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箸休め

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連載小説の息抜きに、気ままに文を書き下ろしています。文体もテーマも自由な随筆、エッセイの集まりです。あなた好みが見つかれば嬉しく思います。
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2022年7月の記事一覧

「夜明けて慕う朝の静けさ」

庭の冥加の撮影にようやく成功した。七月半ば。白い花に続いて、見覚えのある形。小さな小さな庭の一角で、なんの世話もしていないけど、毎年毎年律儀に出来る。年々数を増やしている。春にはその若い芽を間引いて食べて、今度夏には素麺やざる蕎麦の薬味にして頂こうと思う。さっと湯掻いて酢漬けにしておくのも美味である。年々体が酸っぱいのを求めてゆく。もしかするとそろそろ梅干しが齧れる人になったかも知れない。 上の写真がうちの冥加地帯。むかごの蔓が絡んでいる。傍にある樹は椿で、茗荷は椿の木の根

「夏休みをカウントする子どもの声を聞きながら」

 今日は7月17日。この文章をnoteで公開する頃には、全国各地で夏休み入りした子どもたちが夏を満喫せんと走り回っているだろう。そうであれば嬉しい。そうであれと毎年心から願っている、子ども第一主義のいちである。  開け放しの窓から、通りを行き交う子どもたちの声が聞こえてくると、世間の息苦しさにも負けずに元気よく生きてるな!と途端に微笑ましくも頼もしくも思う。頑張れ、今ここが、君たちの時代だ!等と何様でもないけれど応援している。  応援、声援、励ましの言葉。感謝のコメント、

「ひぐらし、雀の集会所、白桃の月」

 雨上がりの夕方、休日の国道は常よりも静かで、山の声がいつもよりもよく聞こえる。終日隠れていた長い日は、暮れる前に少しだけわが家の物干し台をオレンジ色に照らした。そうして今は蜩が鳴いている。  もう夏だ。先日から職場へ向かう道中にも蝉の声を聞くようになった。これから一層賑やかになるだろう。夏が盛んと降りしきるのだ。近所の線路を、たった今電車が走り去った。夜も更ければ踏切の音さえ鮮明に届く。週末の夜空には久し振りで月が昇っていた。白桃色で麗しく、またしても暫し見惚れた。空き家

「和菓子の佇まい」

 お呼ばれしたお宅に伺って敷居を跨いだ途端こんな素敵な和菓子に出迎えられたら、身も心も綻ぶ。梅雨前線が湿度を置き去りに列島から離れて世間がうだる中、私はそんな居心地の良い体験をして居た。お隣さんの和菓子は甘い水色、きっと紫陽花の君。器も好きで写真を撮らせてもらった。    和菓子のおいしさのみに止まらず、歳を重ねるごとに、その姿形に魅せられている自分をこの頃になって発見した。何しろ桃色だの黄色だのの園帽被って空色の園服に袖を通し、砂場で延々山を築いては爪の中まで黒くして素手

「投票所は靴のまま上がらせてくれないか」

 御蔭様で今年も洗面所の蛇口からお湯が出るようになりました。先日職場では同僚が不意に 「暑過ぎて――」  と言い出すものですから一句詠むのかと思いきやただの会話でした。夏ですね。  来たる7月10日は参議院選挙の投票日です。歩いて行こうか、走って行こうか、車へ便乗しようか、何でも良いですが必ず行きます。雨が降ろうが槍が降ろうが構い無しに行きます。何しろ持って当然の私の清き一票が手元へあるのですから、行使しますとも。これで何かが変わるとか変わらないとか、それは二の次です。先ず