見出し画像

床下の小人たち

🖌メアリー・ノートン 1952


📖ファーバンク邸の床下にはもうひとつの家がありました。狭小空間でミニチュア家具に囲まれて暮らしている小人の一家がありました。父、母、そして娘の「アリエッティ」。アリエッティは父が暮らしのルールを変えるまで、廊下より先に出たことがありませんでした。桜が咲く春のこと。アリエッティが初めて床下から出ることを許された日、玄関の扉は「夢に見たおとぎの国の入り口のように」開いていました。念願の戸外へ出た彼女は、陽光を浴びる、外を走る、青空を仰ぎ見るといった行為に夢中になります。ですが、それらの歓びに水を差したのは、人間の少年に見られたことでした・・・・。

📎主人公が何かのきっかけで危険に満ちた世界へ旅立ち、苦労しながら自分の未来を切り開いていく、というのは古くからあるモチーフです。ですが、この作品が昔話と異なっている点は、家族が揃って旅立ち、家庭の意味や生きていくために必要な事柄が語られているところにあります。さらに思春期を迎えた主人公に注目すれば、親に庇護されていた無垢な子供期から、危機に立ち向かう成長段階へ入る過程が描かれています。


📎アリエッティは玄関の扉を、人生を切り開くための扉としても開けたのだ、と、考えることができるのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?