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すばるの部屋 2回目~俺ん家、寄ってかへん?~ @京都 磔磔 2日間のこと。

2023年12月11日。
乗車した新幹線が東京駅で運転見合わせ、出発が40分ほど遅れるというハプニングを乗り越え、昼過ぎに無事に京都の地に立った。

京都を訪れたのは十数年ぶり。
磔磔は名前だけ知っていたあこがれのライブハウスだった。
そこで大好きな人の声が聴ける。歌う姿が観られる。
わくわくと緊張。ドキドキが止まらない。

夕暮れの町をさまよい、何度か迷いながらたどり着いたそこは、とても素敵な場所だった。
駐車場の奥、ひっそりとした、でも存在感たっぷりの佇まいも、あまたのアーティストさんたちの想いがしみ込んだような古い看板も。
中に入って見た、ステージの奥に絡んだ蔦も、ミラーボールの代わりのように天井からつり下がった大きな提灯も。
ぜんぶぜんぶ、ものすごくカッコよかった。


初日、友達と開場までの時間を過ごしていたカフェ。
その前の道を偶然通りかかったすばるくんと手を振り合うという奇跡的な出来事もありつつ。
入場して開演を待った。

会場は満員。
始まる前から熱気に溢れている。
会場に流れるSEの中に、すばるくんの声がした。聴いたことのない曲だ。
彼が自分の部屋で作ったばかりの曲を聴かせてくれているような感じ。
”すばるの部屋” らしい、アットホームな温かさが広がっていく。


やがて開演の時間となり、ステージ下手の壁際の階段を通ってすばるくんとバンドメンバーさんが姿を見せた。
健太さん、すばるくん、茂木ちゃん、史朗さん。
アコースティックライブではおなじみの方々だ。

1曲目は「キミ
すばるくんはアコギ一本で、真っ直ぐな声で。
この伝統あるライブハウスへの初めましての曲を聴かせてくれた。
リリースした時は誰かに向けての曲だったのかもしれないけれど、いつしかそれは会場にいる全員へ、そしてその場所に来られなかった人たちみんなへも向けられた、とても優しい歌になっていた。


2曲目「7月5日
この曲を聴くと前々回のツアーが思い出されて、その時の想いとアウトロのすばるくんの優しい表情が思い出されて、涙がこぼれてしまうのだけれど、アコースティックで奏でられた「7月5日」はより優しく、静かな力に満ちていた。そしてやっぱりその温かさと揺るぎない力に泣いてしまった。


3曲目「風のうた
ライブではおなじみの大好きな曲。
優しくて軽やかで、ちょっとエロティックで切なくて。
前回も思ったけれど、史朗さんのコーラスがとても素敵。
アウトロのすばるくんのハーモニカが磔磔の会場を包み込んで透き通った風が吹いた。
目を閉じたすばるくんの表情がとても優しかった。


4曲目「スローバラード
"すばるの部屋 1回目" はここで「塊」が歌われていたけれど、今回はまさかの「スローバラード」。
イントロが奏でられた時、大きなどよめきが起きた。
かつて清志郎さんも立った、この磔磔のステージで歌われたこの曲。
すばるくんの声がその空気を、そこにいる全員の心を震わせる。
歌い終わり、なんだか大きすぎる感情の中でしばらく動けなかった。


ここでMC。

(1日目)
第一声はちょっと京都っぽい雰囲気の
「おおきに」だった。
「皆さん、色んな所から来てくださってると思いますが…今日泊まる人もいる?(客席から「はーい!」の声)おお、じゃ一緒に飲もう。そこらへん歩いてるから、見かけたら声かけてください。一人ずつ往復ビンタします…ウソです!笑」


話が途切れた時、すばるくんは客席から天井、会場中を見渡して
「すごいですよね…」
としみじみと言った。
バンドメンバーの方々に聞くと、史朗さんも茂木ちゃんも健太さんも、それぞれ磔磔でのライブは何回かやったことがあるとのこと。
すばるくんは初めてで
「ずっとやりたかった、ここでやれてるのがすごい、嬉しいです」
と話してくれた。
そしてその後で
「皆さん忙しくて、毎日色んな人たちと一緒にやっている。ミュージシャンの方たちはすごい、日本中いろんな所に行って毎日誰かを感動させてるんだから」と。
そう思えるすばるくんが、それを言葉にして伝えてくれるすばるくんが、大好きだと思った。

(2日目)
メンバーと部屋で飲んで、自分の部屋に帰った明け方4時頃、寝ようとしたけれど、お腹が空いて寝られないすばるくん。
磔磔でもらったお弁当があることを思い出して食べようとしたけれど…箸がない!
「(コーヒーとかで使う)ちっちゃいスプーンがあればそれで食うけど、見当たらないんです!(カップでご飯をすくうような手つきをして)マグカップで食おうかとも思ったけど、なんかややこしいことになりそうだし……歯ブラシ?2本あればええけど1本しかないし…」
なにも見つからず、結局手で食べたすばるくん。
「初めてやった……ご飯はまだええけど、おかずが…鶏肉とかじゅるじゅるだった。インド人、すごいなって。気持ちがわかったわ」
そこにお客さんから「曲が書けるねー」の声。
すばるくん「書けるか!」
きれいにオチもついて。さすが、ニンゲンさん。笑

5曲目は「
静寂の中、すばるくんの声が響く。
空気が一気に変わった。
駆け抜ける塊。声と音が疾走していく。
アウトロ、健太さんのピアノと史朗さんのギターのせめぎ合って疾走していくような演奏がたまらなくカッコよかった。


6曲目「ワレワレハニンゲンダ
アコースティックバージョンの「ワレワレハニンゲンダ」。
暗い夜の中からひっそりと生まれて、でも一歩一歩確かな足取りで歩き出す。
しなやかでしたたかに生き抜いていくようなニンゲンだった。
磔磔の雰囲気にとても似合っていた。


(1日目)
この曲の後、唐突に話し出すすばるくん。
「でもさー、気温差がすごいよねー。急激な気温差がすごいよねー」笑
この流れから
7曲目はもちろん「きになる

この曲中、1回目に続いて例の "与作"(ビブラスラップ)が登場!
曲の途中で手にしたすばるくん、ニヤッといたずらっ子のような笑顔を見せて。ラストで盛大にビヨ~~ンと鳴らした。
なんだか楽しくなっちゃったすばるくん、2回、3回、4回と繰り返す。
子どもみたいな嬉しそうな笑顔が可愛かった!


(2日目)
ここで、「もう一曲カヴァーをやります」と言って "ハナミズキ" を歌おうとしたすばるくん。
健太さんと目を合わせ、一言二言交わした後、
「…曲順間違えました」と恥ずかしそうに笑った。
「後で全く同じことをやります。記憶を消してください」と。笑
(ここでいつかのフェスを思い出したのは、きっと私だけじゃないはず。笑)

8曲目「ハナミズキ
この曲の前
(1日目)
「なにか、"すばるの部屋” ならではのものがあるといいなと思って。カヴァーを歌ったら喜んでいただけるんじゃないか、と思って。カヴァーも歌っていこうと思います…さっき思ったんですけど」


(2日目)
きになる」を歌い終えて、「もう1曲、カヴァーをやろうと思います」と、さっきともう一度同じ事を話し出したけれど、途中でなんだか腹が立ってきたすばるくん。
「…なんか腹立ってきた、もうやります!」とキレ気味に強制終了。笑


健太さんのピアノで聴き慣れたイントロが奏でられた時、会場中から歓声とどよめきが上がった。
この曲をまた聴けるとは思わなかった。泣いてしまった。
あたたかくてとてもとてもやさしくて。
胸がぎゅっとなるような幸せな時間だった。


ハナミズキ」は、babu会Vol.2  初日で歌ったワンフレーズをファンが喜んでくれたから、と後の公演に仕上げてきてくれたほどで、この歌がファンにとってとても大切なものだということもすばるくんはきっとわかっていて。


babu会の時もそうだったけれど、フルバージョンではなかった。
その理由はわからないが、どこを歌うかを考えた時、すばるくんは
「僕の我慢がいつか実を結び」
のところは歌わずに
「待たなくてもいいよ 知らなくてもいいよ」
のところを歌っていた。
(これはたぶん深読みで、本当に私の個人的な想いなのだけれど)それがファンに向けてくれた想いのような気がしてたまらなかった。
目を閉じたその表情が本当に本当にやさしかった。

9曲目「ライオン
1回目の時は後から他の楽器の音が入ってきたように思うのだけれど、今回は初めから終わりまで、すばるくんがギター一本で歌いあげていた。
そこに。
すばるくんの覚悟を感じた。揺るがない芯を感じた。
ラストの咆哮もアウトロのアルペジオも。
すべてを自分で引き受けると決めたライオンの、世界と未来へ向けての宣言だった。

10曲目「トラブルトラベラ

(1日目)
曲前に、すばるくんが話し出す。
「なんか、とっておきの話があるって史朗さんに楽屋で言われたんですよ。その時に教えてって言ったんですけど、いやステージで話すって。何ですか、史朗さん?」

[史朗さんのとっておきのお話]
昨日車で京都に前乗りした史朗さん。
足柄サービスエリアで休憩を取ってそこから出る時に、車のボディにお財布を置いたまま出発してしまったそうで…気づいた時にはもうどこにもなかった、と。
免許証は幸い携帯の方に入れてあって、カード類はすぐに止めたそう。
でも現金が全然なくて、ホントに今は「ジュースも買えない」と。
「この話をこの曲の前に話したということまで含めて、これがホントの "トラベルトラベラ" ということで」
とオチをつける史朗さん。

(終演後にギターケースで "塚本史朗 トラベルトラベラ募金” ができていた。
この "募金" は終演後メンバー、スタッフと一緒にたくさん話し合って決めて、皆さんのお気持ちはきちんと史朗さんに届けました、とすばるくんから)


この曲は間奏の4人のセッションが最高だ。
それぞれの見せ場、聴かせどころもしっかりあって、そのパートごとにメンバーを指すすばるくんもめちゃめちゃカッコよかった。
大サビの、チャリ~(チャリ~)でんしゃ~(でんしゃ~)のC&Rも楽しかった!


ここで、すばるくんの煽りが入った。
「早いもので、ライブも後半戦に入ってます。残り数曲です(お客さん:え~~!)…はい。笑」
「さあ、ここから行くぞーー!行けるか――?!もっと行けるか――?!
もっともっと行けるか―――?!……ホントに?」(1日目、この、ちょっと笑っちゃいながらの「ホントに?」がものすごく可愛かった)

「出しきれよーーー!全部出し切れーーー!!」
「行くぞーーー!!いくぞーーー!!行け―――――!!!」

行けーーー!で、11曲目の「」へ。
「行け!」「飛べ!」と拳を突き上げて指さして。
これは間違いなくライブで育った曲だと思う。
リリース時にあれこれ言われて悔しかったけど、そんな "あれこれ" も吹き飛ばしてくれた。ライブで聴いて歌って踊って、もっともっと好きになった曲。
もう無条件に、文句なしに楽しい!
音楽って、ライブってそうだよね!


そこから
12曲目「爆音」へとなだれ込んでいく。
アコーステックなのにいつものバンドと変わらない熱量で。
自然に体が動く。飛んで踊って手を振って突き上げて。
ライブ限定のすばるくんの「初期衝動!」とラストの雄たけびに泣きそうに幸せになって。
最高に熱かった。

「ありがとうございました。
こうして皆さんと素晴らしいライブを、つくる ことができて良かったです。僕たちは、こんなにいい時間を、つくる ことができるんです」
そんな曲振りから

13曲目「つくる
あたたかな曲だ。
すばるくんの声も史朗さんのギターも健太さんのキーボードも茂木さんのカホンも。とてもとても優しかった。
爆音」で熱くなった心と体が、ゆっくりと幸せになだめられていく。すばるくんの部屋は、どこまでもあたたかい。

アンコールはもちろん「Sing」だった。
「最後は皆さんと一緒に歌いたいと思います。皆さんの声を、聴かせてください」
すばるくんのそんな言葉で始まったこの曲。
ステージからすばるくんが手を伸ばす。指をさす。会場全体を包み込むように手を広げる。


初めて本格的なライブハウスで観たその風景はSHELTERで撮られたというMVと重なって。
あのMVを観た時、オーディエンスのいない会場がとても寂しかったけれど、あの時すばるくんにはもう、この曲を届けたいみんなの顔が見えていたのかもしれない、と思った。
Sing」はきっと、みんなで歌えた時に本当に完成する歌なのだろうな、と。

リリース当時、すばるくんが雑誌のインタビューでこんなふうに言っている。
「(「Sing」は)もっと先になるかもしれんけど、何も気にせずライブができる日が来たとしたら、その時こそみんなで大合唱したいよな、みたいなことを言いたかったんだと思います」


「もっともっと〜!」と煽るすばるくんの嬉しそうな表情を思い出す。
「最高です!一生忘れません」と叫んだ幸せそうな笑顔を思い出す。

あの時MVで、すばるくんが無人の会場の向こうに見ていた景色になれたのかな、そうだったら嬉しいなあ、と思う。


1日目の公演の中で、お客さんから「顔が見えないので、少しでいいから立ってください」という声があった。すばるくんはその時は
「うーん…見えないのもライブハウスの醍醐味やで」
のように言っていたけれど、2日目は初めの方から
「今日はできるだけ立ちます」
と言って、言葉通り多くの曲で立って歌ってくれていた。
やさしいなあ…と思う。

でも1日目。
姿が見えなくても、すばるくんの声や音が震わせる磔磔の空気に包まれた体感は、確かにただ音楽に浸りその中で泳いでいるような、ライブハウスの醍醐味を味合わせてもらったような気がする。
そう思いながら、2日目顔が見えて目が合ったと感じられたのはやっぱり嬉しかった。
いろいろ考えてくれて、どこまでも聴き手に寄り添ってくれて。本当にありがとう。

そう、ライブ後のSNSには "すばるくんと目が合った" という投稿がたくさん見られた。
すばるくんはあの時、ひとりひとりを見てくれて、ひとりひとりとつながろうとしてくれていた。みんなが確かに彼とつながって想いを交わし合っていた。

すばるくんはいつも、ファンをかたまりとしてではなくひとりの人間として対して、歌を想いを届けてくれる。
だからみんな、ひとりひとりがこんなにも幸せなんだろうと思う。

そしてそれは、あの場所にはいなかった方たちへも同じように向けられた眼差しであり想いであった。
彼は誰も置いていかない、みんなを連れて行こうとしている。連れて行ってくれる。
改めてそれが信じられて、すばるくんを好きになってよかった、好きでいることが本当に幸せだ…と強く思った。



2回目の「すばるの部屋」。
居心地が良すぎて帰りたくなかった。
100年以上前に造られた酒蔵を改装したというライブハウス。
"磔磔" という見慣れない漢字は、鳥や蝶の羽音を表す言葉だそうだ。

古く趣のある佇まいは、アンプラグドのすばるくんにとてもよく似合っていた。
「すばるの部屋」のその奥にひっそりとある秘密基地。
そこにこっそりと招いてくれたような、そんな感じがした。
あこがれの磔磔に連れてきてくれてありがとう。
またひとつ、夢を叶えてくれてありがとう。
本当に本当に大好きだ。


すばるくんも「楽しい!」と「最高です!」と何度も言ってくれた。
すばるくん自身も楽しんでいることが伝わってきて、もっと楽しくなって幸せになれた。幸せすぎて泣いた。
すばるくんはこんなライブもやりたかったんだろうな、と思えて、それができる今でよかった、と心から思う。

これからも1つの形としていろんな場所で「すばるの部屋」 がずっとずっと続いていきますように。
この幸せであたたかな時間をたくさんの人が感じられますように。

3回目は、どこのどんな部屋に連れて行ってくれるんだろう?
今からわくわく、楽しみが止まらない!


すばるの部屋・2回目
~俺ん家、寄ってかへん?~
2023.12.11(月)、12.12(火) @京都 磔磔

(セットリスト)
1. キミ
2. 7月5日
3. 風のうた
4. スローバラード
5. 塊
6. ワレワレハニンゲンダ(アコーステックver.)
7. きになる
8. ハナミズキ
9. ライオン
10. トラブルトラベラ
11. 池
12. 爆音
13. つくる
アンコール Sing

ボーカル、ギター、ハーモニカ、”与作”
渋谷すばる
ギター 塚本史朗
パーカッション 茂木左
鍵盤 山本健太


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#すばるの部屋・2回目
#磔磔 #ライブ #音楽 #京都


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