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ライ麦畑でつかまえて

【ライ麦畑でつかまえて】
THE CATCHER IN THE RYE
J・D・サリンジャー 1951
 
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 「ライ麦畑で会うならば」が本当なんだ。
「僕はまた『つかまえて』だと思ってた」
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僕はあぶない崖のふちに立っているんだ。
僕のやる仕事はね、誰でも崖から転がり落ちそうになったら、
その子をつかまえることなんだ。
ライ麦畑のつかまえ役、そういったものに僕はなりたいんだよ。
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クリスマス休暇を前にして、ホールデンは高校から放校処分を言い渡される。名目上は成績不良のためだが、本当の原因は彼が周囲の人々とうまく付き合っていけないことにあった。先生や友人達と交流を深めようとする気持ちはあるものの、すぐに彼らの狡さ、傲慢さ、無神経、世間ずれなどを感じ取ってしまい、自分の方から身を引いてしまうからだ。
ホールデンが安心して心を開くことができるのは、死んだ弟アリーのように純粋なもの、そしてその純粋さがいつまでも変わらないものに限られるのだが、現実の世界にはそんなものがある筈もない。
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疲れ果てたホールデンは妹のフィービーにさよならを言うべく呼び出す。その中、結局はどこにも逃げ場は無いことを悟る。セントラルパークでフィービーがメリーゴーランドに乗って楽しんでいる姿を眺めていると、絶望の内に、なぜか急に幸福な気持ちに襲われる。降り出した雨に打たれながら佇む。
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逃げ出すということは、社会との繋がりを断ち切って孤立すこと。孤独に耐えられないホールデンは、繊細な心を押し殺しながら生きていこうと決意するが、帰る場所はない。自分の家はホールデンの中では、精神病院に変わってしまっている。もう何処にも居場所がない。

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