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衛星データ利活用事例File.07:人工衛星を使った太陽光パネルの分析

衛星データ解析実験室!sorano me×豊橋市

豊橋市とのコラボレーション企画!豊橋市で集めたアイデアの中で、サービスとして可能性のあるアイデアを実験的に検証していきます。2022年7月スタート!
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本件に取り組む理由

皆さんは再生可能エネルギーがどのようなエネルギーなのかご存知でしょうか?
再生可能エネルギーとは、化石燃料などによる火力発電方式ではなく、太陽光や風力などの自然エネルギーを利用した持続可能な発電方式のことです。

太陽光発電も多くの方がご存知かと思いますが、太陽光発電は太陽光を利用した発電です。
東京都では大手ハウスメーカーの新築住宅に対して、太陽光パネル設置が義務化されていることもあります。
太陽光発電方式の中には、「メガソーラー」というとても広大な面積に太陽光パネルを敷き詰めて発電する設備もあります。
しかしながら、地方によっては景観を壊していたり、メンテナンスが行き届かず壊れたまま放置されていたりするなど、見た目や維持管理に問題があってメリットばかりではないということがニュースでも取り上げられています。

本記事では、無料で利用できるGoogle MapやEO Browserを利用して太陽光パネルについてどんなことがわかるか調べみてみたいと思います。

今回は以下の手順で確認してみました。

  1. Google Mapで太陽光パネルがどのように見えるか確認する

  2. Google Mapで確認した地点について、EO BrowserのSentinel-2ではどのように見えるのか確認する

  3. 愛知県田原市にあるメガソーラーについてEO Browserでどんなことがわかるか確認する


1. Google Mapで太陽光パネルがどのように見えるか確認する

読者のみなさんの多くは道案内機能としてGoogle Mapを利用していると思います。
一方、Google Mapの航空写真はあまり馴染みがないのではないでしょうか。
航空写真だと太陽光パネルもよく見えます。

credit: Google /Data SIO, NOAA, U.S. Navy NGA, GEBCO

案外Google Mapでも解像度が高く見える、と思われたのではないでしょうか。
こちらの画像は愛知県豊橋市にある「こども未来館ここにこ」の建物屋上にある太陽光パネルでした。

2. Google Mapで確認した地点について、EO BrowserのSentinel-2ではどのように見えるのか確認する

EO Browserは衛星データを無料で使用できるプラットフォームです。
過去に遡ってさまざまな衛星の画像データを取得し、解析できます。その中でも”Sentinel-2”という衛星の画像データから、”1”で確認した「こども未来館ここにこ」の周辺を見てみたいと思います。

credit: EO Browser /©︎Map Tiler ©︎OpenStreetMap contributors

EO Browser Sentinel-2で見ると、画像がぼやけて太陽光パネルどころか建物もよくわかりません。
Google MapとSentinel-2では解像度に大きな違いがあることが分かります。
では、Sentinel-2だとどんなことがわかるのでしょうか。次項に続きます。

3. 愛知県田原市にあるメガソーラーについてEO Browserでどんなことがわかるか確認する

愛知県田原市には大きな敷地面積を太陽光パネルが占めるメガソーラー発電所があります。
「たはらソーラー第一発電所」及び「第二発電所」には約32万枚の太陽光パネルが設置され、約2万5000世帯分の消費電力相当と言われています。
参考:https://project.nikkeibp.co.jp/ms/article/FEATURE/20150629/425340/?ST=msb&P=3

そんな、”たはらソーラー第一発電所”をSentinel-2で確認してみましょう。
こちら2023/1/20の画像ですが、先ほどの「こども未来館ここにこ」の画像と異なり、規模が大きいだけあってメガソーラー設備一帯を認識することができます。

credit: EO Browser /©︎Map Tiler ©︎OpenStreetMap contributors

先ほど”解像度が低い”と思ったSentinel-2でも、ある程度対象物の規模が大きくなれば問題なく画像として認識できることがわかりました。
人によっては「解像度の高いGoogle Mapの方が良いじゃん」と思われる方もいるかもしれません。
確かに解像度が高いメリットはありますが、Google Mapでは撮影日時は指定できませんし、毎日画像データが更新されるわけでもありません。
画像は細かく綺麗に見えるけど、なるべく新しいデータが欲しい用途には向いていません。
また商用利用する際に有料となる場合もあります。

一方、Sentinel-2は撮影日時はある程度決まっており、更新頻度はGoogle Mapより高いです。また、以下のようなデータ処理を行うことも可能です。
例えば、False Colorを選択するとこんな風に画像処理することもできます。

credit: EO Browser /©︎Map Tiler ©︎OpenStreetMap contributors

False Colorは植物を赤く着色した画像として表示されます。つまり、メガソーラーパネルの部分は赤くならず植物がないことがわかります。
ちなみに人工植物と天然植物の違いもFalse Colorでわかります。
いろいろな参考例がありますのでこちらの宙畑記事も参照ください。

植物が多い森林をFalse Colorで確認してみたら部分的に赤くない箇所があり、よく見たら太陽光パネルだった、なんて発見もできるかもしれません。
ソーラーパネルの発電量を予測する記事も宙畑でありますのでご覧ください。


まとめ

いかがでしたか?
無料のGoogle MapやEO Browserには違いがあって、違いはあれどそれぞれ特徴があることがわかりました。
宇宙産業は今世界的に盛り上がりを見せており、2040年までに100兆円の市場規模になると言われています。
人工衛星もこれからどんどん打ち上がり、さらに優れた機能のものが無料で提供されてくるかもしれません。
今より皆さんの身近に、そして使いやすく便利なサービスが提供されてくる日もそう遠くないかもしれないですね。

人工衛星とプログラミングに関心があって、衛星データの分析をもっと学びたい方はこちらの本を参照ください。
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