短編「ステッキandアンブレラ」
ザーザーと世を洗う雨。天空から垂直に落ちて道、交わるはこと世の理。憂いは満ちて現の階。町のひと場面。或る通り、或る時間。小振りな傘は透明と、縁取りは濃き青。模様は様々、軽快なさんかくしかく。水溜りそこかしこ通せんぼの足元を、お揃いの濃き青長靴ちゃぷん・・ちゃぷん。なぜか弾まない。不機嫌な少年、ただ道を歩く。
水のカーテン向こうから現れるは背高のジェントルマンひとり。シルクハット、三つ揃いのスーツ纏い、手にはステッキ黒びかり。この雨の中、傘も差さずに、こつこつ、歩いて来る