_いい加減話進めてよッ_

第1話 巫女さんがやって来た~ ⑥ いい加減、話進めてよッ!~

 しーましぇん~、8か月振りの続きです↓

辺りは真っ暗で何も見えない・・・これがあの世への入り口ってヤツか。結局、財布見つからなかったな・・・どこに落としたのかな?もし落とさなかったら・・・戻る事なかったのかな・・・もし探しに戻らなかったら、あの時、あの交差点で、巫女さんに出会わなかったら・・・昨日、占いなんてしていなければ・・・
どうしてこんな事になってしまったんだろう?どこで選択を間違えてしまったのか?
空巫女・・・
私は
私は・・・
私は・・・・・・
生きてる・・・意識がある。

 私の目に光が宿る
見知らぬ白い天井。ふかふかの布団の感触。窓からの光が眩しい。ここはどこだろう?いやこの真っ白な部屋は、どう見ても病室だな。私は死んだはずじゃ・・・あの時・・・斬られなかったのか・・・私は思わずお腹をめくるが・・・傷らしい傷は見当たらない。ダメだ、記憶の最後の方が、はっきりと思い出せない。どうやら助かったという事は確かだ・・・でもどうやって?それに、あれからどれ位眠っていたのだろうか?
「三日間眠っていたみたいだね、お姉さん。」
そうなのか・・・
・・・って、三日間かよ、そんな漫画的展開、本当にあったんだな。私の正月どこ行った?それに年明けの仕事始まってるじゃねーか。今はとても働ける気がしないが。・・・ところでこの声、誰だ?私は部屋を見回すと、隣のベッドに小さい男の子がいた。
「何か病院も部屋足りないみたいで、相部屋になったっぽいよ。」
中学生位かな?声変わりしてないので一年生といった所か?特に特徴のない元気そうな男の子って感じだ。というか、思春期前の中学生と同室なんて医者もいい根性してるぜ。今の私は襲われても、到底抵抗できる自信なんてない。それに一応、緊急の患者だぞ、私は。
「命に別状はなくて、眠ってるだけだからいいんだって。確かそんな事言ってた。」
大丈夫かこの病院・・・。それよりそうか、やっぱりあれを見て気絶しただけか・・・あれ・・・途端に私に強烈な悪寒が襲う。冷や汗が止まらない。ダメだ。あれはもう思い出したくない。死にたくない。もう見たくない・・・
「どうしたの?お姉さん大丈夫?」
私は何度か深呼吸して、どうにか呼吸を整える。いや何でもないんだ・・・気にしないでくれ。
「お姉さん、何があったの?」
こんな事君に話しても分からないかもしれないけど、お姉さん結構困ってて。信じていた友達が酷い事をしていたのに、私は何も言えなかった。少しの間そばにいたけど、何も気付かなかったし、何も分からなかった。本当は悩んでいたかもしれないのに・・・追い詰められていたかもしれないのに・・・輝子がやってたみたいにアイツの心にもっと踏み込んでいれば、あんな事にはならなかったのかなって。手遅れになる前にどうすれば良かったのか?って。
「お姉さんはその人を信じているんですか?」
分からない。たった半日も過ごしていないし、彼女の事を私は何も知らない。でも、何で友達になってくださいなんて言ったんだ?普通言わないだろ。私や輝子が振り回しただけなのに。輝子はともかく、私なんて・・・あの子、私の事をカッコいいって言ってくれたんだぜ。私は何もしなかったのに、私を信じてくれた。だから信じたい。彼女は人殺しなんかやってないと。信じてくれたから、信じたい・・・
「信じるね・・・それがお姉さんの回答か。まぁ、それでもいいんじゃない。お姉さん、いや君は真実を確かめる必要があるね。」
ものの一瞬で、男の子の雰囲気が変わった感じがした。まるで外見はオタマジャクシなのに、肺呼吸してるような・・・。いや最初から肺呼吸していたんじゃないだろうか?お前一体何を言って・・・
「その覚悟があるなら、先へ進みなよ。君がそう選ぶならね。」
お前は一体何者なんだ?ちょっと待て!おかしい、さっきから絶対に怪しい。まさか元旦の事件と関わりがあるんじゃ・・・空巫女を知ってるのか?
「ん~、それを知るのはまだ早いかな。まぁその内どこかで会うよ・・・おっと、口を滑らせ過ぎたかな。あ~あ、また怒られるよ。」
おいさっきから何言ってるんだ!?どういう意味だ?
「とにかく早く起きてね、寝過ぎだよ。西瓜房子さん、いい加減、話進めてよッ!」

突然、私は目を覚ました。見知らぬ白い天井。ふかふかの布団の感触。窓からの光が眩しい。ここは?・・・いやこの真っ白な部屋は、どう見ても病室だな。気付くと、ベッドの上で上体を起こしていた。どうやら今のも夢だったのだろうか?夢の中の夢というヤツか・・・何だったんだ、あの少年は・・・

「動けるなら大丈夫そうね。ブツブツ独り言言ってうなされてたので、心配してたのよ。」
傍に白衣を着たおばさんがいた。私は部屋を見回すが、隣のベッドは誰かに使われた形跡がなかった。
「まぁ、ショックを受けて気絶してただけね。外的損傷はないわ。あなたが希望するなら、明日には退院できるわよ。一応、後で問診受けて貰って、脳の精密検査受けてからだけど。ところで、あなた何かあったの?差支えなかったら教えてくれる。」
いや、あの何かその・・・ありませんでしたか・・・その元旦に事件とか・・・あのその・・・

「え?事件??別に、至って普通の正月のニュースしかなかったけど。」
えっどういうことだ?私は確かに見たんだ・・・死体を・・・。事件にならない方がおかしい。とっさに私はおば医者に一月二日の朝刊を持ってきて貰うよう催促した。おば医師は不審そうな顔をしていたが、二日前の新聞を探して持ってきてくれた。私は勢いよく新聞を捲り、食い入るように事件の記事を探すが・・・見当たらない。どういう事だ?何で載ってない?
「何か見つかったの?」
いやその・・・他に運ばれた人っていますか?
別に倒れてたのは貴方だけって救急隊員から聞いたけど、何?その口振りだと、他に怪我人がいたの?」
あの・・・血の跡とか残ってませんでした?
「別に何もなかったみたいよ。あなた、吐血があったの?」
いや、私じゃなくて、その・・・
「ねぇ・・・あなた・・・一体何を見たの??」
いや・・・記憶がはっきりしないんで、今のは忘れてください。こっちの話です。
おば医者はさらに眉をひそめ、すでに変な空気が出来上がっていたが・・・
「んーそう言えば、昨日お見舞いに来てたわね・・・二つに結んだ・・・ツインテールって言うの?お連れさん、心配そうにしてたわよ。」
輝子か・・・そうか輝子は無事だったのか。輝子・・・私は起き上がり、側にあったスマホを手に取り、病室を飛び出した。私は、おば医者の制止を振り切って、一目散にトイレに向かう。頭の整理は追いついていない。走る最中、錯綜する頭の中で、私なりに整理した。

 桜ノ宮駅で私と輝子がキモオタ二人組に絡まれている空巫女を助ける。輝子がキモオタを殴り飛ばし、私達三人は造幣局まで走って逃げてくる。私と輝子、空巫女でラブホのテッシュ配りを終え、解散する。それが夕方だ。私は財布をなくしている事に気付き、京橋まで戻ってくる。そして私が何故かそこにいた空巫女を追いかけて、路地裏に行った時、刀を持った空巫女と死体に遭遇した。空巫女の台詞はあまり覚えていないが、無表情で冷たい目をしていた記憶がある。そして私は気絶し、その後救急車で運ばれた、らしい。その間に何があったのかは分からないが、救急隊員は死体と血痕を見ていないらしい。どこにいったんだ?そんな短時間に?おば医者の反応と新聞から、事件にはなってない・・・事を見ると警察は動いていない。警察に話してもクッソ長い事情聴取が待ってるんだろうな。個室に駆けた私は扉を勢いよく締め、輝子に電話をかけた。頼む、輝子出てくれ!

「おー房子か?大丈夫やったか?」
頭の整理は追いついていない。でも、今の私は話すしかない。輝子に昨日の事を全て話した。
「ほ、ほんまか・・・話がぶっ飛んでるわ、お前何言うとんねん・・・って返したいけど、冗談とかちゃうんやろ、お前がそんな話せんわな。房子、お前とは長い付き合いやし、嘘言うてるとは思えへん。空巫女だってもうダチなんやし、酷いヤツやとは思いたくないで。でもな、疑う真似は性に合わへんけど、一億歩くらい譲って空巫女がやったことが事実なら、おかしないか?いや、どっちを信じるとかの話やないで・・・何かこう・・・上手く言えへんけど・・・」
何が言いたいんだ?輝子・・・。
「だってさぁー、その後・・・死体どうなったん?」
だから、救急隊員が来る前になくなったって・・・
その時、凄く奇妙な違和感が過る。短時間では無理があるかもしれないが、血痕は拭き取ったと仮定しても、死体はどうなんだ?消えた・・・んじゃなくて、運んだんだ!空巫女一人でどうやって??あの小さい体じゃ一苦労だろう。共犯者とか協力者かどうかは何とも言えないが、違う誰かが運んだ可能性がある。最もそれは、私の常識の範疇の考えで、もし彼女が巫女の不思議な力とかを使って、死体や血痕を消したりしたら、お手上げなんだが。
「何言うとんねん、そんな力あったら、あんなけったいな仕事押し付けられたりしてへんやろ?」
確かにそんな神通力悪用するなら、とっくに最初からやってる。それにあの子は、そんな汚く力を誇示するような子ではない・・・と信じたい。
「それと、どっちが殺したかも問題やけど・・・いつなんや?〝しぼーすいてーじこく〟やったっけ?聞いてる限りじゃ分からんで。」
空巫女を路地前で見かけた時、暗かったのではっきりと見えなかった。袴に血が付いてかどうかは・・・。でも、角を曲った時、あの死体はすでに・・・そう言えば青ざめていた。医者じゃないから、死後どれだけ経ったか分からないけど、まるで誰かが別の場所から運んできて置いた感じだ。運んできた・・・やっぱりこの事件には空巫女の他一名以上が絶対に関わっている。どう考えても納得いかない節がある。それでも目の前に立っていたのは空巫女で・・・その事実は変わらないのだが。
「あいつ、困ってたんかな。全く分からんかったわ。」
そうかお前でも分からなかったか。それでも私は・・・やっぱり彼女を助けたい。それでもし彼女が間違った道へ踏み外していたら、彼女は罪を償うべきなんだ。その後、何年かかってもいい。私がそばにいてやる。いつか皆で笑って過ごせるその日が来るまで。
「知り合って間もないのにそこまでなぁー。けっ、お前も底なしのお人好しやないか!!当たりめぇーじゃねーか。ただ脅されてるだけかもしれんしな。刀だって持たされてただけとちゃう。」
輝子・・・。都合のいいように解釈してるだけかもしれない。でも・・・でも・・・私は・・・
「一番は本人に聞く事やけど、それは最後やな。私もバイト終わったら、探り入れてみるわ。」
そうだな、私もできる事やってみるわ。気を付けろよ、輝子。ヤバイ事は確かだからな。
「なぁ、房子、私は本気でおもろなる未来しか見えてへんで。私と、お前と、空巫女も入れて三人でな。」
私だって同じだ、相棒。彼女がそこまで悪い人には思えないんだ。何かがある、この事件には。私は彼女の事を何も知らない。だから教えて欲しいんだ。知りたいんだ、お前の気持ちを、そして本当の事を。お前ともっとお話がしたいんだ。空巫女、お前の、空巫女のお話の続きをもう一度聞きたいんだ。それが私の想いだ。決意を固めた私は、個室の扉を開けた。

次回予告(暫定)⑦「大福寺大学とオタサーの王子」

事件の手がかりを探す西瓜房子は、オタサーの王子・古都華(ことか)いちごに出逢う。そしてその取り巻きには例のキモオタがいた。古都華いちごの正体と彼女(彼)は事件と繋がりがあるのか?事態は思わぬ方向へ進む!?

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