囚人のジレンマとナッシュ均衡
「他店より一円でも高ければ値引きします。」こんな文句が家電量販店などで見られます。一見すると消費者に良心的なお店ですが、実はこれ、競合他社に対して「安くしてきたら、こちらも安くするので、お互いほどほどにして利益確保しようね」というアナウンスメント効果を働かせています。
もし、牽制しなければどうなるでしょうか?これはゲーム理論の一つ、囚人のジレンマを考えるとよく分かります。
例えばこんなケース。AさんとBさんが強盗に入って、捕まってしまいました。AさんとBさんは別々の部屋に入れられ会話することができません。Aさんが自白して、Bさんが自白しないとBさんだけ禁錮10年、逆にAさんが自白せず、Bさんが自白するとAさんのみ禁錮10年になります。お互い自白しないと両方とも無罪、両方とも自白するとAさんもBさんも禁錮5年です。
普通に考えると、「両方とも自白しない」が合理的です。しかし、Aさんは「もしBさんが自白してしまったら、自分だけ10年の禁錮刑、両方とも自白したとしても5年なので自白してしまった方が良い」と考え、Bさんも同じように考えるので、結局二人とも自白してしまう。というのが囚人のジレンマです(この最終的に落ち着くポイントをナッシュ均衡と言います)。
家電量販店でもファーストフードでも、囚人のジレンマの価格競争が起きてしまい、結局お互いの利益を削り疲弊してしまうということがあります(牛丼屋のワンオペなど、安く提供するために無理な労働環境を従業員に強いてしまうという自体になりかねません)。
そのため、冒頭にあるようなアナウンスメントを行うことによって、お互い疲弊する戦いはやめようねと遠回しに競争相手に伝えているのです。
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