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かさじぞう

瀬田貞二 再話
赤羽末吉 画
初版年月日:1966/11/01

とある雪深い国に貧しい老夫婦が暮らしていました。おじいさんは正月の餅を買うために、笠を五つ持って町に売りに出かけましたが、さっぱり売れません。そのうちに日が暮れて雪も降ってきたので、しかたなく戻ってくる途中、野原に立っている六人のお地蔵様に雪が積もっているのを見て、いかにも寒そうで可哀想に思い、持っていた笠を被せていきました。しかし、手持ちの笠があとひとつ足りません・・・。

笠地蔵は日本のお伽話のひとつで、とりわけよく知られています。貧しくとも心の清い老夫婦が、路傍のお地蔵様に笠を被せてやり、その恩返しを受けるというものです。地蔵信仰のない沖縄地方以外の日本各地に広く分布している話です。地域によって多少の異なりは見受けられますが、大晦日の出来事とする点は共通しています。そして、お地蔵様のおかげで老夫婦は良い新年を迎えるという話、として物語を閉じます。

おじいさんを迎えたおばあさんは、「それは、いいことをしましたね」と話す。
おじいさんもおばあさんも「心が清らか」なのです。
お地蔵様が橇を引いてやってくる姿は可愛らしい。
冬の暗くて寒い夜、優しい気持ちになれるお話です。

瀬田貞二 1916~1979
児童文学者・翻訳家・児童文学研究者。
「指輪物語」「ナルニア国物語」「三びきのやぎのがらがらどん」「おおかみと七ひきのこやぎ」などの翻訳で知られる。日本民話の再話にも力を入れており、この「かさじぞう」や「ふるやのもり」「わらしべ長者」などが有名である。

赤羽末吉 1910~1990
絵本作家・舞台美術作家。
絵本「スーホの白い馬」で知られる。茂田井武の遺作となった絵本「セロ弾きのゴーシュ」(宮沢賢治)に接して感銘を受ける。絵本作家となるべく福音館書店の松居直に手紙を送って面会し、画家として採用される。その席で末吉が伝えた「雪国が描きたい」という希望に、松居は後日、瀬田貞二の「かさじぞう」を依頼。末吉は50歳で絵本作家としてデビューとなった。

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