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「私を終わらせて」.1


ある町外れの荒野にあるこれまた古い廃墟にはマデニウスと呼ばれる魔界の王がおりました。

マデニウスは見目麗しく青年のような見た目をしていましたが、実際は何千年も前から生きている魔物で一族は全員戦士たちに滅ぼされたためにひとり孤独に過ごしておりました。

というのも、魔族たちは生まれた時から砂の力をその身に宿していて存在するだけで辺りの大地が干からびていくのです。
水の都ハーメルンの王は近隣で暮らす自分たちの土地が干からびてしまうことを恐れ、魔族たちを滅ぼすよう戦士を送り込みました。

その結果、魔族の中で最も強いマデニウスだけが生き残ったのです。

かと言って復讐のために戦うことの愚かさをよく呑み込んでいたマデニウスは、都の人間と争うでも新しい土地へと向かうこともなく、ただ誰もいない廃墟で退屈していました。

しかし、近年マデニウスの命を狙ってくる戦士が急に増えました。戦いにうんざりして戦士の1人に問い詰めるとどうやらハーメルンの王子に命じられてやって来たようなのです。

「これ以上攻め込まれても追い払うのも面倒だ。どうしたものか。」

少し考えて実際にハーメルンへ赴いてみることに決めたマデニウスは早速都へ訪れましたが、当然ツノが生え2メートル程の大きな翼を持つ長身の見た目は人間にとって恐怖でしかありませんでした。

「出て行けバケモノ!!娘に何かしたら許さんぞ!!!!」

斧を振りかぶった男や目に涙を溜めながらも石を投げてくる子どもを哀れに思い、マデニウスは1度廃墟へ戻りました。

「困ったものだ。これではまた都の民を怯えさせてしまう。あまり気は進まないが、魔女の秘薬を飲むべきか。」

まだ魔族たちが生き残っていた頃、西の森には大魔女の暮らす小屋があり、そこへ行けば魔法の薬を買い取ることが出来ました。
廃墟に残されていた魔女の秘薬。それは「人間に化けられる薬」でした。

「たしか効果は半日しかもたないが、それだけあれば十分だろう。」

小ビンに入った液体を全て飲んだマデニウスは改めてハーメルンへ向かいました。

もしサポート投げてくれたらなんかいい感じのことに使います。