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【放課後の茶道ポエム】#3「上善は水の如し」

上善は水の如し


茶杯の優美
光は眼差しを潤す

優しい彗星の微笑み
記憶のタイムトラベル


丸い器に迎えられ
さしのべられた茶湯

茶人の所作の美しさよ

静のなかの動
動のなかに在る静

頬をつたう
百千万刧難遭遇の風


彩色に染まる空間
無のなかの八万四千巻

空に浮かんだ雲
照らされた水滴
光は影を集めていた


茶人の手は上方へと向かう

細い指先から
きらめきの柔らかな霧雨

茶葉は
茶壺の中へ
蓮華の蕾のように


日の出とともに
静かにゆっくりと

目覚めるが如く

どこからともなく
風は耳に触れ

懐かしく響く
高貴な金属音


調和する私がいた

この音律は
いつの時代に聴いたのか


空から眺めた花は
ゆっくりゆっくりと開く

先人が遺す道

茶壺は温められている


すでに
安寧の至福が
身を包んでいた


上善は水の如し


立ち昇る
龍に似た茶気

一煎目の香り

わたしから
わたしたちへと
心が共鳴していた

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