短編「家の敷地でたぬきが死んでいた」
すっかり春の気配が色を濃くし、満開の桜を待ち侘びる季節になりましたが、この穏やかな春を無事迎えられる命は、冬を越えようとする命の数とは比例しないのですね。
それは三寒四温の始まって間もない頃、まだ寒さの強い二月の下旬のことでした。数日訪れていた暖かい日和はまた北風に押し戻されて、舞い戻って来た冬の日でした。私は玄関を出て、いつものように外の植え物の様子を順番に眺めていました。風は冷たく、けれども陽射しのある日でした。ぐみの木も山椒の木も紫陽花も、まだうんともすんとも言いま