「私を終わらせて」.3
それからマデニウスは何度かハーメルンへ訪れてルーファに会い、相変わらず王子からの刺客を返り討ちにしていました。
ルーファは父や都の民とはちがい、自分を王子としてではなくルーファとして接することのできるマデニウスを友人と認めるまでになりました。
ふたりが会う場所は決まってスイレンが咲いている池。日が沈んでくる頃合でした。
「よお、マデウス。今日も来てたんだな。」
「ルーファか。お陰様でのんびり過ごさせてもらっている。いいところだな、ここは。」
マデニウスはルーファに「マデウス」という偽名を伝え、さらに「しばらくハーメルンに滞在する」と嘘をつき、度々秘薬を飲んでは情報を聞くために都へと訪れていました。
「だろう。どうせまたここにいると思って林檎を持ってきたんだ。1つどうだ?」
「なら遠慮なくいただこう。ありがとう。」
林檎は瑞々しく、齧れば蜜のように甘い果汁が口いっぱいに広がります。
「その林檎もこの都で作られたものだ。美味いだろ。」
「ああ、こんなに美味い果実は生まれて初めて食べたかもしれない。」
「はは、大げさなやつだな。」
ルーファはマデニウスの顔を正面から見詰めて言いました。
「生き残った魔物の討伐、明日は俺が向かうことになった。」
マデニウスは予想外の事態に驚きました。
「実はさ、結婚を約束してる人がいるんだけど親父が認めてくれなくて。相手が貧しい家柄ってこともあってな、「せめてここで武勇を見せなければ民たちを納得させられない」と言われて。魔物を討伐することが結婚の条件なんだ。」
「............なるほどな。ルーファは本当に戦えるのか?」
「どうかな。これでも指揮を執るからにはと思って有名な剣の先生に鍛えてもらったり魔法もそれなりに教わったりしたんだがな。どうもセンスが無いみたいで、多少件を振れるようになったくらいだ。」
ルーファは顔をなんとか笑顔に保っていましたが、手足は震えていてどこか苦しそうでした。
「すまないな、急にこんな話をして。それで、マデウス。もしハーメルンが気に入ったならここで暮らさないか?友達がいてくれると俺も頼もしいんだ。」
マデニウスはきっぱり言いました。
「悪いが私は旅人なんでな、明日にはこの都を去る。短い間だったが世話になった。」
もしサポート投げてくれたらなんかいい感じのことに使います。