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西の魔女が死んだ

『西の魔女が死んだ』
梨木香歩 1994

「魔女修行のこと、忘れましたか、まい」
「魔女は自分で決めるんですよ。分かっていますね」

主人公まいへおばあちゃんが危篤だとの連絡が入る。まいは大好きなおばあちゃんの家で過ごした二年前の一ヶ月間の「修行」を思い出す。そして、その修行の際に起きたある出来事と、現在に至るまでの、おばあちゃんとのわだかまりを思っていた。

画家ポール・ゴーギャンの作品を思い浮かべます。
「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」1897-1898
ゴーギャンの代表作、精神世界を最も描きだしている作品のタイトル。
人類・地球・生命および宇宙の起源は、現代科学でも解らずにいる。
我々は太古から創造神話を聞かされて受け止めている。

・巨大な卵から世界が生じた
・水底の泥から世界が生じた
・神々の死体などから生じた
・神と神々の両親から生じた
・創造主が原初の混沌から世界を作り出した
・・・・・

実際には、まだまだわからない。
もっとわからないことは「死んだらどうなる」こと。
主人公の「まい」は中学生。自分の頃を思い浮かべる。
今までわからないことは「大人」が教えてくれていた。
図書館や書店に向かえば「書物」が教えてくれていた。
ところが「死んだらどうなる」の問いには答えがない。
答えがありすぎて「無い」のだ。

神話の世界に入り込んでも、宗教の世界に入り込んでも。
感受性豊かな思春期でも、思慮深い大人になっても。
未だにわからずにいる。
僕は、この毎日が答えなんだと割り切っている。

『西の魔女が死んだ』の「魔女」は、まいのおばあちゃんでイギリス人である。中学校に入学するも他人に同調するのを止めたため、クラスから孤立していたまいを、魔女にさせるべく修行をさせる。規則正しい生活・ジャム作り・自然との触れ合い・・・。
まいの冷えた心は溶けていく。しかし、修行の途中に、ある出来事が起こる。魔女であるおばあちゃんは受け入れるのだが、修行中のまいは受け入れる事ができない。

人は身体と魂が合わさってできている。
身体は生まれてから死ぬまでのお付き合いですけれど、
魂のほうはもっと長い旅を続けなければなりません。
死ぬ、ということはずっと身体に縛られていた魂が、
身体から離れて自由になること。

「答え」がわかる、「答え」を理解する・・・、それは。
時と場所と人の心が一致する、奇跡のような「点」にある。
まいが魔女になって辿り着くのは、その「点」だったのだと思う。


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