レアが溢れる世界で
犬の散歩をしていたのは夕方の5時の鐘がなっている時。
小学生のグループが帰路を自転車で爆走していた。鐘がなり終わっていたからか、心なしか急いでいるようにも見える。友達との分岐点も止まらず「じゃぁな」と走りながら別れてゆく。
その時に別れたうちまだ2人がこちらへやってきた。風のように私と犬の横を去っていったのだけれど、その時に吹いた風は11月とは思えない丸みを帯びたものだった。
「この犬、レアな犬だよ!!」
柴犬やトイプードルほどポピュラーな犬種ではないけれど、直接輸入したりしているわけでもないしこの街にも数匹同じ犬種が住んでいる。
どんどん遠ざかっていく自転車の少年たちの背中をみて思う。
『多分違うけど、正解!』
小学生の目に映るこの世界にはきっとレアがあふれている。この世界に慣れてきたとはいえ、見るもの全てがまだ初めてでいっぱいの世界。シール1枚も友達が持っていなければそれはレアがついた。レアなカード1枚を巡って喧嘩をしていたであろう少年たちが大人になった頃、そのレアなカードの行方が分かる人はどれくらいいるだろうか。
小学生の目に映る世界に少し出演させてもらえたようで、嬉しい限り。
さぁ少年たち、お母さんが心配しているぞ。後ろを振り返ることなくまっすぐ帰れよ。車には、気をつけて。
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