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青い鳥

「青い鳥」
メーテルリンク (ベルギー 1862〜1949)
1907年発表 1908年初演 1909年刊行

貧しい木こりの子供、チルチルとミチルの兄妹が、クリスマス前夜に見た夢の中で、老いた妖女ベリリューヌから彼女の娘の病気を治す「青い鳥」を探してきてくれと頼まれる。チルチルがベリリューヌから与えられた帽子の額に付いているダイヤモンドを回すことによって、心眼が開き、動物や火や水などの元素が魂を持っているのがわかる。二人は、犬や猫、光や水の妖精を連れて思い出の国や未来の国を訪ね歩くのだが、青い鳥は見つからず、二人は虚しく帰還する。しかし翌朝目が覚めると、なんと飼っていた鳩が「青い」ことに気づく。

絵本や童話では「かけ離れた場所にではなく、身近にある幸せを大切に」という教訓話になっています。ですが、原作の戯曲では、青い鳥は芝居の観客席へ逃げ出した、という続きとなり「返してください」と主人公たちが観客に訴える台詞で幕が下ります。曖昧で不吉な結末です。残酷な結末とも思えます。

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メーテルリンクが母国滞在中に、第二次世界大戦が勃発します。彼はナチスドイツのベルギー、フランス侵攻を避け、アメリカに渡ります。ドイツによるベルギー占領を強く批判しました。ドイツとその同盟国であった日本には、決して「青い鳥」の版権を渡さないようにと、遺言で書き記しています。
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青い鳥が病を癒し、主人公たちは喜びを分かち合う。
青い鳥が飛び去る結末は、とりあえず二人には「青い鳥」の必要がなくなったから。
青い鳥は幸福の象徴、夢のシンボル。

次は観客=読者の番です。

「青い鳥」は見つけたと、思うとすぐどこかに逃げてしまう。


いつかまた返してくれと頼まれた時、頭上を舞う鳥の「青さ」に気づくだけの知性を、私たちは持っているのでしょうか?

「できあいの幸せなんてこの世にはない。・・・でも人間には青い鳥が必要だ。だからそれを作らなければいけない。」
五木寛之『青い鳥のゆくえ』より

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