 ミケはサーカスでクリスをうきうきで待っていました。カッパ―ルは落ち込んで声をかけます。
「クリスはね、大きな病気で寝込んでいた。
 なぁにだいじょうぶさ、いい医者を呼んだから。
 でもミケの小屋を作るのは無理だな。その小屋ももう古い、どうする?」
するとミケはこういいました。
「やっぱりな、あいつはずっと肝臓が悪かった。
 でもいいんだ、今回のことでわかった。おれにはクリスだけじゃないお前という友達もいること。
 おれはもうさびしくない。
 なぁ、カッパ―ル、新しい小屋を買っておくれ、そしてその小屋の右の銘に、『カッパ―ル』って掘っておくれ」
「もちろん、俺の座右の銘※5は『人に優しく』だ」
こうしてミケには新しい小屋があてがわれたのです。
 お酒をやめられなかったクリスが倒れて、右の銘旗※6に『ミケのパパ』と書かれたのは、また違う、違うお話で。
 
※注〖銘〗 メイ
1.《名・造》
金属製の器具に刻まれた製作者の名。
 「銘を打つ」
2.器物また茶・酒・菓子などの固有名。また、名のある上等のもの。
 「銘茶・銘酒・銘菓・銘柄(めいがら)」
3.《名・造》
石碑や金属器などにしるされた文。
 「銘を刻む」
4.心にきざみこむ。忘れないようにする。
 「銘記・肝銘」
5.漢文の文体の一つ。訓戒や人の功徳(くどく)を述べるもの。
 「座右銘」
6.葬式のとき、死者の官位姓名などをしるした旗。
 「銘旗」
(Google日本語辞書より)


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