ATPLテストレポート(前編)
DHC-8(Q300)での全ての乗務が終わって、クルーと記念撮影をして、あとはATRの機種移行を待つばかりだったのに、ここからさらにQ300の勉強をたくさんする羽目になりました。
それもこれも、機種移行する前に滑り込みでATPLの実地テストを予約したからですが、それでも移行したばかりの慣れない飛行機でフライトテストを受けるより100倍マシなんですね。
くわしくはこちらの記事に書きました。
私の会社は、NZの航空局(CAA)から国家試験であるATPL実地テストを社内で行う認可を取っているので、通常の訓練をするのと同じシミュレータを使い、顔見知りの試験官がテストを担当します。
また、2人で飛ばす飛行機なので、キャプテンが必要ですが、これもいつも飛んでいるキャプテンがテストのサポートという形でロスター(スケジュール)されます。前回、ルーティンのシミュレータチェックをしたキャプテンがサポートになました。慣れた機体に気心の知れたパイロット。心強い限りです。
事前の準備
最近ATPLをやった同僚から色々と話を聞いて、情報を集めます。地上での口述試験ではかなり広範囲、というかこれまでパイロットとして勉強してきたほとんど全ての知識を包括的に聞かれるので、Quizletや同僚からもらったスタディノートを使って業務の合間にコツコツと勉強します。
息子の世話や単身赴任で移動が多いこともあり、より隙間時間を有効に使う必要がありました。PPLやCPLの時と違って、1日の生活の中心を勉強やトレーニングに使えるわけではないところが、ATPLの難しいところです。
ホテルでコツコツ
また、テスト当日はFO(ファーストオフィサー)が、運航全体のマネジメントを担当し、全てのアクションのリーダシップを取ります。事実上の「キャプテン」としての能力を試されるといってもいいでしょう。キャプテンとして飛んだことがないのにどうやってリーダーシップを取るのでしょうか。
普段の業務でもPF(飛行担当)になった時はリーダシップを取りますし「コマンドプラクティス」といって、法律上はキャプテンが運航に責任を持った状態で、FOがその運航を取り仕切ることもよくあります。コマンドプラクティスを許可するかどうかはそれぞれのキャプテンが判断しますが、うちの会社ではよほど天気が荒れ荒れでない限り、皆快く許可してくれるので、ここ最近は全てのフライトをコマンドプラクティスにしていました。
ATPLフライトテストの流れ
ATPLフライトテストはやらなければいけないことがわりとかっちりと決まっていて、そういう意味では何が起こるのか比較的予測しやすい試験です。具体的には、以下のような流れになります。
まずはログブックや書類の確認、そして一般的な知識の口述試験と、フライトプランニングと重量・重心の計算、テイクオフスピードと重量の算出等。
その後、シミュレータでクロスカントリーフライトテストを行います。
A空港からB空港へ飛んでいき、その間にエンジン系統に故障が発生します。その後、問題を解決しながら、C空港にダイバートするのが、テストのシナリオです。
シナリオが終了したら、今度は個別のエクササイズ、離陸中のエンジン故障、急減圧による緊急降下、ウィンドシアリカバリー、異常姿勢からの回復、VOR/DMEアプローチからのサークリングアプローチなどを行います。
書類とログブックの確認
申請に必要な書類は、あらかじめ記入できるところを埋めてクリップでまとめ、ログブックやライセンスと一緒に試験官に提示します。提出する書類がたくさんあるので、間違いがないように。思えば、PPLやCPLでは書類の準備から何から教官が最終チェックをしてくれました。当たり前ですが、ATPLではチェックしてくれる教官はいません。
まあ、教官として書類をチェックする側だったこともあるので、その時の経験から必要な書類や、手に入れるのに時間がかかってやっかいな書類(無犯罪証明など)が分かっていたので、この辺はスムースにいきました。
電子ログブックについて
また、ログブックは電子ログブック、つまりパソコンのアプリを使って管理しています。国によって法律が違いますが、ニュージーランドは今過渡期にあり、電子ログブックを使う場合でも従来の紙のログブックが必要になります。
それでも、紙のログブックへ記入する内容が大幅に削減(月ごとの合計を書けば良い)でき、バックアップも取りやすいですし、おすすめです
CAAが発行するVector Magazineにも、当局として「これならいいよ」という見解が出されています。
おそらく日本ではまだ認可されていないはずです。何しろ、日本のログブックにはフライト毎にFOはキャプテンからサインをもらわなければならない仕様になっていますし、ページごとにハンコが必要です。
私はNZでの初期訓練中、一応日本に帰ることを考えて、NZと日本のログブックを両方つけていましたが、CPLが終わったところでNZにコミットしたので、それ以来つけていません。
ちなみに私が使っているアプリは「mccPilotlog」といいます。1回払いで120ドルくらい払って、それが永久ライセンスになるはずだったのですが、バージョンアップと同時にサブスク制に移行してしまい、旧バージョンの新規購入が不可能になりました。現行バージョンの名前はCrewLounge PILOTLOGに変わっています。
旧バージョンの利用者は、アップグレードしない限りこれからも使い続けられるというので、今のところ使い続けています。
電子ログブックについては、また機会を見て記事を書きたいと思います。
さて、話をATPLに戻しますが、ここから先の具体的な話は、社内の話になるので、例によって鍵をかけさせていただきます。
まずは口述試験!
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