見出し画像

シンデレラ迷宮

「シンデレラ迷宮」

1983年6月 集英社文庫 コバルトシリーズ
(続編「シンデレラミステリー」1984年3月)

氷室冴子

今日は、何か重要なことがあるはずだわ。
誰かが起こしに来たら、どうするのよ。
あら、やだ。ほら、誰かが肩を揺すってる。
「ったく、ぐーすかぐーすかと、いつまで寝呆けてるのよ、このガキは!
とっとと起きなってんだ。おら、聞こえてんの⁉︎」
誰かが、起こしに来たんだわ。起きなく・・・・・ちゃ・・・・・。
で、でも、なんだか妙な起こし方ね。
うちに、こんなにガラの悪い人、いたかしら・・・・・。

利根(りね)は古びた館で目を覚ました。招待状を受け取ったという四人の女性が現れるが、利根という自分の名前以外を思い出す事が出来ない。記憶が戻るまで王妃と呼ばれる女性の元に身を寄せることになるが、王妃の城で利根が思い出したのは、自身のことではない。王妃が登場する御伽噺のストーリーだった。四人は『白雪姫』の継母、『白鳥の湖』の黒鳥オディール、『眠れる森の美女』の姫君、『ジェイン・エア』のジェイン。しかし、この世界で生きる四人は御伽噺のストーリーとは異なる孤独と哀しみを抱えていた。この逆転した世界を旅する利根は、次第に自身の孤独と哀しみを思い出し、傷ついていた現実世界の自分と向き合うこととなる。

続編「シンデレラミステリー」は高校生になった利根が、再び御伽噺の世界に入り込み、ジェイン失踪の謎を解いていくというストーリー。氷室冴子さんの数ある作品の中で、私はこの「シンデレラミステリー」がベストだと思っています。
続編を期待していたのですが。シリーズ化にはなりませんでした。

(年老いた)僕は、自分で作り上げている「続編」の世界を、
「シンデレラシリーズ」を、
ずっと10代の気持ちのまま、旅しているように思うのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?