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そらQラジオ【text】第5回(2020年1月24日 ):兼業副業に関する交通費支援について その5①

そらQラジオ【text】では、ラジオの内容を整理してお届けします。第1週目のラストは南田修司さん(NPO法人G-net代表理事)。首都圏と地方の人材をつなげる取り組みなどをされています。(南:南田さん 田:田鹿)(ラジオの第5回の前半部分にあたります)

要点メモ
・副業兼業人材受け入れは、地方企業の「会社をなんとかしたい」が出発点。
・「兼業ってどういうこと?」と及び腰だった地方企業も、実際に外部人材を入れてやってみると「できる!」と実感
・地方企業社員、首都圏人材、双方のモチベーションアップ
・地方で首都圏人材がうまく活用されるには、コーディネートが重要
・補助金がなくても受け入れられる組織開発が課題

地域と都市部人材のコーディネートが仕事

田:お仕事の内容を教えてください。
南:岐阜県で2001年に創業した地域活性に取り組むNPO法人G-netの代表理事を務めています。主に3つの事業―①地域と若者をつなげるインターンシップのコーディネート②地域で働きたい方を、欲している企業につなげる採用・就職サポート③都市部の人材を地域につなげるコーディネート―をしています。

地方経営者の「会社をなんとかしたい」が外部人材活用の出発点

田:首都圏の人が地方で兼業副業する場合に交通費を補助するとの策が出ました。地方で働きたい人はいるけれど、受け入れることができる地方企業がどれだけあるのか疑問視されています。印象はいかがですか?
南:潜在的にはめちゃくちゃたくさんあると思うんですけど、まだまだ顕在化していないという印象です。 ただ、「会社をなんとかしたい」と思ってる経営者さんはたくさんいると思います。そういう方々が、首都圏の人材を受け入れようとする潜在的ニーズをお持ちだと感じます。

やってみると「できる」と思える。地方社員の意識も向上

田:そのコーディネートが南田さんのお仕事ですね。地元企業と話していて首都圏の人材を兼業副業で受け入れることへのリアクションはどうですか?
南:「どういうことかよくわからん」「兼業って何 ?」「リモートで仕事できるの?」など。でも、やってみるってすごい大事なんです。「会社よくしたい」と思ってる企業さんが、「変えたいけど手をつけられてない部分を本当に進めたい」となると、首都圏人材の活用を「試してみようかな」となります。 実際募集して、エントリーしてきた方々の志望動機や経歴を見ると、「うちにこんな思い持って働きたいという人がいるんだ」「この人と一緒にやれるんだな、面白そう」と期待感が生まれます。そして3ヶ月とか半年とか実際に首都圏の人に入ってもらってみると、確かに事業が動いていくのを実感して、「またやってみたい」「隙間時間やリモートでも仕事できるじゃん 」となります。事業の結果が出て、メディアに取り上げられるなどを繰り返すうちに、大手企業から電話かかってきたりプロジェクトに参画したいって人が現れたりして、「うちの会社って魅力あることやってるんだ」って思えるようになったという社員の声もあります。経営者だけでなく、社員のモチベーションや会社への帰属意識もアップするということです。

地方を経験した首都圏人材は自己効力感UP

田:逆に、首都圏の方は、どういうニーズで兼業副業したいのでしょうか?
南:大きく分けて4つ―①自己成長欲求②ライフスタイルとしてパラレルワークやフリーランス思考③地元に関わりたい、伝統産業や一次産業に関心がある④今のキャリアを少し変えたい―です。募集の時に大事にしているのは、「誰と何を何のためにやるのか」。例えば、「岐阜で兼業しませんか」よりは、「この伝統産業を支えているこういう考え方の経営者の下、このプロジェクトをこのビジョンに向かってやりましょう」ってところを具体的に作りこんで見せるようにしています。それに惹かれて来る人が多いです。田:地方での仕事を経験した首都圏の方々にはどんな変化がありますか?
南:例えば、地方に3ヶ月飛び込んだケースでは、首都圏の送り出し企業からは、「社員の自己効力感が上がり、明らかに顔つきが変わった」と言っていただきました。その後、社内で、自分から提案を上げるようになったそうです。地方を経験した首都圏の人からは、「中小企業や地域って思ったよりスピード感がある」「地域の会社って、誰のため何のためって地域課題に密接に関わってるんだ」などの声が多いです。
田:「自分が地方で役に立てることが実感できた」という社員が増えると、首都圏側企業から「転職されるの嫌だ」といった声はありますか?
南:確かに、そういうリスクを危惧する声は聞きますが、実際転職するかというと、そんなにいないのではと感じますね。地域に飛び込んで「面白い」と感じる一方で、首都圏側大手企業の自分達が持ってるノウハウや価値って実はめちゃくちゃあるんじゃないかって相対的に見られるようになるようです。

地方企業と首都圏人材がうまく進んでいくにはフォローが肝心

田:今回の交通費補助政策について、どういう印象ですか?
南:つなぎ役である我々からすると、政策が出た以上、どう活かそうかと考えますね。「やってみるとすごく意味がある」と言いましたが、現状は我々コーディネーターが、人材と地域・企業の間に結構ガッツリ入ります。そうせずに、マッチングだけして、あとはよろしくって形もやったことがありますが、大半が頓挫しました。それで、ちゃんと伴走してフォローアップまでするようにしたら、ほとんど頓挫せずにプロジェクトが動いていくことが見えました。地方企業が初めてのことをするためのリテラシー、知識、技術の部分を我々がフォローしている形です。しかし、これって要は、地方企業にコストが掛かっているってことなんです。なので、今回の補助金は、地方企業が導入しやすくなる、つまり初動をつくるための支援の一つとして、有効に運用することはできるのかなと思います。それに依存することはいいことだと思いませんが。
田:「交通費が出るから受け入れてみようかな」という地方企業、「交通費が出るから行ってみようかな」という首都圏の人、そんな感じでやりだすと、うまくいかない可能性がある、その後のフォローが実は肝心ってことですね。

補助金がなくてもやれる力を常に磨く。そのための仕組みを開発し、展開したい

田:岐阜にはG-netがいますが、他の地域では、今後、そのフォロー機能をどう育てていくかが課題になりそうですね。
南:移住やインターン、副業兼業に共通しますが、地域のポテンシャルや人を受け入れられる土壌は常に磨いていかないと。お金がついたのでやりますって形でやってくと、結局地域側が育たない。補助金がなくても受け入れられるような組織・地域開発が課題です。そこに岐阜でいち早く着手し、積み上げたノウハウを展開し、各地でそういう地域・企業と人材のコーディネートをできるようになるといいなと思ってます。

南田さん、ありがとうございました!

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